天皇杯、ジャイアントキリングの再現は? アマチュアチーム、それぞれの思い
日本中のチームがつながる大会
前回の第97回大会では筑波大がJ1仙台、J2福岡相手に勝利し、16強に残る健闘 【写真は共同】
J1、J2は、全国大会(2回戦)から出場。他は都道府県の予選を勝ち抜いた代表チームが出場する(アマチュアシードの大学代表は、前年度の全日本大学選手権の優勝チーム。今回は流通経済大)。社会人の各種大会は、都道府県代表決定戦につながっており、市役所や区役所、銀行のサッカー同好会なども予選に参加していることになる。日本中のチームがつながる大会と言える。
所属リーグや、プロ・アマの違いを超える大会の最大の魅力は、下馬評を覆して勝つ「ジャイアントキリング」(「巨人殺し」と直訳すると物騒だが、大物食い、番狂わせの意)だ。前回の第97回大会では、J3のAC長野パルセイロ(長野県)と、関東大学1部の筑波大(茨城県)がJ1チームを倒して16強に残る健闘を見せた。今年も、多くのアマチュアチームが「打倒Jクラブ」に挑む。
クラブの知名度を上げるチャンスも
駒澤大は東京都予選決勝で東京ユナイテッドFCを下し、天皇杯本戦進出を決めた 【平野貴也】
東京都予選で駒澤大に敗れた東京ユナイテッドFCのFW佐々木竜太(鹿島アントラーズや湘南ベルマーレ、栃木SCなどでプレー)も「勝ってリーグを昇格できるわけではないけれど、初出場で歴史に名を刻みたかった。僕や(選手兼コーチを務める元日本代表DF岩政)大樹さんといったJリーグでやっていた選手がまたプロと同じ舞台でやれば、少しは話題性があるだろうし。チームの広告には失敗しました」と肩を落としていた。プロクラブにとってJリーグが最重要であるのと同様にリーグ戦に重きを置くが、天皇杯にはリーグ戦にはないメリットがあると言える。
もちろん、知名度アップだけに意義があるわけではない。プロへの挑戦は、競技面でも最高の刺激となる。東京都代表となった駒大の秋田浩一監督は「勝っていけば、J1など格上のチームとやれる。選手にいくら言ってもなかなか伝わらないが、体験すれば『なるほど、プロってすごいな』と分かる。それに、思い切りやれば、昨年の筑波大のようにもしかしたら……という可能性もある」と大会の価値を語る。
プロを目指す学生にとっては、プロのスカウトへのアピールの場。卒業と同時にサッカー中心の生活を終える選手にとっては、届かなかったプロのレベルを最後に知るチャンスでもある。駒大の主将を務める大塲淳矢は「プロに行きたいという仲間や後輩を本大会に連れていきたい気持ちがあった」と話し、予選の決勝で得点した4年生の室町仁紀は「初めて、プロと戦えるチャンス。自分たちがどこまで通用するか楽しみ。僕は就職活動をしていて、サッカーを(本格的に)やるのは今年で最後と思っている。集大成……ではないけど、やれるところまでやりたい」と意気込みを語った。