【新日本プロレス】“リボーン”石森がジュニア王者を撃破 ジュニアの祭典BOSJが波乱の開幕!

高木裕美

「BEST OF THE SUPER Jr.25」が開幕! 初日の後楽園大会から波乱が巻き起こった 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 新日本プロレスのジュニアの祭典「BEST OF THE SUPER Jr.25」開幕戦となる18日の東京・後楽園ホール大会では、Aブロック公式戦4試合などが行われ、札止めとなる1691人を動員した。

「BEST OF THE SUPER Jr.25」は、いわば“ジュニアヘビー級選手による「G1 CLIMAX」”。前身となる「TOP OF THE SUPER Jr.」(1988年、91−93年)をへて、94年より毎年初夏ごろに開催され、今年は節目となる25回目を迎えた。

 今年はA、B各ブロックに分かれ、総勢16選手が参加。6.3後楽園まで公式戦が行われ、各ブロック1位同士が6.4後楽園のメインイベントで優勝決定戦を行う。

 なお、この日は公式戦がなかったBブロックには、昨年度覇者のKUSHIDA、12年優勝の田口隆祐、モーターシティ・マシンガンズ(パートナーはアレックス・シェリー)として過去にIWGPジュニアタッグ王座を獲得経験のあるクリス・セイビン、CMLLでカマイタチ(高橋ヒロム)とライバルストーリーを構築したドラゴン・リー、現IWGPジュニアタッグ王者であるエル・デスペラード、ROPPONGI 3Kとして海外遠征から凱旋した元ヤングライオンのSHO、元IWGPジュニア王者の高橋ヒロム、前IWGPジュニア王者のマーティー・スカルといった強豪選手がエントリーしている。

新技ブラディークロスでオスプレイを粉砕

ヒールターンした石森(左)。いきなりのIWGPジュニア王者撃破で、今後どのような戦いをみせるか 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 メインイベントでは、“生まれ変わった”石森太二が、現IWGPジュニアヘビー級王者ウィル・オスプレイを撃破。5.4福岡大会では「NEW BONE SOLDIER」としてオスプレイに新技ブラディークロス(ブラディサンデーの体勢から、自分の両ヒザを相手の顔面に炸裂させる変形フェースバスター)を食らわせ、BULLET CLUB入りを果たした石森が、新日本ジュニアに鮮烈な印象と結果を残した。

 石森は“レインメーカー”オカダ・カズチカと同じ闘龍門の出身で、02年にメキシコでデビュー。06年からレギュラー参戦していたプロレスリング・ノアでは、団体の至宝であるGHCジュニアヘビー級王座を歴代最多記録となる連続10度防衛した記録を持つ。「BEST OF THE SUPER Jr.」には10年にも一度参加しており、Bブロックを1位で突破したが、決勝トーナメントでプリンス・デヴィット(現WWEのフィン・ベイラー)に敗れ、優勝を逃している。16年10月の「SUPER Jr. TAG TOURNAMENT」では、ACHとのコンビで準優勝(優勝はロッキー・ロメロ&バレッタ)。今年3月12日にノアを退団し、海外に主戦場を移していたが、「富と名声を得るため」BULLET CLUB入りを決意。5.4福岡大会に突然姿を現し、新日本マット侵攻を予告した。

 一方、オスプレイは“レインメーカー”オカダ・カズチカから直々にCHAOS入りをスカウトされた25歳の有望株で、16年に新日本マット初登場を果たすと、同年の「BEST OF THE SUPER Jr.」で初出場初優勝。翌年は惜しくも準優勝と連覇はならなかったものの、現在、IWGPジュニアヘビー級王座を3度防衛中だ。

 石森はBONE SOLDIERのマスクをかぶって入場。一方、オスプレイはゴングと同時にジョン・ウーを発射し、コーナーに詰めてのエルボー連打から串刺しドロップキック。さらに場外戦ではステージに飛び乗ってからのクロスボディー。しかし、石森もロープの反動を利用したスライディング式ジャーマンで首にダメージを与えると、なおもフェースロックで締め上げる。オスプレイはブラディサンデー、トップロープに引っ掛けてのシューティングスタープレス、コークスクリューキックと勝負をかけると、石森のリバースフランケンシュタイナーを食らいながらも、スパニッシュフライからのオスカッターを狙うが、石森はこれをこらえると、福岡でも披露した新技ブラディークロスで現王者を粉砕した。

 試合後、マイクを握った石森は「IWGPジュニアヘビー級王者、だせえな」とオスプレイを一蹴すると、「このBEST OF THE SUPER Jr.、ここ後楽園から始まって、最後も後楽園。オレから目を離すなよ。最後にこのリング上で笑うのはこのオレ、BONE SOLDIER、タイジ・イシモリ、イッツ・リボーン!」とアピール。見事に大会を締めてみせた。

 現王者から勝利したことで「すぐに挑戦とか難しいかもしれないけど、オレが結果を出して、誰にも文句を言わせない。それでオレが挑戦してベルトを獲る」と、リーグ戦優勝&IWGPジュニア王座奪取を堂々と宣言。もちろん、これまでの石森の実力とキャリアをもってすれば、それは不可能ではないだろうが、気になるのは、「生まれ変わった」その先だ。デビュー当時は師匠であるウルティモ・ドラゴン校長から一目置かれ、日本では「セーラーボーイズ」としてアイドルデビューも果たし、ノアではダンスをしながらの入場パフォーマンスなど、常に明るいイメージでいた石森。それが、BULLET CLUBの「黒」に染まることで、どう変化を遂げていくのか。今後のファイトスタイル、パフォーマンスも含め、目が離せない存在が、このBEST OF THE SUPER Jr.、そして新日本ジュニアにどんな風を吹かせるのか。

YOHが貴重な初白星を奪取

前回は全敗で終わったYOH(右)だが、今回はBUSHIから初戦で白星を飾った 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 セミファイナルでは、ROPPONGI 3KのYOHが、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのBUSHIから貴重な白星をGETした。

 YOHは本名の小松洋平として15年の「BEST OF THE SUPER Jr.」に参戦するも、結果はリーグ戦全敗。その後、16年1月からは同期の田中翔と共にメキシコ遠征に出発し、昨年10月にROPPONGI 3Kとして凱旋。いきなりIWGPジュニアタッグ王座獲得も果たしたが、2度戴冠し、いずれも初防衛に失敗している。

 一方、BUSHIは06年に全日本プロレスへSANADAらと同期入門し、12年に新日本に「レンタル移籍」したことをきっかけに新日本に正式入団。16年にはKUSHIDAからIWGPジュニアヘビー級王座を奪取し初戴冠するも、初防衛戦でKUSHIDAに敗れ、わずか3カ月足らずで王座から転落している。

 BUSHIはゴングを待たずに奇襲攻撃を仕掛けると、YOHは側転からのバックエルボー、ノータッチトペで反撃。さらに場外でBUSHIのTシャツを脱がせるが、逆に絞首刑にされてしまう。なおもBUSHIはエプロンサイドへDDTで突き刺し、首4の字固めで締め上げると、さらにトペスイシーダ、雪崩式ヘッドシザースホイップ。しかし、YOHもMXをキックで阻むと、エルボー合戦、張り手の応酬からBUSHIが延髄斬り、カナディアンデストロイヤー。これをカウント2でしのいだYOHが、コードブレーカーを切り返し、新技のファイブスタークラッチで押さえ込んで3カウントを奪取。3年前からの成長の証を見せつけたことで、シングルプレーヤーとしても新たな一歩を踏み出した。

人気者のACHがゴードンを振り切る

ROHの“超新星”フリップ・ゴードン(左)がBOSJ登場。ACHとの試合でもインパクトを見せた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 第6試合では、石森の元パートナーであったACHがROHの“超新星”フリップ・ゴードンを振り切った。

 ACHは昨年に続き2度目の出場。ハイフライヤーとしての高い身体能力とパフォーマンスで会場人気が高く、「ACH」コールが定番となっている。

 対するゴードンは今年2月の「HONOR RISING JAPAN」で新日本に初上陸。2.23後楽園ではKUSHIDA、高橋ヒロムと3WAYマッチを行い、ヒロムにフォーフリッピースプラッシュで3カウントを奪取したことで、一躍、その名をとどろかせた。

 試合開始と同時に発生した「ACH」コールだが、ゴードンのヘッドスプリング連発で、観客の目をクギづけに。ACHもバックブリーカーからのジャーマンスープレックスや、逆水平チョップを繰り出すも、ゴードンにかわされて鉄柱に自爆。ゴードンはスワンダイブ式ミサイルキックや、トップロープから対角線上のロープに飛び乗ってのスワンダイブ式の場外アタックなどといった、ファンの度肝を抜く大技を連発。さらに、南側客席に連れ出し、階段部分の上から捨て身のダイブをすると、さらにリングに戻してその場飛びシューティングスタープレス。ACHの反撃を食らいながらも、ファルコンアローからのフォーフリッピースプラッシュを狙うが、これをACHにかわされ、自爆。ACHは左肩の痛みに耐えながら、右腕だけでジャーマンスープレックスを決めると、ベアハッグの体勢から投げるソウルバスターでフィニッシュ。勝利こそ収めたものの、左肩の状態と、観客の関心をさらったゴードン人気により、今後のリーグ戦に大きな不安を残す形となった。

タイガーは金丸の一瞬のスキをつき白星発進

金丸(上)がタイガーのマスクに手をかけるが、最後はタイガーが逆転勝利となった 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 タイガーマスクvs.金丸義信のベテラン対決では、最多タイ記録となる17年連続出場を誇るタイガーが、一瞬のスキを突いて勝ち星をさらった。

 タイガーは初代タイガーマスク・佐山聡の弟子であり、最初から覆面レスラーとして95年にデビュー。みちのくプロレス所属から02年に新日本に移籍すると、04年&05年の「BEST OF THE SUPER Jr.」で史上初となる2連覇を達成。昨年、これまで21度出場していたジュニアのレジェンド、獣神サンダー・ライガーが卒業を宣言したことで、タイガーが今年、ライガーの持つ「17年連続出場」の記録に並ぶことになった。

 一方、金丸は昨年に続き2度目の出場。96年に全日本プロレスでデビューし、00年に移籍したプロレスリング・ノアでは、史上最多となる7度にわたりGHCジュニアヘビー級王座を獲得。現在は鈴木軍の一員となり、エル・デスペラードと共にIWGPジュニアタッグ王座を保持している。

 試合前、タイガーが右手を差し出し、握手を求めるが、金丸は無視。ゴングと同時に場外戦を仕掛けると、さらに、タイガーのマスクに手をかけ、あわや素顔が見えそうに。慌ててマスクを直そうとするタイガーに、なおも金丸は容赦なく場外DDT。エプロンに寝かせての首へのキック、ストンピング。タイガーもハイキック、タイガードライバー、雪崩式ダブルアームスープレックス、腕ひしぎ逆十字固めと反撃に出るが、金丸はレフェリーのブラインドを突いての急所攻撃。場外でセコンドの若手をつかまえてボディースラムで投げつけ、リングに戻ろうとしたところにも、若手をぶつけて妨害工作に出るが、タイガーはギリギリ、場外カウント20以内にリングイン。ならばと金丸が雪崩式ブレーンバスターで勝負に出たところ、直後にタイガーが丸め込んで3カウントを奪い取った。

 十中八九勝利を手中に収めながらの逆転劇に金丸は激怒。「BEST OF THE SUPER Jr.」を知り尽くしたタイガーが、難敵を場数の差でしのいでみせた。
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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