原口元気、自問自答の4年間で得た自信 W杯で「対峙する相手には絶対負けない」

島崎英純

W杯という夢の舞台にたどり着いた原口は、今何を思っているのだろうか 【Getty Images】

 ワールドカップ(W杯)は原口元気が心に抱く夢の舞台だ。1998年のW杯フランス大会アジア最終予選を旧国立競技場で見た少年時代に、すでに彼は日の丸を付けて活躍する自らの姿を思い描いていた。Jリーグで飛躍を果たしてドイツへと降り立ち、さまざまな壁に直面した後に、原口は己を客観的にとらえつつ、それでもロシアの地で躍動する覚悟を決めた。今の彼にとってW杯は夢ではなく現実。そこで勝負して力を示さなければ未来へは進めない。だからこそ、あえて試練の場に身を投じ、その先にある新たな夢をつかむ。(取材日:5月2日)

監督交代について「選手として、責任を感じている」

ハリルホジッチ監督の解任については「選手として責任を感じている」と話す 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――日本代表ではヴァイッド・ハリルホジッチ監督が解任され、西野朗監督が新たにチームを率いることになりました。原口選手は、ハリルホジッチ監督についてどんな思いを抱いていたのでしょうか?

 リアリストで、情熱があって、人間っぽい人だと思っていました。サッカーに対する情熱、日本代表をW杯で勝たせたいという情熱は伝わっていました。

――原口選手はアジア最終予選の大事な試合で起用され、4試合連続ゴールなど結果を残しました。監督からの信頼を受けていたように感じました。

 僕の良さを引き出すことを、とても考えてくれていた監督でした。いろいろなポジションで起用してくれましたから。ボランチでも起用されましたしね。どのポジションが僕にとって一番良いのか。ハリルさんはそれを考えてくれていた。その中で、ボールを運ぶ能力、走る能力を買ってくれていたんだと思います。

――原口選手はハリルホジッチ監督の要求に応えようとしていたのですね。

 もちろん、そう思っていました。サイドでプレーしたい気持ちもありましたけれど、ボランチでのプレーにも面白さを感じていました。正直、当時はイライラもしていたんですけど(笑)。それでも、試合に出られないよりはいい。チームが発足したばかりのころはスタメンの機会も少なかったですから、とにかくピッチに立ちたかった。

――今回、思わぬ形でハリルホジッチ監督がチームから去ってしまったわけですが、率直にどんな思いを抱きましたか?

 僕は浦和(レッズ)でもヘルタ(・ベルリン)でも監督交代を経験しました。やはり選手としては(監督交代は)本意じゃない。悔しいですよ、やっぱり。それは、どのタイミングでもそう思う。僕は選手として、責任を感じている。でも、そういう世界だということも理解しているので、今、何かを言うつもりもないです。

W杯に向けて、「準備してきたものには自信がある」

原口にとって初めてのW杯となるロシア大会。「準備してきたものについては自信がある」と意気込む 【Getty Images】

――西野監督体制ではW杯本番の前に強化試合が3試合ほど組まれています。ただ、その前に原口選手は代表メンバー入りを目指さなくてはなりません。

 正直、分からないですよね。ハリルさんであれば、どんなサッカーをするのかを理解していたつもりです。僕にどんなプレーを求めているのかも分かっていた。だからクラブでプレーしているときも、ある程度それを意識していました。でも、今はまったく分からない。

――原口選手はJリーグで、西野監督が率いたチームと対戦した経験がありますよね。

 浦和時代に、西野監督が指揮を執っていたガンバ大阪と対戦したことがあります。西野監督は強かった時代のガンバを率いていたイメージがあります。また、今は(宇佐美)貴史から西野さんのことをいろいろ聞いています。貴史にとってはプロになったときの最初の監督が西野さんだったので。でも、当時のガンバと今回の代表では選手が違うので、同じサッカーにはならないですよね。だから余計なことは考えず、チームのために戦うことだけを考えています。

――W杯開幕2カ月前の監督交代は、日本サッカー界では初めてのことです。

 そうでしょうね。なかなか、こんなことはないでしょう。

――他国の例を見ると、大会直前の監督交代は総じて良い結果が出ていません。

 でも過去の例は関係ないですけどね。僕にとっては、まず代表に選出されること。そのための努力をするしかないですから。W杯でプレーするイメージはいろいろ持っていますが、僕にとっては初めての大会になるから、その点でも未知な部分が多い。でも準備してきたものについては、自信があります。

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著者プロフィール

1970年生まれ。東京都出身。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当記者を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動。現在は浦和レッズ、日本代表を中心に取材活動を行っている。近著に『浦和再生』(講談社刊)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信。ほぼ毎日、浦和レッズ関連の情報やチーム分析、動画、選手コラムなどの原稿を更新中。

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