【新日本プロレス】オカダが棚橋を退け前人未到V12達成 次期挑戦者にオメガ逆指名で大阪決戦へ

高木裕美

オカダがIWGPヘビー級王座史上最多となる12度目の防衛に成功した 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 新日本プロレス「レスリングどんたく2018」福岡国際センター大会2日目となる4日は、札止めとなる6307人が、サプライズの連続に驚愕し、新たな歴史の誕生の目撃者となった。なお、来年も5月3日&4日に同所で2DAYS興行として開催されることが発表されている。

 メインイベントのIWGPヘビー級選手権試合では、“レインメーカー”オカダ・カズチカが棚橋弘至の挑戦を退け、史上最多新記録となる12回連続防衛を達成。試合後はV13戦の相手にケニー・オメガを指名し、6.9大阪城ホール大会で、史上初となる時間無制限三本勝負で争われることが決定した。

IWGP戦ではオカダが勝ち越していた

V12を阻止された棚橋が、今度はオカダの記録を阻止せんと挑んだ 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 6年前、棚橋を破ったことで始まったレインメーカーの栄光ロードが、再び、棚橋への勝利によって新たな分岐点へと切り拓かれた。オカダは12年2.12大阪で、棚橋のV12を阻止し、IWGP王座を初戴冠。24歳のほぼ無名の若手が“絶対王者”を破るという衝撃は「レインメーカーショック」として全国を駆け巡り、オカダは一躍スターダムにのし上がった。棚橋は同年6月にすぐにベルトを取り返すと、その後も「新日本のエース」のポジションを守り続けてきたが、16年1.4東京ドーム大会のメインでオカダに敗れると、その後はIWGP戦線から撤退。一方でオカダは15年から4年連続で1.4ドーム大会のメインを務め、歴代最長となる1年10カ月にわたって同王座を保持。もはや、押しも押されぬ新日本のトップに君臨した。

 華々しく頂点で輝き続けるオカダに対し、かつて「太陽のエース」と呼ばれた男は、ドン底を味わっていた。16年1.4東京ドームでオカダに敗れ、ドームのメインでの連勝記録が5で途絶えると、5月には左肩を負傷し長期欠場。17年の1.4ドームでは、セミで内藤のIWGPインターコンチネンタル王座に挑むも敗北。5月に右腕を負傷しながら、6.11大阪で内藤からベルトを奪い返すも、12月に右ヒザを負傷。今年の1.27札幌では、鈴木みのるに古傷の右ヒザを攻められ、ベルトを失った上に長期欠場に追い込まれていた。

 過去の両者の戦績は4勝4敗2分の五分。だが、IWGP戦においては、オカダが4勝3敗と勝ち越している。4.1両国国技館大会でオカダがV11達成後、棚橋は「世界中探しても、次の挑戦者、オレしかいねぇじゃん。今度は逆だ。おまえの防衛記録、オレが止めてやる」と6年前のリベンジを果たすべく、名乗りを上げたが、これに対しオカダは「棚橋さん、あなた、何やってたんですか。ケガして、復帰して、ケガして、復帰して、チャンピオンでなくなって、NEW JAPAN CUP準優勝して。つまんねぇ男だな。あなたは、もう棚橋さんじゃない。おまえは、棚橋だ」と、エースの座から転げ落ちた男を玉座の上から見下していた。

棚橋が意地を見せるもレインメーカーに散る

粘る棚橋を、オカダは電光石火のレインメーカーでしとめた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 オカダの新記録誕生を願うファンと、棚橋の復権を祈るファンの声援が飛び交う中、オカダは序盤から多彩なDDTで棚橋の首にダメージを蓄積させると、さらに首への低空ドロップキック、エルボー。15分過ぎには、リバースネックブリーカー、ダイビングエルボードロップを突き刺すが、棚橋もドラゴンスクリュー、場外へのハイフライアタックで反撃。だが、オカダも場外マット上へのツームストンを発射し、棚橋は場外カウント20寸前で何とかリングに這い上がる。互いの意地ムキ出しのエルボー合戦から、棚橋がツイストアンドシャウト、スリングブレイド。ハイフライフローはかわされて自爆となるも、オカダのレインメーカーをスリングブレイドに切り返すと、お株を奪うツームストンからうつ伏せ状態へのハイフライフロー。だが、仰向け状態への2発目はヒザ剣山でブロックされる。

 30分過ぎ、オカダがジャーマンスープレックス、棚橋がドラゴンスープレックスを繰り出すと、棚橋はスリングブレイドからのハイフライアタックを狙うが、オカダがドロップキックで迎撃。ならばと棚橋はまたも掟破りとなるレインメーカーを発射するも、オカダはカウント1。なおも張り手を連発する棚橋に対し、オカダはタイツをつかんで自分の元に引き寄せると、電光石火のレインメーカーでフィニッシュ。かつて、自分が阻止した「V12」という記録を、自らの力で達成してみせた。

オメガ戦は時間無制限三本勝負に

オカダは次期挑戦者にオメガを指名。さらに試合形式を時間無制限三本勝負にしようと提案した 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 勝利したオカダは「棚橋さん、棚橋くん、棚橋先輩」と、その呼び方に迷いながらも、決して呼び捨てにはせず、「強かったよ」と賞賛。過去のV12戦について「丸藤、ケニー、鈴木、柴田、ファレ、ケニー引き分け、Cody、EVIL、内藤、SANADA、ザック、棚橋……。引き分けが1個入ってたな。次は、大阪城ホールかな。去年の大阪城ホール、60分引き分けだった、ケニー・オメガ!」と、昨年の6.11大阪で決着がつかなかったオメガを指名。姿を現したオメガに「もう、引き分けとかなしで無制限でやろうぜ」と呼びかけると、オメガも「でも、もっといい試合ができるだろう。三本勝負、どうですか」と逆に条件を提示。これにオカダも「いいねぇ。楽しいね」と呼応し、前代未聞の時間無制限三本勝負が決定した。

 オカダとオメガは昨年1.4東京ドームでIWGP王座を賭けて対戦し、46分45秒、レインメーカーでオカダが勝利。6.11大阪城では60分時間切れに終わるも、8.12両国国技館での「G1 CLIMAX」公式戦では24分40秒、片翼の天使でオメガが勝利しており、昨年の戦績は1勝1敗1分の五分となっている。

 過去には新日本マットでも「60分三本勝負」や「61分三本勝負」でタイトルが争われたことがあったが、IWGPヘビー級史上において「時間無制限三本勝負」は史上初。オカダは「大阪城の続きで、あの時観てくれていたお客さんにエンディングを見せたかった。過去にあろうがなかろうが、素晴らしい試合を見せて、V13の最強のチャンピオンを大阪城ホールで見せてやりたい」と意気込みを語ったが、かつてない壮絶な試合となることは必至。時間無制限といえば、1987年10月4日に山口県・巌流島で行われたアントニオ猪木vs.マサ斎藤が、2時間5分14秒の死闘を繰り広げ、プロレス史に今なお鮮烈に刻み込まれているが、新たな記録を作ったオカダが、最高の好敵手相手に、またしても歴史を塗り替えていくか。

 一方、オカダに敗れ、6年前の悪夢を払拭できなかった棚橋は、バックステージで「派手に負けちまったけど、オレはあきらめてないから。もっと強くなるから。過去の自分を超えるから」と号泣。3.16後楽園では「もう一度、新日本プロレスの頂点に立ちたい。いや、絶対に立つ!」と宣言したように、再びドン底から這い上がり、太陽のエースとして光を取り戻す時が来るのか。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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