【DDT】入江が竹下の連続防衛記録を阻止 石井慧介が次期挑戦者に名乗り

高木裕美

ダークマッチで戦っていた2人がメインに

15年10.25後楽園ではダークマッチを戦った2人。今回はKO−D防衛記録を争う試合としてメインに立った 【写真:前島康人】

 29日昼のDDTプロレスリング「MAX BUMP 2018」東京・後楽園ホール大会では、2大タイトルマッチなどが行われ、超満員となる1279人を動員した。

 メインイベントのKO−D無差別級選手権試合では、挑戦者の入江茂弘が王者・竹下幸之介を破り、竹下の連続防衛記録を11でストップ。次期挑戦者には元チームドリフの盟友であった石井慧介が名乗りを上げ、5.20後楽園でのタイトルマッチが正式決定した。

 入江は13年3月から8月まで、わずか5カ月足らずの短期間で8度の防衛に成功し、当時の新記録を樹立。一方、竹下は昨年3月から1年以上にわたって王座を保持し、入江の記録を塗り替えた後も11度の防衛に成功していた。

 両者のシングルマッチが行われたのは、15年10.25後楽園での1回のみ。この日は「DDTドラマティック総選挙2015」の選抜メンバーによる興行であったが、24位の竹下と25位の入江は本戦に出場できず、「ダークマッチ」として10分1本勝負で激突。激しいやり合いとなるも、時間切れで決着がつかないままに終わっていた。

 V12という連続防衛新記録に挑む若き王者の前に、過去の最多防衛記録を持つ先輩王者が立ちはだかる。この図式だけ見れば、新日本プロレス5.4福岡で行われるIWGPヘビー級選手権試合、王者オカダ・カズチカvs.挑戦者・棚橋弘至のようでもある。ただ、DDTが違うのは「団体への愛」「プロレスへの愛」を叫んでいるのは王者である竹下のみ。挑戦者の入江はむしろ「今のDDTは自分の好きだったDDTではない。それならすべてをぶっ壊そうと帰ってきました」と発言するなど、長期にわたる海外遠征で、団体への愛を失い、むしろ憎しみまで抱いている。

竹下は敗北に涙 新王者・入江がDDTを変えられるか

試合後はベルトを手に涙を流した竹下。入江はその姿に健闘を称えた 【写真:前島康人】

 2年半の時をへて、ダークマッチではなくメインで対峙した両者は、まずは竹下がプランチャを繰り出すと、すかさず入江もプランチャでお返し。竹下はエプロンでバックドロップを放つと、さらに雪崩式ブレーンバスターを決めるが、入江のラリアットが顔面に直撃し、一時ダウン。すかさず入江がデスバレーボムを連発し、キャノンボール。竹下も投げっぱなしジャーマンで反撃に出るも、入江が後頭部ラリアット、ビーストボンバーからタズミッションで捕獲。竹下はサプライズローズで一矢報いるが、カバーに入ることができない。15分過ぎには“巨人”石川修司をも倒した渾身のジャーマンスープレックスホールドが決まるが、これもカウントは2。入江はロープに噛み付いて次の攻撃を阻止すると、飯伏殺し、ビーストボンバー、コーナーからのキャノンボールアタックから再度のビーストボンバーで竹下の体を1回転させて3カウントをもぎ取った。

 敗れた竹下は、入江が受け取ったベルトを一旦奪い取り、顔に近づけて別れを惜しんでから、涙をこらえて入江に返還。入江は「素晴らしいチャンピオンだった。アンダーボーイズがメインで戦えたことをうれしく思っている」と竹下の健闘をたたえるも、そこに元盟友の石井がインディージュニアのベルトを肩にかけて登場。「オレはおまえが両国に帰ってきた時からいろいろ思っていた。おまえと戦うために実績を作った。オレの挑戦、受けろ!」と王座挑戦を訴えると、入江も「DDTで何の実績も残してないくせに何を勘違いしてる。そんなにやりたいならやってやる」と呼応し、その場で5.20後楽園でのタイトルマッチが正式決定した。

 入江は新パートナーとなったジェイソン“ザ・ギフト”キンケイド、渡瀬瑞基と共に「DDTで僕に仲間はいない。この3人でDDTを変えていく」と宣言した。他団体でも、もちろんDDT内部でも、ヒールや外敵が王者となり、団体に変革をもたらした時期がある。「DDTの未来」と呼ばれた若きエース・竹下を倒した入江が、この先、どのようにDDTを「破壊」し、変化を遂げていくのか。

HARASHIMAが宮本からベルト奪取 しかし仲間との別れ

HARASHIMAがEXTREAME王座奪取。しかしスマイルスカッシュから宮本とウラノが離脱となった 【写真:前島康人】

 まさかの通常ルールで行われたDDT EXTREME級選手権試合では、HARASHIMAが王者・宮本裕向を破り、約4年ぶりに王座返り咲き。試合後、宮本とヤス・ウラノが「スマイルスカッシュ」離脱を表明した。

 大日本プロレスのBJWデスマッチヘビー級や爆破王などのベルトを獲得し、様々な団体で活躍する宮本は、「何でもあり」のルールが許されるDDT EXTREME級王座戦でも、自分の土俵に相手を引き込み、これまで3度の防衛に成功。だが、今回の防衛戦にあたっては、宮本が得意のデスマッチやハードコアルールでも、はたまたHARASHIMAが13年11.17後楽園大会でアントーニオ本多と同王座を争った「目隠し乳隠しマッチ」(目隠しした状態で、相手のブラジャーを剥ぎ取った選手が勝利)のようなトリッキーな試合形式でもなく、あえて通常ルールを選択。そこには、過去の一戦への後悔があった。

 両者は過去に一度だけシングルマッチで対戦。2007年、宮本が所属する暗黒プロレス団体666の12.23新木場大会で実現し、破羅死魔(666内のHARASHIMAのリングネーム)が蒼魔刀で勝利している。その後、両者は「スマイルヤンキー」としてタッグを結成し、KO−Dタッグ王座も戴冠。だが、パートナーとなっても、10年半前の悔しさは晴らせず、今回、あえて正攻法での勝負に出た。

 新コスチュームでの登場となったHARASHIMAだが、序盤に鉄柱へキックを誤爆。すかさず、宮本がヒザ攻めに出る。HARASHIMAもジョン・ウー、顔面蹴り。宮本はなおも高さを生かしたダブルニードロップで攻め立てるが、HARASHIMAがリバースフランケンシュタイナー、蒼魔刀、ファルコンアローを繰り出すと、宮本がヒザ十字固め、サンダーファイヤーパワーボム。ムーンサルトプレスはHARASHIMAがヒザ剣山でブロック。宮本は投げっぱなしジャーマンから、掟破りの蒼魔刀を繰り出すと、HARASHIMAも後頭部へのショートレンジ蒼魔刀で本家の意地を見せ、さらにハイキックから、今度はお返しの逆ファイヤーサンダー。これには宮本もすぐさまファイヤーサンダーで反撃。ここでHARASHIMAがキック、蒼魔刀とたたみかけ、 王座を奪い取った。

 14年3月にベルトを失って以来、約4年ぶりに同王座を巻いたHARASHIMAは、5.13博多で行われる初防衛戦の相手に「負け越している」KUDOを指名。KUDOも「やりたいならやってやる。結果は一緒、そのベルト、磨いとけよ」と応じた。

 だが、その直後に、今度は宮本が「アンタに勝つのが目標。オレはアンタから勝ちたい。今日をもってスマイルスカッシュを脱退します」と宣言すると、オリジナルメンバーのヤス・ウラノまでもが「スマイルスカッシュの枠にとらわれずに羽ばたいていきたい」と追随。もはや唯一のメンバーとなった高尾蒼馬だけは「幽霊部員2人辞めちゃいましたね。出会いもあれば別れもある。2人で頑張りましょう」と呼びかけるが、そこにDAMNATIONが現れ、佐々木大輔が「ようこそDAMINATIONへ。裏切り者のHARASHIMAさんです。5.1新木場、新しいペットとして皆さんにお披露目しようと思います」と強引に勧誘した上、「とっとと裏切れ」と3人がかりでボコボコにする始末。災難に巻き込まれたHARASHIMAは、「いろいろなことがありすぎて、ちょっと混乱してますけど、頑張ります」と、あまりにも多くのことが一斉に起きていっぱいいっぱいになりながらも、DAMNATION入りだけは完全に否定した。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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