「背中で語る」浅村と「モノを言う」秋山 強力・西武打線を引っ張る二人のリーダー

中島大輔

打者として深みを増す浅村

若手時代からの豪快さに加え、臨機応変さも身につけた浅村 【写真は共同】

 そうした土壌をつくっているのが、二人のチームリーダーだ。

 現在の辻発彦監督が率いる以前の西武は、「各打者の能力は高いが、ただ振り回すだけ」と指摘されることも少なくなかった。それが今季「つながる打線」に変わる上で、キャプテン・浅村の果たす役割は大きい。

「とにかく自分が必死にやることによって、周りもそういう姿を見ていると思うので、そう意識してやっています。それ以外は別に、キャプテンとしてという意識はあまりないですね。秋山さんもいますし、引っ張る選手はいっぱいいて、そうやっていただいているので。僕はやりやすいようにやらせてもらっています」

 決して多くを語るタイプではない浅村は、いわゆる「背中で引っ張るリーダー」だ。

 4月18日、0対8から“奇跡の逆転勝利”を飾った日本ハム戦で1点を追いかける9回、先頭打者の源田壮亮が出塁すると、続く浅村は初球にセーフティバントの構えを見せた。そして6球目を速い球足のライト前ヒットで一、三塁とし、その後の逆転劇につなげている。

 若手時代、無心でフルスイングを繰り返すばかりだった浅村は、豪快さという持ち味を残しながらも臨機応変につなぎの役割も果たすことで、打者として深みを増している。

10年勝てていない空気を壊す!

秋山(写真後方)は外崎をはじめとした若手に負けぬよう成績を残し続けている 【写真は共同】

 円熟味を増すキャプテンとともにチームを引っ張るのが、30歳の秋山翔吾だ。

「うちのチームは若い選手が出てきているので、みんな思い切ってプレーした上で、『ここは』というところでは会話をしないといけない。オンとオフではないけど、ダメなものは言う。でも、ずっとカチカチってやっているとチームとしてまとまらないと思うので、僕をいじってくれてもいい。僕自身は、『若手に言えるような成績を残し続けないといけない』というモチベーションもあります」

 1番としてリードオフマンを務める秋山は、過去10年優勝できなかった呪縛を解くべく、自身の振る舞い方を考えている。

「誰かがダメなときは誰かがカバーする。助けてもらったと思う人間が次に頑張ることで、チームとして成り立つと思う。そういうのの先頭の方がいいじゃないかと。自分の成績を残すことだけを考えているのであれば斜に構えていてもいいけど、それではチームにならない。僕のことをうっとうしく思っている後輩もいると思いますよ。でも10年勝てていなかったら、そういう空気を壊す人間が出てこないといけない」

 浅村と秋山に引っ張られるチームのなかで、34歳の元キャプテン・栗山巧も20日のロッテ戦で決勝タイムリーを放つなど、勝負所で力を発揮している。10年前の優勝を知る栗山は、現チームの強さをこう説明した。

「先頭打者とかツーアウトからでも一緒ですけど、誰かが塁に出てつながっていったらビッグイニングになるのではという期待をみんなが持ちながら、点が離れてもやっている。それはここ最近に限ったことではなくて、何年も前からずっとやって来たことの積み重ねが結果として表れていると思います。あきらめずにやる」

 かつて強かった頃の遺産を引き継ぎ、かつ若手の勢いも加えていく。二人のリーダーにけん引されるチームは、ただ打ってつなぐだけではなく、外崎と金子侑司がリーグトップの7盗塁を記録しているように足を絡めることもできる。

 多士済々による十人十色の個性が相乗効果となって膨れ上がり、多彩な色がチームとして一つになる。そうして西武打線は他球団を圧倒する攻撃力を発揮している。 

2/2ページ

著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント