開幕好スタートの新生メッツ 新監督の手腕とベテランの統率力が融合

杉浦大介

開幕14戦で12勝のサプライズ

今季から指揮を執るキャラウェイ監督はコミュニケーション能力に定評ある 【Getty Images】

 ニューヨークの“もうひとつのチーム”が好スタートを切っている。今季の前評判は高くなかったメッツだったが、最初の14戦中12勝という快進撃。その後にやや勢いは落ちたものの、サプライズチームは依然としてナ・リーグ東地区の首位を堅持している。

「私たちは絶対に諦めない。このクラブハウスにいる選手たちは最後まで決して止まらない。それをこの試合で見せられたはずだ」

 日本球界経験者のテリー・コリンズ監督の後を継ぎ、今季から新監督となったミッキー・キャラウェイは4月18日(現地時間)のナショナルズ戦後に誇らしげにそう語っていた。この試合では8回表まで2対4とリードを許しながら、その裏に大量9点を挙げて大逆転勝利。最初の14勝中の実に9勝が逆転で挙げたものであり、粘り強さが特徴になっている感がある。

 メッツは2016年まで2年連続でプレーオフに進み、15年にはワールドシリーズに進出したチーム。昨季は故障者続出ゆえに低迷したものの、一昨年までの主力の多くがチームに残っているのだから、今季の好調は完全な“サプライズ”と呼ばれるべきではなかったのかもしれない。

 ノア・シンダーガード、ジェーコブ・デグロムを2枚看板に、スティーブン・マッツ、ザック・ウィーラーといった本格派が続く先発ローテーションは魅力たっぷり。野手にも主砲ヨエニス・セスペデス、昨季初のオールスターに選ばれたマイケル・コンフォート、長くメジャー屈指のトッププロスペクトと呼ばれてきたアメド・ロサリオらの好選手がそろう。

 これらの俊才たちを、コミュニケーション能力に定評あるキャラウェイ監督が上手に操縦している。基本的に投手力が軸のチームを率いるのに、昨季までクリーブランドで投手コーチとして経験を積み、インディアンスを投手王国に育て上げたキャラウェイは適任だったのだろう。

30代の選手が5人レギュラーに

 土台がほぼ出来上がっていたチームに、今オフには多くのベテランを加えたことも功を奏してきた。アスドルバル・カブレラ(32歳)のチームオプションを行使すると、昨季途中までチームに属したジェイ・ブルース(31歳)を呼び戻し、さらにトッド・フレージャー(32歳)、エイドリアン・ゴンサレス(35歳)とも契約。32歳のセスペデスも含め、今季のメッツはレギュラーのうち5人が30代という高齢チームになった。

 生え抜きの若手を辛抱強く育てるのが近年の流行だとすれば、メッツのチーム作りは時代に逆行しているとも考えられる。しかし、昨季はチーム内のごたごたも報道されたメッツにとって、プロ意識の高いベテランの注入は必要な動きだったに違いない。

「このチームは層が厚く、何をやるべきか理解したベテランが先頭に立っている。彼らこそがチームのキャラクターを形作ってくれているんだ」

 コンフォートがそう語っているのを始め、序盤戦での選手たちはチーム内の雰囲気の良さを盛んに強調していた。好調時は誰もが快適に過ごせるもので、“ケミストリー抜群”などと決めつけるのは早すぎる。ただ、中でも“球界最高級のナイスガイ”として知られるフレージャーを加えたことが、今後も響いてくる可能性は高いように思える。

「フレージャーは毎日を幸せそうに過ごしている。楽しげに、リラックスしている。そんな姿勢はチーム全体の助けになるんだ」

 キャラウェイ監督の証言通り、フレージャーは昨季まで7年間で通算175本塁打を放った強打者であり、リーグ屈指のリーダーでもある。去年も7月19日にヤンキース移籍後、若手が多いチーム内で統率力を発揮。ワールドシリーズまであと1歩に迫ったヤンキースの快進撃に、このアップビートな三塁手が一役買ったことは容易に想像できる。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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