高倉監督「私たちはまだ道の途中にいる」 女子アジア杯 なでしこジャパン帰国会見

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8大会連続のW杯出場を果たしたなでしこジャパン。高倉監督と選手たちが会見を行った 【スポーツナビ】

 サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)は22日、AFC女子アジアカップ2018が行われたヨルダンから帰国し、会見を行った。

 なでしこジャパンは女子ワールドカップ(W杯)予選を兼ねた女子アジアカップで、グループステージを2位で終え、8大会連続となるW杯出場権を獲得。現地時間20日に行われた決勝では、オーストラリアを1−0で破り、大会連覇を果たした。

 高倉麻子監督は「ベテランと若手がチームとしてひとつになり、グラウンドでなでしこらしく、粘り強い戦いができた。1歩、チームとして進んだのかなと思う」とコメント。19年に行われるW杯に向けては「この結果に満足せず、選手とともにまた来年のW杯に向けて進んでいきたい」と気を引き締めた。また、今大会でMVPを獲得した岩渕真奈は、「個人的には充実していた大会だった」と手応えを語りながらも、「もっともっと上にいかなければいけないし、もっとやらなければいけないと痛感した」と大会を振り返った。

粘り強い、なでしこらしい戦いができた

 皆さん、こんにちは。本当にたくさんの方々に集まっていただきありがとうございます。なでしこジャパンは今回のW杯予選兼アジアカップで、大会優勝、2連覇を成し遂げることができました。これもやはり、選手一同スタッフ一同、心ひとつに戦った結果だと思います。また、選手が所属するリーグ、チームでの日ごろの努力の賜物(たまもの)だというふうに強く感じています。

 私たちは今回、アジア杯を迎えるにあたって、3つの目標を立てていました。1つはW杯出場、もう1つは大会連覇。そして最後に、一番これが大事なことだと思っていましたけれども、チームと選手が成長するという目標を立てていました。最初の2つは結果が出たとおり、達成することができましたけれど、この大会を通してチームが成長したのかということに関しても、私自身はチームが粘り強く戦うことができるようになったと思います。今までなでしこで活躍してきた選手たち、ベテランになった選手たちと、若手がチームとしてひとつになり、グラウンドでなでしこらしく、粘り強い戦いができたということで、一歩、チームとして進んだのかなと思っています。

 ただ、皆さんも試合をご覧になった方がほとんどだと思いますが、内容的には押し込まれるシーン、日本らしいサッカーができなくなるシーンというのがありました。そこを上げていって、自分たちが主導権を握りながら試合を進めていく中で、なでしこらしい粘り強い戦いをするということを来年のW杯では、皆さんにお見せしたいと思います。私たちはまだ道の途中にいるという思いがありますので、この結果に満足せず、選手とともにまた来年のW杯に向けて進んでいきたいと思います。

サッカーをもっと知って、向き合ってほしい

高倉監督は岩渕(右端)について「日本が苦しいときに勝たせる選手になってほしい」と期待を寄せた 【スポーツナビ】

――今回、川澄(奈穂美)が招集されたが、会見ではオフ・ザ・ピッチの部分やグラウンドの中でも、何かがあったら締めてほしいという表現をしていたが、大会を見ていてどう感じたか?

 彼女は急な招集になりましたけれども、長崎でのキャンプのときからほとんど違和感なくチームに溶け込んでくれましたし、グラウンドの中でもホテルでもすごく明るくチームを盛り上げてくれました。グラウンド内では少し緩いプレーがあれば、厳しい声を掛けてくれたりもしていたので、そういった意味では、今までずっと代表に入っていた年上の選手たちも、彼女が入ったことで少し安心したような部分もありました。彼女がグラウンド上でプレーする時間はそんなに長くはありませんでしたけれど、チームにもたらしてくれた力は大きかったと思います。

――岩渕について。E−1(サッカー選手権)のときに「90分計算ができたら、日本の宝だ」という表現をしていたが、今大会は攻守に活躍してMVPも獲った。あらためて、どういう評価をするか。

 彼女も若い時から期待をされて、早いうちから代表選手として戦ってきていました。けがや出場時間がなかなか与えられない中で、苦しい時間が続いたと思うんですけれども、今はようやく心身共に充実してきている様子が見えました。実際に練習の中でも非常に体がキレていて、私も信頼して使っていこうと思う部分がありました。そういった中で、彼女がグラウンドでも、そういった表現をし始めているというのは感じます。ただ、まだまだ彼女も成長の途中にいると思います。本当に日本が苦しいときに勝たせる選手になっていってほしいと思います。

――チームの成長が大きなテーマだったということだが、ピッチ内またはピッチ外で、大会中に成長を感じた選手はいるか?

 本当にみんながなごやかにホテルの中でも過ごしていました。上の年代の選手たちと下の年代の選手たち、本当に10(歳)くらい違う子たちもいるんですけれど、本当に仲良くキャーキャやっているシーンを多く見ました。それ以外にも、サッカーの話をお互いにちゃんと意見をぶつけて、上が強制的に言うこともなく、下の子の意見をうまく聞き出していた。下の子もちゃんと代表選手として責任を果たそうというのがあったと思います。

 自分たちで映像を見て話をしたりですとか、グラウンドで要求することだけではなくて、自分たちがどうやって細かい点を修正していくかというところまで詰めていっている姿も見えました。ようやくチームとして覚悟を決めて、選手たちがやり出したなというのは感じます。

――目標を達成して、あらためて率直な気持ちを教えてほしい。

 やはり予選リーグから気の抜けない試合が続いていたので、早く終わらないかなと思っていたんですけれど。本当に一戦一戦、選手たちもそうだと思いますけれど、本当に目いっぱい自分の持っているものを出し尽くしたというのがあります。それに対して結果がついてきたというところに対しては、非常に安堵(あんど)感があります。

 逆に言えば、先ほども言いましたけれど、課題が多いなと感じることもあったので、これからが本当に大変だなと思いますし、これからが本当に勝負だなと思います。安心した気持ちと、これからが大変だなという気持ちと、両方の気持ちを感じながら帰ってきました。

――監督自身、大会優勝を経験して学ぶこともいろいろあったと思うが、具体的に何を学んだのか?

 もちろん相手によってとか、リーグ(グループステージ)自体の戦い方、ノックアウトステージになった時の選手の使い方というのはすごくデリケートでした。それもミーティングで言うのか、選手を送り出す前に言うのかというのでも全然変わってくる。その辺はやはり自分の感覚で今回やってみましたけれども、試合ごとに余計なものは削ぎ落とされていったのかなとは思います。

 ただ、本当にいつもこれでいいのかなという思いを抱えながら、普段どおり迎えました。チームというのは本当に大会の中で大きく壊れたり、登っていったりというのがあるなと感じました。グラウンド上での戦術的なことと、選手へのマネジメントといいますか、選手には大きな心の葛藤があると思います。その辺への態度というか、自分自身の気持ちを伝える・伝えないを含めて、全体的にチームを見ていくのは、大きな大会になればなるほど難しいなとは感じました。そういった学んだことも今後に生かしていきながら、選手とともに成長していきたいと思います。

またいろいろな選手にチャンスを与えたい

W杯までの選手選考に関して、高倉監督は「またいろいろな選手にチャンスを与えたい」とコメント 【スポーツナビ】

――W杯出場を決めて、選手にW杯までにこうなってもらいたいなど、声掛けをしていたら教えてほしい。

 海外組とは現地で解散をしたので、話をしたのは決勝の前の日だったんですけれども。とにかくこのチームはまだ成長の途中にいるということを言いましたし、ここから誰が強い思いを持って、なでしこを勝たせる選手になっていくかということを、選手には投げ掛けました。W杯という厳しい舞台の中で、みんなで勝ち切っていかなければいけないので、個々のレベルで圧倒してほしいという話はしました。

――今回選ばれなかった選手も含め、W杯までに選手に一番求めたいことは?

 来年のW杯に向かっていくにあたっては、またいろいろな選手にチャンスを与えたいという思いもありますし、U−20のW杯が終われば、また若い選手からも少し引き上げようかなと思っている部分もあります。

 やはり自分自身に矢印を向けろということを言ったんですけれど、いろいろな状況の中で、選手はうまくいかないときに、その原因を外に向けると成長はない。その矢印を自分に向けて、自分自身でサッカー選手として、深くサッカーと向き合ってほしいということを言いました。

 グラウンド上でのことを言えば、世界のサッカーがものすごくレベルアップしているので、プレーの強度と判断のレベルを上げないと、世界では簡単に局面でつぶされてしまうということがあると思います。それが単純にフィジカル的な要素であることもあると思いますし、予測判断をもっとスピードを上げるということでもあると思うので。サッカーをもっと知って、サッカーともっと向き合ってほしいなと思います。

――今日付けている眼鏡をしてから負けていないと思うが、意識している部分はある?

 最近、本を読むときに目が見えなくなって。あの眼鏡はまぶしいときでも大丈夫なものなので、最初はまぶしいから付けていたんですけれど、(眼鏡を付けた試合で)ああ、勝ったじゃんということになって。

 向こうでも日差しが強いから付けていて。(ある試合で)夜だったので(眼鏡を付けるのを)忘れてしまったのですが、そしたら失点してしまったので。決勝は絶対に夜だけど(眼鏡を)しようと思いながら。良いところを突いてくれてありがとうございます(笑)。やっぱり神頼みということもありますし、いいものをすべてやって勝ちにつながるように、勝ちの空気を持ってこれたらいいなと思っていました。

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