日本ハム・近藤健介、打率4割の現実味 ヒットを量産できる3つの要因

週刊ベースボールONLINE

日本球界史上初の「打率4割」が期待される日本ハム・近藤 【写真=BBM】

 この男のバットが止まらない。4月20日終了時点で打率は依然として4割をキープし、出塁率、OPSでも高い数字をマークしている。打撃覚醒の秘密はいったいどこにあるのか。若きヒットメーカーの驚くべき打撃術を徹底解剖してみたい。

打撃覚醒の大きなポイントとは!?

 もはや凡退することが珍しく感じてしまうほど、近藤健介が開幕から驚異的な数字を維持している。昨季は57試合出場で打率4割1分3厘をマーク。当然のように他球団からのマークも厳しくなった中でも、開幕から打率4割をキープしている。なぜこれだけの好成績を維持できるのか? 覚醒した打撃の大きなポイントは「軸足のタメ」「体重移動」「タイミング」の3点が挙げられる。

■軸足のタメ

 左バッターの近藤にとって軸足は左足。投手が投球動作に入ると右足を少し上げる。このときに体の重心を左半身に乗せる。右足を着地させるときは「とにかく優しくです」。その狙いについて「左足にタメを作って、そのパワーをバットに伝えていくわけですけど、そこで突っ込み過ぎてしまうと今度は体重が前のめりに乗り過ぎてしまうんですよね。左足に体重は残しつつ最後は体の軸で回りたいので、本当に右足は優しく、優しくステップする意識です」と、過去のインタビューの中でも明かしている。

■体重移動

 十分に“タメ”を作ることで、ボールを見極める際にも大きなメリットを生む。左半身に移動させた重心をどっしりと固定させることで視線がブレにくくなり、極端に言えば体重移動をするのはこの部分だけ。弓を射る際に後ろへ大きなパワーをためるように、打つべきポイントにボールが来るタイミングに合わせて手から矢を離すようにバットを振り出す。体の軸は左足の位置のまま回転。右足以外はほぼ前に出ないため、インパクトの瞬間まで目線は同じポジションを維持することができる。

■タイミング

 この一連の動作でほかのバッターたちに比べて見た目でコンマ数秒だが、アドバンテージを得ていることになる。

「その時間でストライクかボールの判断、振る準備も自分の中で余裕を持ってできるようになりましたし、タイミングも取りやすくなったと思います」

 投球の軌道、スピード、ストライクかボールの判断など数秒の間にさまざまな状況把握が必要となる打者にとってじっくりと見極められる「時間」を、試行錯誤の末に完成させた打撃フォームによって生み出している。結果、ボールゾーンに手を出す確率が極めて低くなるなど、左足のタメを意識して作り出した時間によるメリットを最大限に生かしている。

データ上では弱点が見当たらない!?

 さらにボール球には手を出さないので、四球の数も必然的に増える。相手投手はストライクを投げれば打たれ、ボールを投げれば見極められてしまう。球威で押し切るのか、キレのある変化で惑わすのか、打ち損じを待つのか……。失投が許されないプレッシャーを与え、打者優位の状況を高い確率で近藤は作り上げている。打率4割だけでなく、出塁率も5割を超え、さらに出塁率と長打率を足したOPS(1.066)も強打者の水準値を大きく上回る。現状では抑えられる弱点はデータ上ではほぼ見当たらない。

 シーズンを通してベストなコンディションを維持できれば、夢の数字も現実味を増してくる。現状で近藤が最も意識しているのは「良くない打撃が長続きしないように心掛けている」。試合前の打撃練習ではセンター方向へ打ち返すことを繰り返し、軸足のタメ、体重移動、ミリ単位でのタイミングのズレを確認しながらセンター返しの感覚を体に染み込ませている。ハイアベレージを可能にする打撃フォームの維持と日々の鍛錬の中からさらなる進化を遂げれば、日本球界初の「打率4割」という未知の数字もこの男なら、もう決して夢物語ではない。
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