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DeNAの好スタートを支えた若手投手
ドラ1・東の可能性と飯塚の成長の理由

ケガで体重が増えると球速もアップ

「自分でもすごく楽しみです」と自身の成長について口にする東
「自分でもすごく楽しみです」と自身の成長について口にする東【(C)YDB】

「ケガをしたことじゃないですかね。大学2年の夏に、ひじの炎症と足首の捻挫が重なって、まったく動けない状態になった。食べる量は変わらないから、体重がどんどん増えて。仲間から『お前、太り過ぎやろ』って言われるぐらい太ったんですけど、逆にそれがよかったみたいです」


 ケガが癒え、重くなった体でボールを投げると、球速がいっきに上がった。東によれば、体重は70キロから78キロに、最高球速は146キロから152キロに増したという。「上」への伸びが止まっても、まだ「横」に成長の余地があったのだ。


 4年生の春のリーグ戦で自身2度目のノーヒットノーランを達成すると、プロへの思いが芽ばえた。だが東は、「自分がプロでも通用すると思ったわけじゃなくて」とクギを刺す。


「152キロまで球速が上がって、奪三振率も上がってきた。プロの世界に入ったら、また変わるんじゃないか。自分はあとどれだけ成長できるのか。それを確かめたいと思ったんです」


 もう伸びないと半ばあきらめていた自分が、大学で指導者に厳しく育てられたわけでもなく、ケガによる増量という思わぬきっかけでプロ注目の選手となった。自分には、自分でも想像もつかないような可能性が秘められているのではないか。その関心こそが、プロ入りを決めた理由だった。


「(入団後)コーチやトレーナーさんが常に帯同しているという状況が初めてなので、新たな発見があります。どこが弱点で、どこを鍛えたら可能性が広がるのか。自分でもすごく楽しみですね」


 あくまでナチュラルに成長してきた22歳はいま、プロの入り口に立ち、未知の自分に出会える日を心待ちにしている。

チーム内の競争を意識する飯塚

飯塚は18日に登録を抹消されたが、そこまで3試合に先発して防御率2.16と試合をつくった
飯塚は18日に登録を抹消されたが、そこまで3試合に先発して防御率2.16と試合をつくった【(C)YDB】

 先発ローテーションを支えてきた若手として、京山、東と並び立つのが飯塚悟史だ。ここまで3試合(16回2/3)に登板して防御率2.16。勝ち星には恵まれていないが、先発投手としての役割をしっかりと果たしてきた。


 1軍デビューを飾った昨シーズンは、念願の初勝利を挙げた一方で、悔しさも味わった。


 昨年、筆者が横須賀市長浦の青星寮を訪れた時、ロビーのソファーからむくりと起き上がるワイシャツ姿の若者が見えた。寝ぼけ眼で「ああ……」とため息をついていたのが飯塚だった。


 9月13日、マツダスタジアムで開催された広島戦に先発登板した飯塚は、いきなり連打を食らい、1回6失点で降板していた。横須賀に戻ったのは、その翌日。疲れのためか、寮に着くなり眠ってしまったのだろう。飯塚が苦笑まじりに思い返す。


「朝イチで新幹線に乗って帰ってきたんですけど、ホテルから広島駅までタクシーで移動した時に、運転手さんから言われたんです。ぼくのことを選手だとは気づいていなくて、『明日にはカープの優勝が決まるんだから、もう1日だけ広島にいればいいのに。すごく盛り上がるよ』と。自分は、『それを手助けしちゃったの、おれなんだよな……』とかって思いながら聞いてました」


 広島のリーグ優勝はカウントダウンに入り、DeNAはCS争いで重要な局面にあった。しかし無残な結果に終わり、肝心の試合の記憶が薄いという。


「(1イニング6失点での降板は)いままでの野球人生でも経験がない。あのイニングの記憶がないぐらいに慌てたというか、雰囲気に呑まれていました。巨人が勝てば順位が入れ替わる、そういう大事な試合だということは分かっていたんですけど、それが余計なプレッシャーになってしまっていた。自分のボールも全然通用しなくて、正直、落ち込みました」


 だが、痛恨の経験は成長の糧だ。オフには瞬発系のトレーニングに重点を置き、課題とされたストレートの球威が向上。精度を増したスライダーとフォークを有効に使う配球の組み立てもできるようになり、今シーズンの安定した投球につながっている。


 飯塚をさらなる成長へと駆り立てるのは、チーム内の競争だ。京山と東、好投を続ける2人の存在は「両方意識している」と21歳は言う。


「年は近いですけど、自分は4年目ということもある。2人がいいピッチングをしたら自分もいいピッチングをしなきゃって、闘争心がかき立てられる部分はあります。刺激を与えてくれる相手がいるのはありがたいことだし、意識しないよりも、意識したほうが自分にとってはいいと思う」


 4月17日、今シーズン初勝利を期した故郷・新潟での凱旋登板では苦しみながらもゲームをつくったが、降板した直後に、マウンドを引き継いだエスコバーが逆転本塁打を被弾した。ベンチから打球を見送った飯塚は、あと一歩で勝利を逃した悔しさを奥歯でかみしめていた。


 昨シーズンの2ケタ勝利トリオの1軍合流が間近に迫ると見られる中、飯塚は18日に登録を抹消された。


 今後のローテーションがどういう形になるのかはまだ分からない。ただ、ドラフト7位から着実に評価を高めてきた右腕への期待が、ここで消えることはない。


(取材協力:横浜DeNAベイスターズ)

日比野恭三
日比野恭三

1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。

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