大谷の3回目の先発登板をデータで分析 マメで制球乱すも4シームの質は改善
驚異の反射神経を持つベッツ
初回に先頭打者本塁打を放ったレッドソックスのベッツ 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
あの打席では、大谷が追い込みながら、最後はフォークがすっぽ抜けて四球を与えてしまうが、カウント2−2からの6球目のフォークは、この試合では珍しく低めのいい位置に制球されていた。縦の変化もマイナスを記録しており、トップスピンがかかっていた。
国学院大准教授で投手の投球動作解析を行っている神事努氏によると、2017年にトップスピンのスプリットを投じたのは田中将大(ヤンキース)らごくわずかで、全投球の0.2%だったという。
普通なら、フォークだと分かっていても、当てることさえ至難な球筋。しかも、2ストライクだったことから、ベッツは4シームのタイミングで待っていた。それでファールしたのだから、にわかには信じられなかったが、おそらくあれを当てられるのはベッツぐらいか。
実は先月、アリゾナ州フェニクスでセイバーメトリクス(統計学などを駆使し、客観的に選手の評価をする手法)の学会が行われ、神経科学によってアスリートの能力を評価する「神経スカウティング」が浸透してきている、という話が紹介されたが、それが一般に知られるようになったきっかけこそがベッツだ。
昨年11月、ボウリングで300点を記録し、高校時代には175センチという身長ながらダンクを決めるなど抜群の運動神経を持つ彼は、11年にドラフトされる前、レッドソックスからタブレット端末を渡され、神経科学に関連するテストをするように求められた。
それはボールが見えた瞬間にキーを押す、あるいは縫い目がどう見えたかによってキーを押すといったものだったらしいが、ベッツは信じられないような得点をたたき出したのだという。
実際のところ、神経科学とパフォーマンスの関連はまだ証明されていないが、ベッツはマイナーにいる時にも同じようなゲームを続け、その特殊な才能を伸ばしていったという。おそらく、その彼の特殊の反射神経が、あの大谷のトップスピンのフォークをファウルにするという離れ業を可能にした――。
マメが回復すれば楽しみな要素も
軌道そのものはそれまでと大きく変わっていないので、痛みをかばってフォームを崩した、ということもデータからは推測ができない。一方で、4シームのホップ成分が大きくなるなど、今後が楽しみな傾向も出ているだけに、次回以降がさらに興味深くなっている。
ところで、右の中指にマメができるということは、中指で引っ掛けて、スプリットを投げているであろうということが想定できる。同じく中指で引っ掛ける岩隈久志(マリナーズ)も、よく中指にマメを作る。
力が強いことから、人差し指で引っ掛ける投手のほうが多いようだが、中指で引っ掛けているからこそ、大谷は4シームの軌道に近いフォークを投げられるのかもしれない。