大谷の3回目の先発登板をデータで分析 マメで制球乱すも4シームの質は改善

丹羽政善

大谷(左端)は右手のマメの影響もあり2回で降板した 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 4月17日(現地時間)、大谷翔平(エンゼルス)の3度目の先発登板は2回4安打3失点(自責3)2四球1三振。

 右中指のマメの影響でマウンドを降りたが、その時点ですでに66球。制球も荒れていたことから、マメの問題がなくても、続投は微妙だったのではないか。もっとも、球質そのものは決して悪くなかった。過去2回と比較する。

■4シーム
4月1日:2219回転/20.4センチ/39センチ
4月8日:2182回転/15.2センチ/43センチ
4月17日:2219回転/16.8センチ/43.6センチ
(左から、回転数/横の変化量/縦の変化量。回転数は1分あたり)

■フォーク
4月1日:1445回転/18センチ/3.35センチ
4月8日:1162回転/14.3センチ/6.4センチ
4月17日:1376回転/15.2センチ/8.23センチ
(左から、回転数/横の変化量/縦の変化量。回転数は1分あたり)

 まず、4シームを見ると、前回ほどではないが、初登板時に比べれば縦の変化量の数値(シュート成分)が小さくなり、縦の変化量(ホップ成分)はわずかながら、これまでで一番大きかった。この傾向が続ければ、大谷はもっと4シームで空振りを取れるようになるだろう。

 フォークの横の変化量は15.2センチで、4シームとの差は1.6センチ。これもいい傾向で、これでは相手が球種を見分けるのは難しい。縦の変化量に関しては、過去3回の登板のなかで一番落差が小さかった。数値が小さければ小さいほど、落ちていることになるが、その一方で、マイナスの数値を記録した球もあり、それらはトップスピンがかかり、鋭く落ちていた。

 ただ今回、そうしたデータがどこまで今後の参考になるか。あれだけ制球が乱れ、特にフォークの制球が定まらないと、配球もなにもない。投球全体を評価することも難しい。

制球難で狙い球を絞られる展開に

 すでに触れたが、大谷の長所は4シームとフォークの見分けがつかないところ。同じようなコースに投じられ、最後に軌道が枝分かれする。

大谷の4月1日、8日の右打者に対する4シームのヒートマップ。捕手側から見た視点 【出典『baseballsavant.mlb.com』】

大谷の4月1日、8日の右打者に対するフォークのヒートマップ。捕手側から見た視点 【出典『baseballsavant.mlb.com』】

 上の2つの図は、4月1日と8日の登板で、大谷が右打者に対してどこに投げたかを示す(捕手側からの視点)。色が濃いほど、そこに投じられた数が多い。上の図が4シームで下の図がフォークだが、右打者から見れば両球種とも外角低めに向かって来るように映り、最後にフォークは落ち、4シームはそのままストライクゾーンに収まる。

 軌道もほぼ同じなのだから、これではやはり、右打者が球種を見分けるのは不可能に近いのではないか。

 一方、17日の登板はどうか。

大谷の4月17日の右打者に対する4シームのヒートマップ。捕手側から見た視点 【出典『baseballsavant.mlb.com』】

大谷の4月17日の右打者に対するフォークのヒートマップ。捕手側から見た視点 【出典『baseballsavant.mlb.com』】

 先ほどと同じ条件(対右打者、4シームとフォーク)で17日の2球種を見ると、もうバラバラである。上の図の4シームは外角高め。下の図のフォークは外角低めに遠く外れる。

 こうなればもう打者はフォークを捨て、大谷がストライクを取りに来る4シームに狙いを絞ればいい。

 その大谷の4シームは100マイル近い球速を誇るが、軌道そのものはメジャーの平均値に近く、打者にしてみれば見慣れた軌道。それを待たれれば捉えられる。17日の初回、レッドソックスの先頭打者ムーキー・ベッツは、フルカウントから4シームにヤマを張った。

 打ったのは真ん中低めの難しい球。しかしベッツは、97.4マイル(約157キロ)の4シームに難なく角度をつけた。実は、あの球の回転数は2129で、横の変化量は17.68センチ、縦の変化量は50.9センチ。これだけを切り取ると、相手はホップすると感じるような球筋。しかし、コースそのものが低めだったため、そういう錯覚をもたらしにくい。あれが真ん中から高めなら、空振り三振に仕留めることができたはずだ……。

 ただ今回に関しては、フォークの制球の乱れた主な原因が指のマメだということがはっきりしており、大谷自身がその影響を認めているだけに、後は回復待ちか。ベッツに質の高い4シームを打たれたが、相手打者の意識の中にフォークがあれば、打たれる球ではない。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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