大阪桐蔭、春連覇に貢献した根尾昂 監督認める“ふてぶてしさ”で智弁封じ

楊順行

大阪桐蔭・西谷監督が「投手になるとふてぶてしくなる」と表現する根尾。今大会は140キロ台後半のストレートとスライダーを武器に、3試合26回、26奪三振、防御率1.03と圧巻の投球を見せて春連覇に貢献した 【写真は共同】

 根尾昂、マウンド上の表情が好きだ。

 射貫(いぬ)くような視線、口を真一文字に結んだ強気さ。会話するときは、聡明な高校生らしさがチャーミングなだけに、その対比がいい。

 大阪桐蔭(大阪)・西谷浩一監督が、おもしろい表現をした。

「(根尾は)野手のときは優等生なんです。ただピッチャーになると、人が変わって我が強くなる。性格も、ふてぶてしくなりますよ。間を取るために、スパイクのヒモを直すのも、本当はほどけているのかどうか(笑)」

連覇への欲を持って臨んだ春

 智弁和歌山(和歌山)との決勝。大阪桐蔭の先発は、三重(三重)との準決勝で8回を4安打9三振、無失点と圧巻の投球を見せた、ふてぶてしい根尾“投手”だった。

 昨年の履正社と戦った大阪決戦に続き、2年連続の近畿対決。智弁和歌山・高嶋仁監督は、昨年の公式戦で3連敗した相手との頂上決戦に闘志を燃やしている。

「組み合わせが決まったとき、決勝まで当たらないとわかったので、(西谷監督に)“やるまで、負けへんからな”と言うたんですよ。力的には向こうが上ですが、高校野球はなにが起こるかわかりません」

 西谷監督はこうだ。

「去年の夏、仙台育英(宮城)さんに負けた翌日から、春に優勝するため、とイヤというほど繰り返し、悔しさを忘れず部員全員で鍛えてきました。高嶋監督は雲の上の方で、決勝でやらせていただくのは光栄なことです。ただ、史上3校目の連覇への挑戦というのはまたとないチャンスなので、あえて欲を持ちながら臨みます」

打って5割、投げて最速146キロ

 淡々と進んでいた試合が動いたのは、西谷監督が「終盤に強いチームをつくろう」と言ってきた、その終盤だった。2対2と同点の7回裏、大阪桐蔭は四球で出た小泉航平がバントで二進し、続く宮崎仁斗がエンドランの打球をしぶとくレフト前に落として勝ち越し。8回には、無死二塁から4番・藤原恭大が、準決勝のサヨナラ打の再現のような当たりを左中間へ。1点を追加すると、さらに根尾が三遊間を破って二塁から俊足・藤原が生還して、3点をリードした。

 そして9回表の守備も2死一塁。根来塁の打球を一塁手の井阪太一が処理して、ベースカバーの根尾にトス。根尾は、マウンドから走り込んだ勢いのまま、ウイニングボールをつかんだグラブを高く掲げた。大阪桐蔭、史上3校目のセンバツ連覇達成――。根尾は、昨年の優勝決定時もマウンドにいたから、史上初めての2年連続優勝投手ということになった。

 5試合で都合18打数9安打8打点という、野手としての根尾もさることながら、3試合26回を投げて自責3、奪三振26の投手・根尾も抜きん出ていた。この日の最速は146キロ。それと「速いまっスラ、カットボールですかね?」(智弁和歌山・神先恵都)という変化球なども効果的に交え、4試合で34点をたたき出した智弁打線を6安打に封じた。

 根尾は言う。

「昨日より球の勢いはなかったんですが、いい投球ができた昨日のピッチングからつなげられました。後ろに柿木(蓮)がいるので、初回から飛ばした」

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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