エンゼルスを率いる名将ソーシア監督 大谷の活躍が今後の監督人生を左右!?

菊田康彦

監督3年目でワールドシリーズ制覇

監督就任3年目の02年にワールドシリーズを制し、長期契約に結びつけた 【Getty Images】

 95年から古巣ドジャースのマイナーで指導者に転身したソーシアは、97年にはかつての同僚であるビル・ラッセル監督の下で、ドジャースのベンチコーチ(NPBのヘッドコーチ格)に就任。一塁ベースコーチのレジー・スミス(元巨人)が首の手術で不在の時は代役を務め、三塁ベースコーチの離脱時にはその代わりを務めるなど、さまざまな経験を積み、オフの秋季リーグでは初めて監督として采配を振るった。

 2年のメジャーコーチ経験を経て、ドジャースのマイナーで本格的に監督業に取り組んだソーシアを待っていたのは、シーズン途中でテリー・コリンズ監督(のちにオリックス監督)が辞任し、ベンチコーチのジョー・マドン(現カブス監督)を代行に立てていたエンゼルスからのオファーだった。99年11月18日、40歳でエンゼルスの16代目監督に就任。当時、ソーシア政権がこれだけ長く続くとは、誰も思っていなかったはずだ。それまでの球団史で、最長は初代監督ビル・リグニーの9年であり、その後は5年以上チームを率いた監督は皆無だったからだ。

 長期政権を生んだ要因は主に2つ。まずはなんといっても、監督就任3年目の2002年に、エンゼルスを球団史上初のワールドチャンピオンに導いたことだ。かつてはドジャースが伝統としていた、機動力や小技を駆使する「スモールベースボール」でワイルドカードから勝ち上がり、最優秀監督賞にも輝いたことで、ソーシアの名声は一気に高まった。

 もう1つは、前回のコラムで紹介したアルトゥーロ・モレノオーナーの強い信頼の下、09年1月に10年契約を結んだこと。それまでに04、05、07、08年と4度ア・リーグ西地区優勝を飾るなど、実績は十分だったとはいえ、監督がこれだけの長期契約を結ぶのは極めて異例である。この年、エンゼルスは球団史上初の地区3連覇を成し遂げ、ソーシアも2度目の最優秀監督に選ばれるなど、オーナーの期待に見事に応えたかに見えた。

大谷がソーシアの名声をさらに高めるか?

 ところが10年代に入ると、打って変わって地区優勝は14年の一度だけ。ポストシーズンに駒を進めたのも、この年しかない(ディビジョンシリーズ敗退)。ジェリー・ディポートGM(現マリナーズGM)とはたびたび対立し、15年夏にはGMのほうがチームを追われることとなったが、これも長期契約があればこそだった。だが、今年はその契約もいよいよ最終年を迎え、もうあとがない状況である。

 これまでエンゼルス一筋に積み上げた1570勝は、もちろん球団記録。さらに、1つの球団だけで指揮を執った監督の勝ち星としては、ウォルター・オルストン(元ドジャース)の2040勝、そして自身の現役時代のドジャース監督だったトム・ラソーダの1599勝に次いで、歴代3位にランクされている。ラソーダの記録を抜くのは時間の問題だろうが、オルストンの記録にどこまで迫ることができるかは、今シーズンにかかっている。

 そういう意味では、大谷の入団はソーシアにとってチャンスとも言える。かのベーブ・ルースを最後に、メジャーでは成功を収めた者のいない二刀流を軌道に乗せることができれば、ともすれば「時代遅れ」と揶揄(やゆ)されがちなソーシアの名声を再び高めることになるからだ。10年契約最後のシーズンは、名将とうたわれた男の腕の見せどころでもある。

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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