ジョーカーに名乗りを上げた中島翔哉 W杯メンバー入りに必要な条件は?
日本の数少ない希望となった中島翔哉
日本代表の欧州遠征で数少ない希望となったのが、マリ戦で劇的同点弾を挙げた中島翔哉だ 【Getty Images】
そんな中、数少ない希望となったのが、マリ戦で劇的同点弾を挙げた今回初招集の中島翔哉である。今季赴いたポルトガルリーグ1部・ポルティモネンセで9ゴール7アシストと目覚ましい働きを見せる164センチの小柄なアタッカーは、初キャップとなったマリ戦でいきなり結果を残す。終了間際に劇的同点弾をゲットし、強烈なインパクトを残したのだ。
このゴールシーンには、高度なテクニックと鋭い得点感覚が凝縮されていた。中盤で三竿健斗からボールを受けた瞬間、中島は華麗なドリブルでDF3枚をターンしながらかわし、左に開いた小林悠に展開。次のクロスはDFにクリアされたものの、三竿がこぼれ球を拾い、中央目掛けて浮き球のボールを送った。この瞬間、背番号18は一目散にゴール前へ侵入し、左足を振り抜く。飛び出しのタイミング、ポジショニング、シュートの正確さと三拍子そろった一撃は、間違いなく見る者の度肝を抜いた。
「三竿がすごくいいパスをくれたと思いますし、もう触るだけだった。ああいう位置にいられないこともあるので、今日のゴールシーンは良かったと思います」と試合後、満面の笑みを浮かべた中島は、A代表デビュー戦で価値ある1点をもぎ取った。
続くウクライナ戦でも後半34分から出場。前回の左サイドとは異なるトップ下に位置して積極果敢にゴールをうかがった。後半41分には左サイドを駆け上がった長友佑都のクロスの跳ね返りをダイレクトでシュート。いったんはDFにブロックされたものの、ルーズボールに反応して右足を振り抜く。得点への貪欲さと執着心が色濃く感じられるプレーだった。
終了間際にも自らのドリブル突破で得たFKを狙い澄まして蹴ったが、これもGK正面に飛んでしまう。2戦連続アディショナルタイム弾はならなかったものの、中島からはゴールの匂いが誰よりも強く漂っていた。「中島は1つの発見だった。2試合とも交代で入ったが、満足いく姿を見せてくれた」と指揮官が絶賛するのも当然と言っていいほど、彼はゴールへの推進力、フィニッシュへのすごみを遺憾なく表現していた。
五輪でも評価された強心臓ぶり
大舞台でもブレない強心臓ぶりは五輪代表時代から高く評価されていた 【Getty Images】
この時、すでに16年リオデジャネイロ五輪代表のエース格に成長していた彼への期待値は高く、新たな環境でブレークの予感も少なからずあった。が、選手層の厚さやけがが壁となり、思うように出場機会を増やせず、悶々とした時間を送る羽目になる。U−23の一員としてJ3の試合に出されることもあり、中島は想定外の扱いに苦悩したことだろう。
それでも、リオ五輪代表では「翔哉は代表に来るとハマる。チームに必要不可欠な選手」と手倉森誠監督が言い続けたように、絶対的なアタッカーと位置付けられた。五輪最終予選を兼ねた16年1月のAFC・U−23選手権では、当時アジア最強と言われたイランを敵に回した準々決勝で、わずか2分間で2ゴールという離れ業をやってのける。リオ五輪本大会でもコロンビア戦で同点弾を奪っており、大舞台でもブレない強心臓ぶりは高く評価されていた。