「若者に人気がある種目が伸びていく」 スポーツクライミングが示す五輪の新潮流
メダルが有力視される新競技
若者を中心に支持を集めるスポーツクライミング。東京五輪での初開催に向けた現状を追った 【写真:アフロスポーツ】
「いやぁ、大変ですよ」。インタビューに応じた日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)専務理事の尾形好雄氏は、開口一番にそう切り出した。もともと登山に関する事業を主体に行ってきた同協会は、“五輪モード”に切り替えるべく、昨年度から段階的に組織を改編した。これまで国体の山岳競技をメインに活動していた競技部は、「スポーツクライミング部」に変更。強化や審判技術などの専門委員会も整備し、五輪や国際大会で戦う準備を整えてきた。
「(16年8月に)追加種目に決まってからは、例えば去年1月のボルダリングジャパンカップにしても、メディアの数が全然違うじゃないですか。そうすると今までの報道対応では仕切れないから、専門の会社にアウトソーシングしないといけない。(昨年3月までの法人名である)日本山岳協会のころは、電話も年末年始やGWの山の遭難、御嶽山の噴火事故など、そういう時の問い合わせで、うちのアスリートについての問い合わせやテレビ番組の出演依頼などは一切ありませんでした。そういう意味ではメディア対応はもう大変ですよ」
五輪では総合力が必要 スピードの強化は急務
国内にはスピード種目の専門施設がほとんどない。これまで強化も行われてこなかった 【写真は共同】
もし五輪で複合が採用されていなかったら、スピードの強化は「やらなかったと思います」と尾形氏。JMSCAでは昨年11月に「スピード競技強化プロジェクト」を立ち上げ、記録会を開催するなどして強化を図っているが、種目ごとに特性が大きく異なり「陸上で言ったら、長距離と短距離を1人の選手が全部やるということ。(リードで必要な)持久力と(スピードで求められる)瞬発力では筋肉も違ってくる」という。本番までの残り2年4カ月で、どこまで底上げできるかが勝負となるだろう。