連載:燕軍戦記2018〜変革〜

ヤクルトが一丸となって進める意識改革 球団ワースト96敗から脱却へ

菊田康彦

小川監督がたびたび口にする「執念」

オープン戦では廣岡がスクイズを決めるなど、チームの意識改革が得点につながる場面も目についた 【写真は共同】

 変革──辞書には「変わって新しいものになること」とある。2018年、東京ヤクルトスワローズはまさに変革の時を迎えている。

 15年のセ・リーグ制覇から2年、突きつけられた現実は厳しいものだった。昨年は球団ワースト記録を更新するシーズン96敗を喫し、3年ぶりのセ・リーグ最下位に転落。球団史上でも4人しかいない優勝監督の1人であった真中満監督はシーズン途中で辞意を表明し、今季に向けて1軍首脳陣は大幅に入れ替えられた。

 新監督には、シニアディレクター(SD)から4年ぶりの復帰となる小川淳司。ヘッドコーチには、現役引退から5年ぶりにユニホームを着る宮本慎也。さらに、昨年までは広島のコーチとしてリーグ連覇を支えた石井琢朗、河田雄佑の2人も、新たにコーチ陣に加わった。

 3月18日にホームグラウンドの神宮球場で行われた出陣式。小川監督は大勢のヤクルトファンを前に、こう宣言した。

「今年はすべてにおいて執念を持って、最後まであきらめない姿勢で全力で戦い抜いていきます」

「執念」。昨年10月に復帰が発表されて以来、小川監督はたびたびこの言葉を口にしてきた。球団SDとして見届けた昨シーズン、それこそがチームに欠けているものに見えたからだ。

宮本HCが感じた上位との差

「言い方は悪いですけど、試合をこなしているだけに見えたところがあって……。やはり応援してくれるファンの方がたくさんいる以上は、そこに向けて最後まであきらめない姿勢は改めて大事だっていうのは、強く思いました」

 そのためには選手の意識を変え、チームを変えなければならない。そこには、ここ数年で薄れていた「厳しさ」の注入も必要だった。

「勝負事ですから、勝つこともあれば負けが混むことだって当然あるんですけど、そこであきらめるのはやっぱりプロとしては良くない。最後までしっかりと戦う、一生懸命やる姿勢はスポーツの原点だと思いますので、そこは練習量であったり、意識を変えるであったり、いろんなことが必要ということで、宮本は(ヘッドコーチとして)適任じゃないかなというふうに思ってました」

 その宮本コーチは、昨年までの評論家という立場で、ヤクルトナインの意識の低下を感じていた。特に昨秋、福岡ソフトバンクと横浜DeNAの日本シリーズを取材した翌日に、コーチとしてヤクルトの秋季キャンプに合流し、日本シリーズを戦う選手たちと自軍の選手たちの練習に、歴然たる差を感じたという。

「やっぱり打球の強さでいうと、シーズン中にカープの練習を見た時にも思ったんですけど、ちょっと差があるなって。(バットを)強く振れないから、当然強い打球が飛ばないっていうのが見て取れたので、選手に一番最初に話したのは『これで飯を食ってるんだ』ということ。自分たちはプロ野球選手だという意識がおそらく低いんだろうなということで、『責任を持ってやろう』という話をしました」

 広島で2年連続チーム打率リーグナンバーワンの強力打線を作り上げた石井打撃コーチ、そして2年連続100盗塁以上と「走るチーム」を復活させた河田外野守備走塁コーチも、大事なのは意識と話す。

「まずは意識をどうやって持っていくか。そこありきで入っていけば、結果だったり形っていうのは、僕は後からついてくるものだと思ってるんで。意識が変わるだけでだいぶ変わると思いますよ」(石井コーチ)

「(昨年のヤクルトは)やっていて楽なチームだった。やっぱり意識の問題だよね。意識、やる気だね」(河田コーチ)

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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