打順を変えた大阪桐蔭打線の役割 史上3校目の春連覇へ好発進

楊順行

初回に電光石火の5点を先制

大阪桐蔭は打線が20安打14得点とつながり、史上3校目の春連覇へ好スタートとなった。写真は伊万里の山口投手が「びっくりした」というスイングスピードの速さで2安打を放った5番・根尾 【写真は共同】

 初回に電光石火の5点先制から、終わってみれば20安打14得点。大阪桐蔭(大阪)が、21世紀枠で初出場の伊万里(佐賀)に大勝して、史上3校目の春連覇に好発進した。

「山口(修司)投手の変化球を打たされるようでは術中にはまります。初回、1番の宮崎(仁斗)を始め、変化球を引きつけて打ち返し、先制できたのが最大の勝因だと思います」

 西谷浩一監督は、そう振り返った。

 不動の1番・藤原恭大が右ヒザ痛のため、「足を使える」(西谷監督)と1番に起用された宮崎の二塁打から始まり、すかさず青地斗舞がタイムリー。2死後に根尾昂から4連打での大量得点。得意の緩急が餌食にされ、伊万里・山口はこう脱帽した。

「特に根尾のスイングスピードにはびっくりしました。九州では見たことのないレベル。投げる球がなかった」

 公式戦では初めて藤原を4番に据えたほか、桐蔭の打順は大幅に変わっている。たとえば最後の公式戦だった昨秋の明治神宮大会と比べると、下位だった青地が2番に、さらに甲子園ではホームランも記録している山田健太が5番から7番など、“神宮”どおりの打順に座ったのは3番の中川卓也、8番の小泉航平、9番の柿木蓮くらい。

 だが、「1番が先頭打者と決まっているのは初回だけ。ほかの回は、その回の先頭が1番だよ、といつも話しています。展開によっては、好調な山田と小泉が3番、4番の役割を果たすこともありますから、彼らには“決して打順が下がったわけじゃないんだよ”と話しています」と西谷監督は言う。

 なるほど、先発全員安打を記録したこの試合では、6番以下で8打点。ポテンシャルの高い選手がそろう大阪桐蔭にとっては、打順は単に打席に入る順番にすぎないかもしれなかった。

圧巻だった先発・柿木の投球

 14対2という圧勝には、先発・柿木の好投も見逃せない。佐賀東松ボーイズの出身で、その故郷のチームとの対戦が決まると、「抽選で相手が決まったときは、正直笑いました。“大阪まで行って、なにやってんてん”といわれないような投球をしたい」と意気込んだ。

 中学時代にチームメイトだった「3番・センター」古賀昭人のほか、知っている顔も多くいる相手なのだ。ただ、「そういう意識で力むかと思いましたが、それがなかったのが柿木の成長」と西谷監督。13点差とした7回にマウンドを譲るまで、打者18人に2安打、10三振。二塁を踏ませず、5回時点で先発全員三振にあと一人という圧巻の投球だった。

 140キロ台中盤のまっすぐに加え、「変化球が全体に良かった」と柿木本人は振り返る。

「特に、古賀に対しては意識しましたね。気合いが入った。冬の間、体のバランスを考えてトレーニングしてきたので、練習試合でもいい感じで投げられましたし、ボールに乗せる“圧”が変わってきたと思います」

 初回はいい当たりながらセカンドライナーで併殺に取られ、4回の2打席目は142キロを空振り三振した古賀はいう。

「中学のチームメイトと甲子園で、しかも大阪桐蔭のピッチャーとして戦う感覚は不思議でした。三振した球はすごかった。“上から”に聞こえるかもしれませんが、中学時代からずっと成長していて、何一つかないませんでした。本当にいいピッチャーです。ただ、実際に対戦して楽しかった」

主将のもとスキのない野球を徹底

 攻撃の手をゆるめない桐蔭は、2回にも中川、藤原、根尾のクリーンアップ3連打で3点を加えると、以後も着実に加点。柿木があと1本ヒットを打てば、先発全員マルチ安打という快挙だった。

 さらに「いくら点差があろうと、1球1球を勉強材料にして大会中に成長しようと話しています。たとえばE(エラー)はつかなかったけど、記録にならないミスがあったのは反省点」と言う中川主将のもと、スキのない野球を展開。柿木のあとを受けた横川凱、森本昂佑がそれぞれ1失点したが、仕上がりの良さを見せつけた。

 試合終了、整列、挨拶。かつてのチームメイト・柿木と対面し、礼のあとに握手した古賀が「春、連覇してくれ」と声をかけると、柿木はこう答えたという。

「わかった」

 大阪桐蔭、連覇への挑戦が始まった。
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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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