中日、未知数ゆえに大番狂わせも期待 “モリシゲ流育成術”の真価に注目

ベースボール・タイムズ

オープン戦無失点と好投を続けたドラフト1位ルーキー鈴木博。どの場面で起用されるのか注目が集まる 【写真は共同】

京田と福田が順調な仕上がり

 その松坂がチームにもたらした功績はすでに大きい。入団から今日に至るまで松坂が一身に注目を集めたことにより、今季のキーマンが背負うべきはずだったプレッシャーをないものとした。中日がBクラス脱却の条件として活躍が絶対に欠かせないキーマンに挙げるのは京田陽太と福田永将。昨季の新人王と待望の日本人4番候補がともに順調な仕上がりを見せている。

 京田は“2年目のジンクス”という不安要素が影を落とすかと思いきや、そんな忌々しいワードを微塵も感じさせないほど充実した表情でキャンプを送ってみせた。オープン戦では大島洋平の後ろに控える嫌らしい2番打者として適性を見せている。走攻守のすべてにおいて欠かせない存在となった京田の元気な姿は何よりの安心材料だ。

 福田においてはゲレーロが抜けた穴を埋められる筆頭候補。昨季は7月以降の約3カ月間で18本塁打を放った長打力は年々精度を上げている。キャンプ中盤から打撃のズレを吐露していたが、その中でもオープン戦で打率2割7分1厘、3本塁打、11打点の成績を残している。大島以来、日本人野手でレギュラーに定着した選手が育っていないことも低迷の一因。京田と福田がレギュラーの座を確固たるものにすることは、チーム浮上の大きな原動力になることは間違いない。

ドラ1鈴木博の守護神抜てきも

 若手が結果を残している反面、実績のある中堅クラスが不安を残している点が心配の種だ。エース格の大野雄大は2軍の教育リーグを含めた実戦で結果を残せず、先発転向を図る又吉克樹も競争に敗れ、ブルペン陣へ加わることになった。加えて、昨季のセ・リーグ2位の34セーブを挙げた抑えの田島慎二もオープン戦に登板した3試合でいずれも複数失点を食らって防御率16.88。昨季は引き分けを1つ挟む開幕5連敗でつまずいたまま一度も5割に到達できなかっただけに、同じ轍を踏むわけにはいかない。

 田島が本来の調子を取り戻せないのであれば、早々にドラフト1位ルーキーの鈴木博志を抑えに抜てきするだけの価値は十分にある。沖縄のキャンプ中の対外試合から、同24日の千葉ロッテ戦まで8試合連続で無失点投球を継続。鈴木博自身も入団時から目標は抑えと公言するだけの度胸も備わっている。

 鈴木博の起用法も含め、今季は森監督の采配に期待したい。昨季は「選手もコーチも見ていた」と静観の構えでいたが、今季は「言いたいことを言っていく」と勝利に向けた本気度が違う。高橋周平にセカンド挑戦を命じるなど、チームを背負って立つべき逸材のたたき上げにも本腰を入れている。未知数の力を秘めた若手が1人でも多く覚醒を遂げれば、下馬評を覆す大番狂わせを起こすことも可能。指導歴27年で培った“モリシゲ流育成術”の真価に注目だ。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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