“神の左”に終止符を打った山中慎介 ボクシングは「人生そのものでした」

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最後の試合は「自分自身に勝てた」

会見場には山中の家族も訪れ、2人の子どもからはメッセージが手わたされた 【スポーツナビ】

――ネリ戦を終えた後、「自分に勝つことできた」と話していたが、自分に勝つために何が大切だったのか?

 もちろん今回の試合に限らず、最後の最後というか、試合に行くまでに、「すべてをやり切った。ほかにやることがない」というぐらいまで持ってこられたと。後悔なく調整できたというのは、本当に自信に思いますし、ボクシングしかそういったことができなかったのですが、1日1日、特に最後の試合はそうだったのですが、練習の時間を大切にしてやってきたので、本当に試合の前までにやれることはやったと思うまで努力を続けてこられたのが一番かなと思います。

――今までの試合の中でベストパンチは?

 それは迷いなくV2戦のトマス・ロハス(メキシコ)戦の最後の1発(7回0分36秒KO勝利)です。あれから常に、「これぐらいのKOをしてやろう」と調整してこれましたし、あのKOは本当に自分にとっても、ファンにとっても記憶に残っている試合かなと思っています。

――このような形で引退を迎えることは、自分の中で描いていたか?

 もちろん最後の試合に勝って、引退を迎えるというのが僕の理想としている形ですけど、それでもあのような試合結果ですが、自分自身、本当にスッキリした気持ちでいられているというのが一番です。試合内容、勝敗に限らず、何度も言いますけど、自分自身に勝てたというのが、スッキリした気持ちですね。

――家族の存在は?

 妻に関しては、僕が引退して、無事に帰ってきて一番スッキリしていると思いますけど、世界を取ってから、初防衛して、結婚して、子どもも2人生まれる中で、本当に家族には支えられましたし、家族の存在があったからこそ、この結果を出せたと思っているので、今まではボクシング中心で迷惑もかけてきたし、これからは家族のために、子どものために、もう少しいろいろしてあげたいですね。
(何をしますか?)ある程度のわがままには応えようと思います。(笑)

――第二の人生は?

 ボクシングでここまで結果を残せたし、辛い思いも経験してきたので、第二の人生、まだ何をするかは具体的には決めていませんが、今までの経験を生かし、何事もチャレンジしていこうと思っています。

若いボクサーに伝えたいことは「継続は力なり」

高校の後輩であり、同じ帝拳ジムのWBA世界ミドル級王者の村田諒太(右)も駆けつけ、花束を贈った 【スポーツナビ】

――山中選手はボクシングを始めたての選手が習う「ワンツー・ストレート」という技術を中心にスタイルを貫いたが?

 歴代の世界チャンピオンの中でも、トップクラスの引き出しの少なさだったかも知れませんが(笑)、ワンツー・ストレートだけでもこれだけ結果を残せたのは、高校時代から磨かがれてきたワンツー、左ストレートを信頼していたからだと思うので、それを高校の先生もそうですし、大学のコーチもそうですし、そして帝拳ジムのコーチも、僕がそれで結果を出すことで、僕のスタイルはこれでいいと認めさせてこられたので、自分を信じてきて、日々、左ストレートを練習してきました。

――デビュー当時はKOが少なかったが、どのあたりでパンチャーとしての磨きがかかったと思ったのか?

 自分の中でもある程度いいものは持っていると思ってはいました。でもやはり、少し大学時代に練習をさぼってしまいまして、そのつけがプロキャリアの序盤に出ていたと思います。プロに入ってからは努力をし続けてきましたし、それがようやくプロキャリアの中盤に出てきたかなと思います。
 さらに強くなれたと思うきっかけとなった試合は、初防衛の岩佐との試合だと思っています。あの試合で僕が不利という予想があったのですが、僕はもちろん、試合前から勝つ気マンマンでした。しっかり調整ができて、あの試合内容だったので、あれを乗り越えて勝てたからこそ、今の自分がいるなと今でも思います。

――若いボクサーへ伝えたいメッセージは?

 本当に大事だなと思うのは「継続は力なり」だと思いますね。この言葉をずっと僕は大事にしてやってこられたので、大事だと言うのは、若い子たちには伝えていきたいです。

――最後の試合を終えた後、引退についてお子さんにはどのように伝えたか?

 はっきりと伝えてはいないです。けれど、今までは試合が終わっても、戦隊ものかアニメしか見ていなかったのですが、3月1日の試合は、そのようなものを見ないで、僕の試合だけを録画を見てくれていました。最後の試合でやっとパパが一生懸命戦っていると、何かしらを感じ取ってくれたと思っているので、まあ、良かったです。あらためてこの会見が終わってから伝えようと思います。

――“神の左”にメッセージを送るなら?

「強かったよ」と言いたいですね。まあまあ強かったんじゃないですか(笑)? 頑張ってくれました。大きなケガもなかったので、それがここまでの結果を残せた理由でもありますね。

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