ヤンキースが主役の座にカムバック! 最強打線がチームの不安を吹き飛ばす

杉浦大介

昨季59本塁打を放ち、ナ・リーグMVPに輝いたスタントンがヤンキース打線に加わった 【Getty Images】

「今年のヤンキースは優勝候補筆頭なんじゃないか。ラインアップには相手投手が気が抜けない長距離砲が5人はいるからね。特に(打者有利の)ヤンキー・スタジアムであんな打線に対したらたまったものではないよ……」

 ヤンキースが春季キャンプを張ったタンパから戻ったメディアの人間が、3月中旬、NBAの現場で筆者にそうまくしたてた。その興奮した口調は、地元の多くのファンの思いを代弁していたのかもしれない。ニューヨーカーの誇りだった“悪の帝国”が街に戻ってきたのだ。

伸び盛りのチームに大砲が加入

昨季52本塁打のジャッジ(写真右)とスタントン(背番号27)とで強力デュオが完成 【Getty Images】

 昨季はこのチームらしからぬ再建体制に入っていたが、予想外の快進撃でワイルドカードを獲得。プレーオフでも地区シリーズで本命扱いされたインディアンスを下すと、ア・リーグ優勝決定シリーズではのちに世界一に到達するアストロズを第7戦まで追い詰めた。

 この伸び盛りのチームが、今オフにはさらに昨季ナ・リーグMVPのジャンカルロ・スタントンを獲得。新たな大砲を加え、メジャー最高級の“パワーハウス”がニューヨークに生まれたのである。

 上記の“5人の長距離砲”とはアーロン・ジャッジ(昨季52本塁打)、スタントン(同59本)、ゲイリー・サンチェス(同33本)、ディディ・グレゴリアス(25本)、グレグ・バード(昨季プレーオフで3本塁打)のこと。春季キャンプ終盤にバードが右足の故障再発で離脱したのは残念だが、他にもアーロン・ヒックス(昨季15本塁打)、ニール・ウォーカー(同14本)、ブレット・ガードナー(同21本)といったパンチ力のある選手がずらりとそろう。

 昨季の合計241本塁打(MLBトップ)からさらに増えそうで、2012年にマークしたチーム記録の245本塁打を更新する可能性も十分。ジャッジ、スタントンの2人に関しては、1961年にロジャー・マリス、ミッキー・マントルがマークした合計115本というデュオの1シーズン本塁打記録を破るかもしれない。

 これほどの華やかな陣容をそろえて迎える今季、『スポーツ・イラストレイテッド』、『ニューヨーク・デイリーニューズ』はどちらもヤンキースがワールドシリーズに進むと予想している。プレーオフを逃すようなことがあれば、“失敗シーズン”と記憶されるはず。“世界一以外はすべて失敗”と喧伝(けんでん)された故ジョージ・スタインブレナー・オーナーの時代ほどではなくとも、チームの周囲に漂う絶対必勝の期待感とプレッシャーがよみがえりつつある。

 もちろん今季のヤンキースが完璧なチームだと言いたいわけではない。

チーム内に懸念点もあるが…

 課題の1つとされた先発投手陣のテコ入れは結局はなされず、昨季14、13勝を挙げたルイス・セベリーノ、田中将大という2枚看板への負担が大きくなりそう。先発3番手以降のソニー・グレイ、CC・サバシア、ジョーダン・モンゴメリーが不安定だった場合、ブルペンへの依存度も高くなる。アロルディス・チャプマン、デービッド・ロバートソン、デリン・ベタンセス、チャド・グリーンとそろったブルペンはリーグ屈指だが、ベタンセスが去年の“ノーコン病”を継続しないという保証はない。

 野手陣ではスタントンが11年にレギュラー定着以来、123試合以上をプレーしたのは11、14、17年だけと故障が多いのは気になる。そして何より、ジョー・ジラルディ監督から引き継いだアーロン・ブーン新監督の手綱さばきも未知数。攻守両面で不確定予想が少なくないのは事実ではある。

 ただ……それでも今季のヤンキースが高勝率を残す可能性は高いように思える。オリオールズ、ブルージェイズ、レイズは軒並み戦力ダウンだけに、地区内でかなりの星を稼げそう。加えてマイナーのプロスペクトも豊富なヤンキースは、昨季同様にシーズン中の戦力補強が可能なだけに、多少のほころびは修復できるに違いない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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