V候補筆頭のソフトバンクに不安あり 工藤采配で新戦力の躍動はあるか!?

ベースボール・タイムズ

昨季大ブレークを果たした甲斐。捕手陣が相次いで離脱する状況に、さらなる一本立ちが望まれる 【写真は共同】

キューバ代表獲得も開幕は微妙!?

 昨季2年ぶりの日本一に輝いた福岡ソフトバンクは、12球団屈指の選手層を誇る現有戦力でも十分に戦えるとの考えから、ドラフトを除いては特に目立った補強は行わなかった。

 新人以外の新戦力は、昨年秋に東北楽天とのトレードで獲得した西田哲朗と第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)キューバ代表の中軸を担ったグラシアルだけ。西田は春季キャンプでもがむしゃらに練習を重ね、オープン戦でも攻守でアピールを続けており、腰痛で出遅れた明石健志の穴を埋める存在としても期待される。一方のグラシアルは、オープン戦の序盤で左脇腹を痛め、開幕は微妙な状況。長引くことはなさそうだが、日本の野球に慣れてくれば打率も見込める選手だけに、外国人枠をどう使っていくのかが悩ましいところだ。

 そして開幕前を控える王者の最大の誤算&苦難ともいえるのが、捕手への相次ぐ受難だった。キャンプ期間中、正捕手候補の高谷裕亮が右ひじを痛め、第3捕手候補の筆頭だった栗原陵矢も左肩を脱臼。ともに手術に踏み切り、高谷は早くて5月の復帰、栗原は復帰まで6カ月を要する見込み。さらに育成枠ながらオープン戦で1軍入りを果たした堀内汰門も右親指を脱臼。早期復帰を果たしたが、テーピングが欠かせない状態だ。残った捕手のうち1軍経験者は甲斐拓也のみとなった。

甲斐のさらなる成長に期待

 その甲斐に加えて、3年目の谷川原健太、2年目の九鬼隆平が開幕1軍となる可能性は高い。谷川原と九鬼にはオープン戦で経験を積ませ、それぞれ肩や打撃面で結果も残している。しかし、変化球のキャッチングなどはまだまだ1軍レベルとは言い難く、高谷の復帰までは甲斐一人に頼らざるを得ないだろう。昨季は甲斐の打席で代打を出して、その後の守りを高谷に任せるという場面も少なくなかったが、現状ではそのような代打策も取りづらく、攻撃面に与える影響も出てきそうだ。

 昨季、大ブレークを果たし、3月には侍ジャパンのトップチームに選出されるなど、甲斐の成長は著しいが、体力面、精神面ともにかなりの負担を強いられることは必至。それでも甲斐は「もともと正捕手の座を取るつもりでやってきたので」と、この非常事態にもむしろ望むところと言わんばかりだ。打撃向上を一つの目標としてきたこともあり、プレーボールからゲームセットの瞬間まで懸命に投手陣を引っ張り、バットでも貢献していく意欲は強い。侍ジャパンの稲葉篤紀監督が「いずれは日本を引っ張っていく捕手になれる」と期待するように、昨季以上の成長を期待したいところだ。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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