信頼性の高さは証明したトロロッソ 混戦の中団グループでどう戦うか?
過度な期待は禁物?
開幕戦オーストラリアGPでファンのサインに応えるピエール・ガスリー 【Red Bull Racing】
トロロッソ・ホンダは8日間で822周(3826.41キロ)をほぼノートラブルで走り切った。ブレーキシステムやセンサーにトラブルが出てピットガレージで修復作業を余儀なくされる場面もあったが、いずれも設計の根幹に関わるようなものではなくマイナートラブルといっていいものだった。
パワーユニットも最終日にデータ上に異常値が見つかったため、念のため2時間弱早めに走行を切り上げることとなったが、テスト2週目の4日間は無交換で計498周(2318.19キロ)を走破して信頼性を確認した。これはフリー走行から決勝までを含めて『3レース週末分』に相当する距離だ。この4日間で、7戦使用しなければならないパワーユニット本体の信頼性だけでなく、随時交換が可能なメンテナンスパーツの整備サイクルも確認している。
第2回バルセロナテスト、全体7番手のタイムをマークしたピエール・ガスリー 【Red Bull Racing】
つまり、車体とパワーユニットの両面において信頼性が高いということは証明された。しかし肝心なのは速さだ。
自己ベストタイムだけを見れば、ピエール・ガスリーは全21人の中で7番手のタイムを記録している。トップのフェラーリ(セバスチャン・ベッテル)から1.181秒差と、十分にポイント圏内が狙えそうにも思える。しかし、これはメルセデスAMG勢やマックス・フェルスタッペン、フォース・インディア勢、ハース勢が本格的なタイムアタックをしていないためであり、実質的な順位はもっと下になる。
加えて、燃料搭載量のごまかしが利かないフルレースシミュレーションのラップタイムを比較すると、今のトロロッソ・ホンダが置かれた状況がよりはっきりと見えてくる。
メルセデス、フェラーリ、レッドブルの3強チームが別次元の速さを見せているのは当然としても、その下に続くのがハース、そしてルノーとフォース・インディアがほぼ同等の速さを見せており、中団グループのトップ争いはこの3チームになりそうだ。トロロッソ・ホンダはそこからやや離されて、マクラーレンと7番手のチームの座を争うようなかたちだ。
出力はまだ昨年の最終戦レベル
ホンダPUの信頼性向上で多くの周回数を走破したブレンドン・ハートレー 【Red Bull Racing】
昨年9月という遅い時期でのパワーユニット決定から大幅な見直しをしなければならなかった車体は、妥協を強いられたがために他チームと比べて理想的な性能とは言えない部分もあるようだ。しかし昨年ドライバーが苦しんだコーナーへのターンイン時のリヤの不安定さは、リヤエンドの刷新によって解消できており、マシンに対して自信を持って攻めることができるというのがドライバーたちの笑顔につながっていた。
パワーユニットは過去3年間の教訓から、まず信頼性重視のコンサバティブなスペック。そのため性能に直結するICE(内燃機関)やTC(ターボチャージャー)は昨年型と大きく変わってはおらず、出力はまだ昨年の最終戦レベルだという。
しかしトロロッソの車体に合わせて吸・排気系をモディファイしたところ、それだけで10キロワット(約13.6馬力)も出力が向上したというから、これまで車体に合わせて我慢していた部分があったことも事実だ。さらに第2期F1を知る浅木泰昭体制に変わって栃木県にある研究所『HRD さくら』では攻めの開発が進められており、その性能と信頼性が確認されれば、1基目を7戦使い終わるまでの早い段階でアップデート投入ということも考えられる。
開幕戦の時点では、トロロッソ・ホンダが置かれた状況は決して容易なものではない。従来以上に熾烈(しれつ)な争いが繰り広げられる今年の中団グループで、3強チーム以外の『残り4席』を争う予選3回目への進出や、ポイント獲得はそう簡単ではないだろう。しかしシーズン中盤以降に向けて最も大きな伸びしろを秘めているのがトロロッソ・ホンダであることもまた事実だ。
(テキスト: Mineoki Yoneya)
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ