ハリル「他の選手にチャンスを与える」 国際親善試合 マリ戦前日会見

スポーツナビ

マリ戦に向けた前日会見に臨んだハリルホジッチ監督 【写真は共同】

 サッカー日本代表は23日、ベルギーのスタッド・モーリス・デュフランで国際親善試合のマリ戦に臨む。試合を翌日に控えた22日、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が会見を行った。

 会見でハリルホジッチ監督は「4〜5人ほど予定していた選手が来られなかった」「(吉田)麻也、(酒井)宏樹、(香川)真司にいてほしかった」など、けが人の多さを嘆いた。そうした現状を踏まえ、マリ戦に向けては、「他の選手にチャンスを与えることで、さらに厳しい競争を作り出してほしい」と語り、初招集となった中島翔哉について「昨日のトレーニングはかなり良かったので見てみたい」と語るなど、新たな選手を起用する意向を示した。

「麻也、宏樹、真司にいてほしかった」

(ベルギーは)東京よりちょっと寒い。東京のほうが気候が温暖だと思う。ワールドカップ(W杯)本大会に向けた最後の合宿で、2試合準備しなければならない。(今回は)本大会に近い相手を選んだ。まずはマリ。アフリカパワーを全面に押し出す、典型的なチームだ。パワー、俊敏性、瞬発力があり、デュエル(球際の競り合い)も厳しくやってくると思う。私が知っているマリと比べると、あまり「パワー」はなくなっている印象だが、欧州のビッグクラブでやっている選手もいるので能力がある。何人か、主力が来ていないのも聞いている。

 われわれもそうだ。直近で(酒井)宏樹がけがをしてしまった。少し驚いたのは、けがをしているのに、宏樹がクラブで2試合を戦ってしまい、それが原因でああいう状況になってしまった。もちろん、それ以外にもけがを心配しているが、4〜5人ほど予定していた選手が来られなかったので、今いる選手で戦わなければならない。他の選手にチャンスを与えることで、さらに厳しい競争を作り出してほしいと思う。目的は、この2試合を勝ちにいくということ。3月に勝利のスパイラルを持って、いい環境を作っていきたいと思う。

──明日のマリ戦で最も見たい部分、選手に要求したいことは?

 まず、これまでたくさん試合をしてこなかった選手にトライしてほしい。後半は交代も考えている。ただ、まだ2試合で(メンバーが)変わることもある。いろいろな状況もあって、毎試合変えざるを得ないかも知れない。なぜなら4〜5人ほど、これまでメンバーだった選手がいない。つまり、より可能性を探さないといけない状況だ。

 5月20日にはW杯本大会に向けた合宿がスタートする。そこまでには、できるだけ多くの情報を持っておきたい。それから、大会中にけが人が出るという最悪なことも予想しないといけない。麻也、宏樹、真司にいてほしかった。彼らはさまざまなものを(チームに)もたらしてくれるからだ。それから何人かけがを抱えている選手も、今の段階ではいる。右サイドバックでいえば、遠藤(航)、宏樹、(酒井)高徳もちょっと問題を抱えている。

 そういうこともあって多くの人数を(起用して)トライしなければならない。「ベストメンバー」がそろう状態ではないかもしれない。私も経験上、予想外のことを想定しないといけないと思っている。今回、中島翔哉を呼んだが、昨日のトレーニングはかなり良かったので見てみたい。大島(僚太)に関しては、就任当初に追いかけてきた彼とは遥かに違う。世界のどんな監督も、理想のチームを持ちたいわけだが、そういうわけにもいかないので準備しないといけない。

苦痛を伴いながら進んでいく

W杯本大会に向け、「苦痛を伴いながら進んでいく」と決意を語った 【スポーツナビ】

──明日の相手は仮想セネガルだが、それを想定して攻撃と守備でどんなことを確認しておきたいか?

 3カ月後のセネガル戦のタクティクスを説明してほしいということだが(笑)、それは大会(W杯)終了後にしよう。ただ私の頭の中には、たくさんのアイデアがある。私自身、どのメンバーで臨めるかは分からない。(今回も)4〜5人けがをしていて、皆さんが想像している以上に選択肢はない。W杯本大会では、戦える状態でチームを作らないといけない。

 コロンビア、セネガル、ポーランド、それぞれ異なったプレーで臨まないといけないだろう。われわれはグループ突破の(本命)候補ではないが、その候補が常に勝つわけではない。われわれが偉業を成し遂げる準備をしないといけない。そのことは選手に繰り返し伝えた。われわれが偉業を成し遂げる準備をしておこう。そういう偉業にトライするためには何をしないといけないかという話はしている。

 戦術もフィジカルもメンタルもそうだ。頭の中に偉業を成し遂げようという気概がないと、それは不可能だ。その頭の中の準備を個人として、グループとしてしないといけない。そのためには、合理的なタクティクスを組まなければならない。

 それから、幻想的な夢を抱かないことだ。まずはグループ突破を目指すということ。そして戦術のチョイスが重要になる。また、日本の選手に合っていない戦術は避けたい。過去の話も、いろいろ聞いているし見てもいる。われわれが最終予選で見せてきたタクティクスを思い浮かべていただければいいが、たとえば守備では素晴らしいことをした。攻撃ではあまりよくなかったかもしれないが、ここまでの結果は出してきた。そういった形でわれわれは進んできている。

 われわれ日本が、ブラジル、スペイン、フランス、ドイツのように欲張りであってはいけない。攻撃ではこういう素晴らしい攻め方をしようとか、もちろんそういうところに到達したいが、私は違った経験を持っている。冷静沈着に。ただ、われわれの決意、トライする気持ちは隠してはいけない。トライしにいかないことが、けがにつながる。相手をリスペクトしながら、自分自身もリスペクトしようということだ。われわれは突破の候補ではない。なぜならFIFAランキングを見ても、かなり遠い(3月15日付けで日本は55位)。それでも「様子を見てみましょう」ということだ。私には経験がある。われわれ自身がトライする。われわれ自身が準備をする。苦労しながら、苦痛を伴いながら。

 作り話や笑い話ではなく、苦痛を伴いながら進んでいく。それは選手に伝えている。苦痛を伴いながらも、トレーニングする喜びを見つけていこう。10点取れるような素晴らしい攻撃をしよう、ということはブラジルやフランスでもそんな約束はできないと思う。昨日の『レキップ』紙の記事で、世界有数のFWである(アントワーヌ・)グリーズマンがこんなことを言っていた。「私はクラブから給料をもらっているが、私の気持ちはW杯本大会に向いている。ハードなトレーニングを開始して、きちんと休息をとり、生活管理もかなり厳しくやっている」と。そういうことを世界有数の選手がやっている。それを選手に伝えた。優秀な選手でさえ、こういう準備をしている。

 日本代表はフィジカル的にどういうプレーをしているか、私はまだ満足していないが、本大会直前に体脂肪率の話はしたくない。そういう話をすること自体が愚かだ。私の(選手への)接し方をもう少し変えたほうがいいのではないかという話もあるが、私が厳しい要求をしているのではなく、W杯本大会が厳しい要求をしている。残された時間でやることは、まだまだある。もう一度言うが、トライをしないとプレゼントは得られない。シンプルに、ダイレクトに、選手には伝える。それが分かったなら、選手は見せてほしい。私は心が広い人間だと思う。なぜなら、かなりの人数を試しているからだ。3〜4年前の評価基準ではなく、「今いい選手であれ」と私は言っている。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント