【新日本プロレス】ザックが棚橋を下してNJC初優勝 みのるは“頭踏みつけた”内藤を挑発

高木裕美

ザック・セイバーJr.が棚橋を下し、NJC初出場で初優勝を飾った 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 新日本プロレス春のナンバーワン決定トーナメント「NEW JAPAN CUP 2018」最終戦となる新潟・アオーレ長岡大会では、札止めとなる3996人を動員した。

 メインイベントの「NEW JAPAN CUP」(NJC)優勝決定戦では、30分を超える激闘の末、“サブミッションマスター”ザック・セイバーJr.が棚橋弘至を破り初優勝。4.1東京・両国国技館大会では、“レインメーカー”オカダ・カズチカが保持するIWGPヘビー級王座へ挑戦することが決定し、早くもリング上でマネジャー同士による舌戦が展開された。

弱点を容赦なく攻めてギブアップを奪う

棚橋の弱点を容赦なく攻め、ギブアップまで追い込んだ 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 ザックは今年のNJC1回戦で優勝候補の筆頭であった内藤哲也をギブアップさせ、一気に注目度を高めると、2回戦でも飯伏幸太にレフェリーストップ勝ち。準決勝でもSANADAを下し、初出場にして優勝決定戦へと駒を進めた。

 対する棚橋はNJC1回戦でタイチ、2回戦でバッドラック・ファレ、準決勝ではジュース・ロビンソンに勝利。2005年の第1回、08年の第4回以来、10年ぶり3度目となるNJC優勝へ王手をかけ、リング上から「もう一度、新日本プロレスの頂点に立ちたい。いや、絶対に立つ!」と宣言していた。

 両者は昨年の「G1 CLIMAX」開幕戦となる7.17札幌で対戦し、ザックがジム・ブレイクス・アームバーでギブアップ勝ち。その後、9.16広島では、棚橋の持つIWGPインターコンチネンタル王座を賭けて再戦し、今度は棚橋がハイフライフローでリベンジを果たしていた。

 マネジャーのTAKAみちのくが「いつ何時、どんな体勢でも関節技、サブミッションホールドを決められる」と豪語する通り、自称「7822のサブミッション技を持つ」ザックは、場内の大「棚橋」コールに動じることなく、独自の世界を展開。棚橋は昨年5月に右上腕二頭筋腱遠位断裂、今年の1月には右ヒザ変形性関節症でいずれも負傷欠場に追い込まれているが、ザックはその棚橋の弱点を容赦なく攻撃。エグい角度での変形羽根折り固めや卍固め、三角絞めで、棚橋の肉体に悲鳴を上げさせる。棚橋もドラゴンスクリュー、テキサスクローバーホールド、場外へのハイフライアタックなどで流れを引き寄せ、25分過ぎには怒涛のツイストアンドシャウト3連発。さらに30分過ぎには、スリングブレイド、ドラゴンスープレックスからのハイフライフローを決めるも、2発目はかわされて自爆。マットにヒザを強打した棚橋は、それでも回転足折り固めで窮地を脱しようとするも、ザックが切り返し、内藤からギブアップを奪った新技オリエンテーリング・ウィズ・ナパーム・デスで、棚橋をギブアップさせた。

TAKAと外道が舌戦で両国決戦へヒートアップ

オカダの持つIWGPへ的を絞ったザック。お互いのマネジャーが舌戦を繰り広げる 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 まさかの結末に場内がどよめきに包まれる中、NJC初出場・初優勝を飾ったザックは、優勝者に与えられるIWGPヘビー級王座、IWGPインターコンチネンタル王座、NEVER無差別級王座のいずれかのベルトへの挑戦権について、ためらうことなく「オカダ」と指名。場内から「オカダ」コールが起こる中、オカダがマネジャーの外道と共に姿を現し、リング上でついに両者が対峙した。

 まずはTAKAが「あなたはとても強いチャンピオンだ。でも、サブミッションマスターの前では、ユージャスト……」とお決まりのフレーズを言おうとするも、外道がTAKAの口の前に指を差し出して阻止。今度は外道が「今まで何人もタップアウトしたヤツを見てきた。だが、レインメーカーにはそんなもんは通用しない。ザック、おまえはレインメーカーをタップアウトさせることはできない。何でか分かるか。レェェベルが……」と言いかけたところで、今度はTAKAが外道の口をつぐませ、「レベルが違うサブミッションホールドで仕留めてやるよ」と宣戦布告。オカダは、ザックの目の前でIWGPヘビーのベルトを高々と掲げ、チャンピオンとしての意地を見せつけてから退場。そのうしろ姿を見送ったTAKAが「ザックのサブミッションの前では、ユージャストタップアウト! ギブアップあるのみなんだよ」と言い切り、両国での王座奪取を宣言した。

 オカダとザック、そのファイトスタイルは全然違う両者だが、「有能なマネジャーの力で実力が一気に開花した」という点は共通している。オカダは米国遠征から帰国後、12年1.4東京ドーム大会で、当時のIWGP王者であった棚橋弘至に挑戦表明。当時は何の実績もなかった若手を「レインメーカー」と称し、マイクや試合を盛り立てたのが外道であった。その支えを受け、オカダは同年2.12大阪で棚橋から王座を奪取。当時、歴代最多防衛記録となるV11を達成していた棚橋にストップをかけたこの1勝は「レインメーカーショック」と呼ばれ、プロレス界に大きな衝撃を与えた。

 一方、ザックも母国イギリスで活動し、日本でもプロレスリング・ノアにレギュラー参戦するなど、その実力は以前から評価されてはいたが、今年の3.6大田区でTAKAが「サブミッションマスター」と呼び、優勝宣言をぶち上げたことで、俄然注目度がアップ。NJCトーナメントでも、人気・実力ともにトップを争う選手たちを次々と撃破してみせ、単なるダークホースから一転、「オカダ一強時代にストップをかけられる男」として、新王者誕生の期待も高まってきた。

 なお、マネジャーの外道とTAKAは共にユニバーサルプロレスリング出身。外道の方が年上・先輩であり、互いに別々の道を歩みながらも、海外や複数の団体でキャリアを積んできた実力者同士である。

 すでにこの日のリング上でも舌戦が展開されたように、4.1両国決戦まで、オカダとザック、外道とTAKAによるバトルは待ったなし。「オカダは確かに強い。だが、今までに味わったことのないサブミッションを味わわせてやる。新しい時代を作るのはザック。ザックの前に立ちはだかるヤツはジャストタップアウトだ!」とザックの勝利を確信するTAKAに対し、オカダも「優勝おめでとう。だが、最強はおまえじゃない。チャンピオンはオレなんだ。12年にレインメーカーとして凱旋してからタップをした、ギブアップをしたのは一度しかない。そのオレにギブアップと言わせられるのか」と、IWGP最多防衛記録タイとなるV11達成にゆるぎない自信を見せつけた。

 オカダが過去にギブアップをしたのは、15年8.15両国で行われた「G1 CLIMAX」公式戦での中邑真輔戦で、腕ひしぎ逆十字固めに屈した1回のみ。もし、ザックがオカダからギブアップ勝ちを収めれば、単なる王座移動を超えた「サブミッションマスター・ショック」を引き起こすことになりそうだ。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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