大谷との対戦が楽しみな同地区のスター 剛腕に期待の若手、意外な経歴の選手も

菊田康彦

マリナーズのエースは「キング」

マリナーズの「キング」といえばこの人。通算160勝を手にしているフェリックス・ヘルナンデス 【Getty Images】

 マリナーズのエースと言えばこの男。「キング」の異名を持つフェリックス・ヘルナンデス(31歳)である。05年に19歳の若さでデビューして以来、マリナーズ一筋に今年でメジャー14年目。通算160勝、2342奪三振などは既に球団記録になっている。12年に東京ドームで行われた開幕戦でも先発マウンドに上がるなど、昨年まで9年連続10度の開幕投手も球団記録だが、ここ2年は故障がちなのが気がかり。

 そのヘルナンデスが6勝に終わった昨季、チームで唯一2ケタ勝利を挙げたのがカナダ出身の左腕、ジェームズ・パクストン(29歳)。才能はトップクラスと言われながら、故障の多さでなかなかブレイクできなかったが、メジャー5年目にして12勝、防御率も2点台とようやく花開いた。ただし、昨年も2度の故障者リスト入りで規定投球回には届かなかっただけに、今年こそはシーズンを通しての働きが望まれる。

マリナーズ打線の主軸、クルーズ(左)とカノ 【Getty Images】

 打線の中心はドミニカ共和国出身のパワーヒッター、ネルソン・クルーズ(37歳)だ。レンジャーズ時代には阪神の新外国人候補としてリストアップされたこともあったというが、29歳でメジャーに定着すると、14年にはオリオールズで34歳にして初のホームラン王を獲得。昨年は4年連続の40本台にはあと1本及ばなかったものの、自己最多の119打点で初の打点王と、年齢を重ねても衰えを知らない。

 4番のクルーズと3、4番コンビを組むのが、同じくドミニカ共和国出身の左のスラッガー、ロビンソン・カノ(35歳)。かつてはヤンキースの若きスターとして、松井秀喜とともにプレーしていたのを覚えている方も多いだろう。14年からは総額2億4000万ドル(約255億円)の10年契約でマリナーズに移籍。昨年はオールスター戦で決勝本塁打を放ってMVPになり、シーズンでは二塁手として史上3人目の通算300本塁打を達成した。

異色からレジェンドまでそろうレンジャーズ

04年ドラフトで全体1位指名を受けたブッシュ。その後、紆余曲折合ったが17年は57試合に登板し10セーブを挙げた 【Getty Images】

 昨季はダルビッシュ(現カブス)が開幕投手を務めたレンジャーズにあって、エースと言えば左腕のコール・ハメルズ(34歳)になるだろう。もともとは02年のフィリーズのドラフト1巡目指名で、08年にはリーグチャンピオンシップ&ワールドシリーズMVPに輝くなど、球団28年ぶりの“世界一”に大きく貢献。15年7月末にはノーヒットノーラン達成から1週間も経たずにレンジャーズにトレードされたが、昨年も3年連続の2ケタとなる11勝を挙げている。ただし、故障もあって11年ぶりに規定投球回を逃すなどハメルスにとっては不本意なシーズンだっただけに、2年ぶりの開幕マウンドに上がる今季は巻き返しを誓う。

 レンジャーズ投手陣で異色の存在なのが、マット・ブッシュ(32歳)だ。04年のドラフトでは高校ナンバーワン遊撃手としてパドレスからドラフト全体1位指名を受け、鳴り物入りでプロ入りしながら芽が出ず、マイナー4年目には投手に転向。ところが故障やグラウンド外でのたび重なる不祥事でチームを転々とし、12年の開幕前にはひき逃げ事故を起こして実刑判決を受け、“塀の中”に送られてしまう。それでも出所後、レンジャーズとマイナー契約を結び、16年5月に30歳でメジャーデビュー。昨年は一時期、抑えに回り、チーム2位の10セーブをマークした。セカンドチャンスを大事にする米国らしい話ではあるが、日本ではおよそ考えられないことだろう。

 昨季はメジャー30球団中3位の237本塁打を放つなど、ホームランバッターぞろいのレンジャーズ打線にあって、41本でチームトップ(リーグ3位)だったのがジョーイ・ガロ(24歳)である。左打席からの強烈なアッパースイングで、ツボにはまればどこまでも飛ばすが、穴も多く三振はリーグ2位の196。「一発か三振か」という打線を象徴する選手と言えそうだが、選球眼は良く打率2割0分9厘ながら出塁率はチーム3位の3割3分3厘だった。

17年7月に史上31人目の通算3000安打を達成したレンジャーズのベルトレ 【Getty Images】

 そして、このレンジャーズにもレジェンド級の選手がいる。昨年は史上31人目、ドミニカ共和国出身では初の通算3000安打を達成したエイドリアン・ベルトレ(38歳)だ。打撃タイトルは04年の本塁打王(48本)ぐらいだが、メジャー2年目から18年連続で100試合に出場した「無事是名馬」を地で行くような選手である。三塁の守備にも定評があり、ゴールドグラブ賞は5回受賞している。

アスレチックでは若手野手に注目

2年連続40本塁打をマークしているアスレチックスの主砲デービス。 【Getty Images】

 昨季途中でエースのソニー・グレイ(現ヤンキース)を放出したアスレチックスで、先発投手陣の柱として期待されるのが、今季でメジャー5年目を迎えるケンドール・グレーブマン(27歳)。最大の武器は全投球の7割近くを占める高速シンカーで、好調時はゴロを量産する。16年には初の2ケタ勝利を挙げながら、初の開幕投手を務めた昨年はケガに泣いただけに、今年はシーズンを通して先発ローテーションを守りたい。

 一方、リリーフ陣でカギを握ることになりそうなのが、抑えのブレーク・トライネン(29歳)だ。もともとは11年ドラフトのアスレチックス7巡目指名で、13年1月のトレードでナショナルズに移籍。昨季はクローザーとして開幕を迎えながら、結果を残せずに中継ぎに配置転換されたが、7月のトレードでアスレチックスに復帰されると再び抑えを任され、13セーブを挙げた。時に100マイル(約161キロ)に達する高速シンカーは威力十分だが、性格的に抑えには向いていないとの評価もあるだけに、今年は真価が問われるシーズンになる。

 打線は今年も指名打者のクリス・デービス(30歳)が主役。16年にブリュワーズからトレードで移籍すると、投手有利と言われる球場を本拠地としながらも、2年連続40本塁打以上とパワーを発揮した。昨季の195三振は先に紹介したガロに次ぐリーグ3位で、同じ「一発か三振か」タイプながら逆方向にも一発を打てるのが強み。今季は、現在の本拠地に移転する前の時代も含め、球団史上2人目の3年連続40発を狙う。オリオールズに日本語表記では同姓同名のパワーヒッターがいるが、クリスのスペルが「CHRIS」。こちらは「KHRIS」だ。

昨季は後半戦だけで14本塁打を放ち、さらなる飛躍が期待されるアスレチックスのチャプマン。肩の強さにも定評がある 【Getty Images】

 野手も若手ぞろいの中で楽しみなのが、昨年メジャーデビューを果たしたばかりのマット・チャプマン(24歳)。14年のドラフトでアスレチックスに1巡目指名された生え抜きで、昨年6月にデビューすると、後半戦だけで14本塁打を放った。ボールをじっくり見るタイプで四球が多く、出塁率も高い代わりに三振も多いが、打つだけでなく、肩の強さを武器にした三塁守備への評価も高い。攻守の両面で、期待の大きい選手だ。

2/2ページ

著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント