成田緑夢、単独インタビュー 一夜明けた心境からユーチューバーまで

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新競技「スノーボード」で2つのメダルを獲得した成田緑夢に単独インタビュー 【スポーツナビ】

 平昌パラリンピックから新たに独立した競技になった「スノーボード」で、主役の一人になったのが成田緑夢(近畿医療専門学校)だ。12日のスノーボードクロスで銅メダルを獲得すると、16日のバンクドスラロームでは見事金メダルに輝いた。

 今大会は「常に挑戦」をテーマに掲げ、自らの指針である「夢や感動、希望、勇気を与えられるアスリート」になるため、全力を尽くしてきた。

 成田の全日程が終わり、今どんな心境なのだろうか。大会を振り返りつつ、その思考やメンタル面に迫った。さらには「アスリート・ユーチューバー」を名乗り、大会期間中も積極的にYoutubeで情報発信にいそしんでいた、その裏側についても語ってもらった。

最初は「もう一人の自分」に負けていた

バンクドスラロームでは3本目でリスクある「挑戦」に臨んだ 【写真は共同】

―― 一夜明け、肉体面、気持ちの面で変化はありましたか?

 大会が終わって、少しホッとした気分はありますね。やっと金メダルをもらったんだなと実感し始めています。次のステップへの準備段階に入った感じですね。

――今回のパラリンピックでのテーマ「常に挑戦」は全部達成できましたか?

 そうですね、完全に。

――全部というのはいくつくらいでしょうか?

 一本も無駄なランをしていないですね。

――昨日のバンクドスラロームでは3本目で勝負をかけました。今まで乗りに行っていたバンクを上から切るように滑ったそうですね。「自分の持っている引き出しを増やそうとした」ともおっしゃっていました。

 今までああいうコースに出会わなかったので。(勝負をかけたのは)第5バンクですけど、あんな形は見たことなかったですね。

――なぜ上から切るように、直滑降をしようと思ったんですか?

 グーフィースタンス(右足を前にするスタンス)の人がそれをしていたんです。彼らは、第5バンクをトゥーサイド(つま先側)で入れる。つま先ってデリケートなんです、足首の関節が一個多いので。だから、より急な角度で曲がれるんですよね。レギュラースタンス(左足を前にするスタンス)の僕はかかとで入ることになるので、デリケートではないほうになります。で、よりリスクを取るためにヒールターンをしようと。リスクは革命の一歩なので。

――かっこいいですね(笑)。今までにもリスクを乗り越えて成功した体験はありましたか?

 常にそうです。常に、一本一本の全部のランで挑戦しています。

――レースで挑戦をしてゴールしたとき、達成感はありますか?

 あります、あります。スタートを待っている最中に口元をよく見たら、なんか言ってるのが映りますよ。

――つぶやいているんですね。こちらには音声は聞こえてこなかったです。ちなみにその3本目は何を言っていたか、教えてもらってもいいですか?

 えっと、第5バンクで……いや、言えないです(笑)。「第5バンクでVターン」のようなコメントをつぶやいています。技術的な部分ですね。

――それは「行きたい」じゃなくて「行く」と言っていますか?

「行く」って言っています。

――その「行く」という意思の強さの源は何ですか?

 トレーニングですね。日々トレーニングです。

――メンタルトレーニングということ?

 言われてみれば、そうなりますかね。メンタルトレーニング、精神トレーニング、人間トレーニング。よく話していた「心の中のもう一人の自分」と対話するのもそうです。

――「心の中のもう一人の自分」は、成田選手の中でいつから存在していますか?

 家を出たときぐらいじゃないですかね……(編注:障がいを負って五輪をあきらめたのを契機に親元を離れた)。家を出て、自分で考えないといけなくなったのがきっかけですね。

――最初からもう一人の自分と対話できていましたか?

 そのときはもう一人の僕が負けている部分があったので。成田緑夢と、もう一人の……コーチみたいなものですよね、そのコーチが「あそこはVターンで行け」と言うわけですよ。でも、僕は「それリスクあるし……(行きたくない)」みたいな。負けたらアンパイなほうを選ぶわけじゃないですか。今はいい意味でもう一人の自分に勝てているので、チャレンジできました。家を出た当時は自分の弱い部分が勝っていましたけど、その負けてきたデータを何回も分析することによって、より良い方向につないできました。

――それは走ってきたデータということ? どういう方法でアウトプットしているのでしょう?

 僕、“パソコンレス”していて。携帯しか持っていないです。パソコンは重いからいらない、携帯だけでいけると思う人間なので。携帯の中に表計算ソフトなどをインストールしているので、それでデータ化します。

――数字のデータ化ってことですか?

 データだったり、言葉や自分の表現だったりもあります。数字を起こすこともありますよ。自分のフィーリングを点数化して。体調面とかもそうです。

――何か傾向のようなものはありました?

 うーん……挑戦に関して言うと、落ち込んでいるときは挑戦していないときと一致することが多いです。過去に挑戦していないときは、100%成功したときしか喜べなかったです。でも挑戦は失敗しても笑えるし、何をしても喜べるんですよ。

――挑戦をしたから?

 そうです。挑戦をして、失敗してもまた次の挑戦のデータとなって、喜べる。全部喜べるんですよ、挑戦するのって。派手に転んだとしても、「ここはこう転んだから、次はこうしよう」みたいな。

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