【ノア】47歳・杉浦貴が新記録の4度目の戴冠 丸藤が9月に20周年記念興行を開催

高木裕美

47歳・杉浦(左)が拳王を破り4度目のGHCヘビー戴冠。試合直後には小峠(右)が挑戦を表明した 【写真:前島康人】

 プロレスリング・ノアの春のビッグマッチ「GREAT VOYAGE 2018 in YOKOHAMA」神奈川・横浜文化体育館大会では、GHC4大タイトルマッチなどが行われ、2412人を動員した。なお、試合前には7年前の同日に発生した東日本大震災の犠牲者を悼み、黙祷が捧げられた。

 メインイベントのGHCヘビー級選手権試合では、杉浦貴が王者・拳王を破り、約2年1カ月ぶりに王座返り咲き。史上最多となる4度目の戴冠を果たした。

 47歳の杉浦は第16代王者時代の09年12月から11年7月までの長きにわたり、GHC王座を14度防衛。かつて「絶対王者」とまで呼ばれた“鉄人”小橋建太のV13を塗り替える新記録を打ちたて、「ノアの顔」に君臨した。その後も25代、27代王者となり、これまで三沢光晴(初代、第5、11代)、秋山準(第2、9、14代)、森嶋猛(第12、18、20代)、丸藤正道(第10、22、24代)、潮崎豪(第15、17、26代)と並ぶタイ記録を保持していたが、今回の戴冠で単独トップに躍り出た。

 3.18博多で開幕する「GLOBAL TAG LEAGUE 2018」ではタッグを結成する両者。昨年の3.12横浜では、GHCタッグ王座も獲得したが、初防衛できずにベルトを手放している。

 拳王は17年12.22後楽園で初戴冠を果たして以来、「武道館へ連れて行く」という旗印の元、エースとして団体を引っ張っており、今回の一戦でも、「ノアの顔」撃破に並々ならぬ闘志を燃やしていた。

大逆転のフロントネックロックで勝利

逆転のフロントネックロックでレフェリーストップ勝利を飾った 【写真:前島康人】

 まずは激しいエルボー合戦からスタート。杉浦はマットのない床の上にネックツイストを放つと、「どうしたチャンピオン」と声を荒げながら顔面を踏みつける。さらに10分過ぎには、セカンドロープからの滞空式ブレーンバスターも敢行。ジャーマンスープレックスの投げ合い、アンクルホールドの応酬から、20分過ぎ、杉浦がオリンピック予選スラムを炸裂。さらに、左手を繋いだままエルボーを連発すると、拳王もその手を離さず、張り手で反撃。強烈なハイキック、ダイビングフットスタンプ、ミドルキック2連発とたたみかけるも、杉浦がエルボーで食い下がる。拳王のキック、杉浦のエルボーの打ち合いから、やがて杉浦がワンツーエルボー、拳王が張り手で応戦。杉浦のナックル、拳王の右ハイキックで場内に緊張感が走る中、拳王は右、左のハイキックからトドメの右ハイを狙うが、杉浦がブロックしてオリンピック予選スラムを発射。そのまま回転式フロントネックロックで締め上げ、大逆転のレフェリーストップ勝ちを収めた。

 勝利の余韻を味わう間もなく、すぐさま小峠篤司がリングイン。場内からはブーイングと「杉浦」コールが起こる。小峠は「まあ、素直に、やっぱすごいよ杉浦さん。オレも、試合見てて、絶対次行ったろうって胸熱くなりましたよ。オレに挑戦させてください」と挑戦表明するも、杉浦が手で払いのけようとしたため、小峠が怒りの頭突き。この一撃で、杉浦の額がカチ割られ、瞬く間に鮮血に染め上げられた。この状況の中、小峠は「本気で獲りに行く。オレに挑戦させてください」と訴えかけるが、杉浦は「おい、コスチューム新しいんだよ。汚れるだろが」と苛立ちをあらわにすると、「おまえのその気持ち、分かった。いつでもやってやるよ。そのかわり、このお客さんの支持率、もっと上げろ!」と、観客から野次を飛ばされまくった小峠を痛烈に批判した。

 7年前の3月11日、東日本大震災が起きた際、杉浦はGHCヘビー級王者として、防衛ロードを歩んでいる最中であった。日本中が悲しみと絶望と怒りに打ちひしがれる中、同年5.8有明コロシアムで行われた鈴木みのるとの防衛戦では、東日本大震災の被災者に対する「支援」の考え方の違いでイデオロギー論争まで巻き起こった。それだけに、杉浦はリング上から「あれから7年たつけど、当たり前にこの暮らしができて、当たり前にみんなの前でプロレスができることに感謝してます。ありがとう」と感謝の言葉を口にした。

 また、試合後には、単独での新記録達成に「うれしい」と素直に笑顔を見せる場面も。「組んでもいいし、戦ってもいい」頼れるパートナー・拳王との真っ向勝負に充実感をにじませながら、47歳からの「新時代到来」を誓った。

中嶋&北宮が3度目の挑戦で初戴冠

ジ・アグレッションが3度目の王座挑戦にして初戴冠 【写真:前島康人】

 GHCタッグ選手権試合では、中嶋勝彦&マサ北宮の「ジ・アグレッション」が、モハメド ヨネ&クワイエット・ストームの「50ファンキーパワーズ」を破り、3度目の王座挑戦にして悲願の初戴冠を果たした。

 ジ・アグレッションは序盤からヨネを標的に定め、連係攻撃を浴びせると、15分過ぎにはヨネ、ストームに続けざまに合体フェースバスター。50ファンキーパワーズも北宮に合体キン肉バスターを繰り出すなど奮闘するも、中嶋にカットされ、トドメをさせず。北宮は向かってくるストームを体ごとキャッチし、スピアーを突き刺すと、ブルブル震えてのフィニッシュ予告から、怒涛のサイトースープレックス3連発で勝負を決めた。

 ようやく手に入れたタッグ王座に、北宮は「ジ・アグレッションとして再始動だ」と気合を入れ直すと、「GHCタッグチャンピオンとして、GLOBAL TAG LEAGUEも優勝する」と2冠獲り予告。これがタッグ王座初戴冠となる中嶋も「オレたちは止まらねぇ!」と独走宣言した。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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