シーズン162試合、長距離移動に時差も MLB入門編<その2>

菊田康彦

インターリーグはシーズン通して実施

ヤンキース対メッツのインターリーグは両チームの本拠地を地下鉄で行き来できるため「サブウェイシリーズ」と呼ばれる 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 さて、前回のコラムでも紹介したとおり、現在はア・ナ両リーグとも3地区制だが、同じ地区のチームだけで試合をするわけではない。同じリーグの同じ地区に所属する他の4球団とは計76試合(各19試合)、違う地区に所属する10球団とは計66試合(各6〜7試合)対戦し、残りの20試合はリーグが違うチームとの交流戦、「インターリーグ」になる。
 1997年に始まったインターリーグは、以前は年に2回ほどの期間を設けて集中的に行われていた。ところが、2013年から両リーグとも15球団ずつの編成になったため、1日にリーグ戦を7試合ずつ組むとどうしてもそれぞれ1チームあぶれてしまう。そこであぶれたチーム同士で対戦するなど、今ではシーズンを通じてインターリーグの試合が組まれるようになっている。今年の開幕戦では、タイガース対パイレーツの試合がインターリーグだ。

 インターリーグの対戦カードは年によって異なるが、同じ都市や近隣の都市を本拠地とするチーム同士による名物カードは、毎年組まれている。お互いの本拠地を地下鉄で行き来できることから「サブウェイ(地下鉄)シリーズ」と呼ばれるヤンキース対メッツ戦や、高速道路のフリーウェイでそれぞれの球場を行き来することができるエンゼルス対ドジャースの「フリーウェイシリーズ」などがこれに当たる。

 NPBと同様に7月に行われるオールスター戦は、MLBでは年に1試合だけ。現在は30球団あるので、単純計算だとそれぞれのチームのホームグラウンドで開催できるのは、30年に1度ということになる。今年は7月17日に首都ワシントンDCのナショナルズ・パークで開催されるが、ワシントンDCでの開催は49年ぶり。1試合のみのため、ファン投票によって選ばれた選手がスタメン出場するのがメジャー流だ(投手はファン投票の対象外)。また、NPBでは試合前に行わるホームラン競争は、試合前日に公開練習と併せて開催されている。

1カ月も盛り上がるポストシーズン

 夢の球宴が終わり、シーズンも後半戦に入ると、ポストシーズン進出争いが熱を帯びてくる。「ポストシーズン」とは、全162試合のレギュラーシーズン終了後に行われる、MLB王者「ワールドチャンピオン」の座をかけた戦いのことだ。これに出場できるのは、両リーグ15球団のうちの5球団ずつ。東・中・西の地区優勝チームに加え、残りの12球団の中で勝率上位の2チームが「ワイルドカード」として参戦する。

 このポストシーズンは4つのステージに分かれており、その期間は1カ月にもおよぶ。まずは両リーグともにワイルドカード同士で1試合制の「ワイルドカードゲーム」を行い、勝者は5回戦制(3戦先勝)の「ディビジョン(地区)シリーズ」に進出。ディビジョンシリーズを勝ち抜いたチーム同士が、今度は7回戦制(4戦先勝)の「リーグチャンピオンシップ(リーグ優勝決定)シリーズ」で対戦し、これに勝てばリーグ優勝ということになる。つまり、仮に地区優勝を逃しても、プレーオフを勝ち抜いてリーグ王者になる可能性があるということだ。

 ここまで来ると、残るはいよいよメジャーリーグの頂点を決める7回戦制(4戦先勝)の「ワールドシリーズ」のみ。1903年から始まったこのシリーズを最も多く制したのはヤンキースの通算27回だが、松井秀喜がMVPに選ばれた2009年を最後にMLB王者の座からは遠ざかっている。昨年はアストロズが4勝3敗でドジャースを下し、球団創設以来初のワールドチャンピオンに輝いたが、今年はどのチームが頂点に立つのだろうか。

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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