好対照な世界王者 拳四朗×京口紘人対談 日本人同士で対戦するなら王座統一戦で

船橋真二郎

京口は王座決定戦の時点で防衛戦が決まっていた

デビューからの1年で7試合を戦った京口。東洋太平洋の決定戦を戦った時点で、次の試合も決まっていた 【スポーツナビ】

――プロに転向して、慣れるのに苦労したことなどはなかったですか?

拳四朗 僕は徐々に慣れたかな。違和感なくいけた?

京口 僕はまったくです。アマチュアのときからプロ向きと言われてたのもあるんですけど、やりやすくて、しゃーないみたいな。水を得た魚ですね。

――確かにどんどん試合もして(笑)。

拳四朗 めっちゃ多かったもんな。年に何試合?

京口 デビューした4月から、次の年の4月まで入れたら7試合ですよ。

拳四朗 ヤバっ! それやったら、もう試合する前から次が決まってんのやろ?

京口 去年の2月28日に東洋の決定戦やって、やる前から4月25日に初防衛戦が決まってましたからね。

拳四朗 すげえな。チャンピオンになる前から防衛戦が決まってるん?(笑)

京口 「え? 2カ月ないやん! 余韻に浸られへんやん!」って。東洋獲って、休んだの3日か2日だけですよ。

拳四朗 ええ!? 祝勝会、楽しまれへんやん。

京口 無理です、無理です。まあ、今、思うと良かったですけどね。

フルラウンドの戦いには“血尿”がつきもの

ベルトのかかった試合で2度、フルラウンドの戦いをした拳四朗。試合後には血尿が出るほど、激しいものだった 【スポーツナビ】

――その3カ月後にデビューから1年3カ月で世界チャンピオンになって。

拳四朗 いや、すごいですよね。パワフルさが増したよな。

京口 そうですね。まあ、プロの長いラウンドのほうが僕は合ってますね。

拳四朗 俺もプロのほうがいいかな。スロースターターやから。でも、12ラウンド頑張った試合したら、血尿出んねんけど。出る?

京口 あ、1回出ましたよ。

拳四朗 あ、出るんや。

京口 どっちで出ました?

拳四朗 どっちも出てる。

京口 ロペス戦とゲバラ戦ですよね(拳四朗が王座を奪取した昨年5月のガニガン・ロペス戦と、初防衛した昨年10月のペドロ・ゲバラ(いずれもメキシコ)戦)。

拳四朗 うん。だから12ラウンド頑張ったら、血尿出るんかなと思って。

京口 多分、そうです。自分も1回、アルグメドのときに(京口が王座を奪取した昨年7月のホセ・アルグメド(メキシコ)戦)。

拳四朗 初めて出たとき、びっくりした。焦るよな?(笑)

京口 「うおー」って叫びましたもん。着替えて、シャワーを浴びて、大田区の試合会場ですよ。俺の体、大丈夫かなって、病気になったん違うかなって、心配しましたね。

拳四朗 俺も最初、焦ったわ。どうしようって。

京口 びっくりですよね。茶色いのが出て、「うわっ、ヤバい、ヤバい!」って。でも、いろんな人に聞いたら、あるらしいですね。フルラウンド戦ったら。

拳四朗 試合って、そんだけダメージあるんやな。スパーリングでは絶対ないもんな。

――それぐらい激しいんですね……。

京口 人生、初めてです。

拳四朗 2回目は慣れたけど。「またや」って。

拳四朗の新必殺技は“無想転生”!?

『北斗の拳』の技を知らないという拳四朗に「岩山両斬刃」を教える京口。ただ、この技はボクシングでは使えなさそうだ…… 【スポーツナビ】

――昨年は、拳四朗選手が世界を3戦、京口選手が東洋を2戦、世界を2戦。そういう厳しい試合を勝ち抜いて、お互いに大きく飛躍した年になりました。

拳四朗 それが、うれしいですね。関西で一緒やったんで。

京口 代表的じゃないですか? 関西で活躍して、プロになった。

――お互いに関西学生リーグ出身の世界チャンピオンとして、という意識もありますか?

京口 まあアマチュアのときは、関東の奴らは関西を下に見てくるんで。下剋上じゃないですけど、バカにすんなよっていうのはありましたね。蹴散らしたろうか、ぐらいの気持ちは。

拳四朗 そういうのはあったよな。みんな大体、関東(大学リーグ)に行くからね。関西から勝ったほうが。なあ?

京口 気持ちいいっすね。関西の奴らには負けられへん、みたいなのが関東の奴らにはあるんですよ。勝ったときの悔しい顔が。

拳四朗 気持ちいいよな。

――京口選手の強さの源は、ライバルを作ったり、見てろよ、みたいなモチベーションを作ることじゃないかと。それも才能のひとつだと思うのですが。

京口 自分は環境やと思うんですよね。末っ子で、兄と姉は空手が強かったし。

拳四朗 そういうモチベーションは、僕はあんまりないです。

京口 え? 強くならないとダメな名前してるじゃないですか? ケンシロウやのに弱かったら(笑)。

拳四朗 そのへんも淡々としてる感じやな。

京口 読んでないでしょ? アマチュアのときに「『北斗の拳』って知ってます?」って聞いたら、「俺、知らへん」って。

拳四朗 いまだに読んでないもん。

京口 読みましょうよ! メディアに出たとき、絶対に振られるでしょ? 知っとかないと。自分は、もう2、3回読んだんで。

拳四朗 めっちゃ読むやん!(笑)

京口 家に単行本があったんで。読んだほうがいいですよ。

拳四朗 技の名前だけ覚えようかな? なんかで倒したとき、言えるからね。

京口 でも、使えるのは百裂拳ぐらいですけどね。

拳四朗 ウソやん!?

京口 岩山両斬刃はチョップですから(と拳四朗の頭に手刀を振り下ろす)。

拳四朗 それは無理やな(笑)。

京口 残悔拳なんか、これですよ(と拳四朗のこめかみを両手の親指で突く)。

拳四朗 反則やん(笑)。もっとないの?

京口 剛掌波とか(と両の掌を突き出して見せる)。

拳四朗 両手やろ? 全然使えへんやん。じゃあ、読んでもな。

京口 あ、あと無想転生。あれはディフェンスですかね。パンチが当たらないんですよ。

拳四朗 それは使えそうやな。よけまくったとき、“ムソウテンセイ”って使えばいいんや。

京口 そうそう(笑)。ちゃんと使ってくださいよ。そういうネタも使ってほしいですよね。拳四朗って名前でやってるからには。

拳四朗 ほんまやね。まあ、読まずに名前だけ覚えるわ(笑)。

2/3ページ

著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント