悔しさにじむ渡部暁斗「金は遠かった」 復調ドイツ勢に崩された必勝パターン
ゴール後立ち上がることできず
金メダルを期待された渡部暁斗の複合ラージヒルだったが、ドイツ勢に屈し5位に終わった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
20日に平昌五輪ノルディック複合個人ラージヒルを5位で終えた渡部暁斗(北野建設)は、いつも通り淡々とした受け答えのなかに悔しさをにじませた。
前半のジャンプを首位で折り返すと、後半のクロスカントリー(10キロ)で逃げ切りを図るも6キロすぎで後続のドイツ勢にとらえられ、最後の上りに差し掛かるあたりで引き離された。ノルディック複合はジャンプを1本飛び、1時間あまり後に10キロのクロスカントリーを走る過酷な競技。渡部暁は比較的、ゴール後もけろっとする姿を見せることが多いが、この日はフィニッシュから1分以上も立ち上がることができなかった。
「悔いの残らないように積極的に」
渡部暁は「後悔したくない」と積極的に先頭を走った 【写真は共同】
前半のジャンプで134メートルを飛び「ラージであまり良いジャンプができていなかったが、今日は良いジャンプができた」と、銀メダルのノーマルヒルでも逃した首位で折り返した渡部暁。しかし4〜6位に固まってつけたドイツ勢を気にかけていた。追ってくるのはノーマルヒルで連覇を達成したエリック・フレンツェルと、ヨハネス・ルゼック、ファビアン・リースレと、距離に強い選手ばかりだ。
4位のフレンツェルとは24秒差。荻原健司さんが戦前に話していた「30秒ほど離してレースを迎えられれば理想」からすれば、その差としては少し心許なく、後続の追い上げを待ち、集団で最後のスプリント勝負に懸ける選択肢もあった。しかし渡部暁は「逃げ切れる確率はけっこう低いと思うんですけど、でも後悔したくないから、悔いの残らないように積極的に走っていきたいと思います」と、前半から飛ばして逃げ切りを狙う作戦を選択する。
距離が始まると1秒差でスタートしてきたヤールマグヌス・リーベル(ノルウェー)とすぐに同走して逃げたが、「彼はそういう走りしかしないから」と風を受け、体力消耗の激しい先頭で引っ張り続けたのは渡部暁だった。しかし黒いユニフォームのドイツ勢3選手の猛追はかわせず6キロすぎで追いつかれ、8キロすぎからは6人の集団となる。それでも「金メダルを取るならいつもと違うこと、他の人が予想外のことをしないとチャンスはない」と、ラスト1.5キロ付近で下りを利用しスパートするも剥がし切れず。最後は勝負どころの上り坂で接触してバランスを崩したことで勝負は決した。
「ごちゃごちゃしていて接触があったんですけど、もうけっこう限界がきていたので、バランスを崩さなかったとしても4位に変わったくらいじゃないですか」
ゴール後しばらく立ち上がれなかった渡部暁。ゴーグル下の表情をうかがい知ることはできなかったが、目標としていた金メダルに個人2戦とも届かなかった悔しさは全身から立ち上っていた。