ハリルの頭には、中村憲剛の名があるはず 日本代表にこの選手を呼べ!<川崎編>

飯尾篤史

監督は過去3度、公の場でその名前を口にした

ハリルホジッチ監督は、過去の会見で3度も中村憲剛の名を口にした 【(C)J.LEAGUE】

 記憶に間違いがなければ、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は過去3度、公の場で彼について語っている。

 最初は2016年8月、ワールドカップ(W杯)ロシア大会・アジア最終予選の開幕を控え、UAE戦、タイ戦のメンバー発表会見でのことだった。名前は伏せたものの、“川崎の35歳”をバックアップメンバーとして考えていることを明かした。

 2度目は翌月、最終予選のイラク戦、オーストラリア戦の代表メンバーを発表した際、好きな選手の1人に、その名前を挙げた。

 3度目はつい最近のことだから、覚えている方も多いだろう。昨年12月のEAFF E−1サッカー選手権で韓国に1−4と惨敗したあと、「彼を除けば今呼べるベストメンバーだった」という文脈の中で、その名前をはっきりと口にした。

 最初の発言から2年が経ち、37歳になった川崎フロンターレの中村憲剛の名前が今なお、ハリルホジッチ監督の頭の中にあることは、確かだ。

「ゲームを読む力」はハリルジャパンに必要

国内屈指のプレーメーカーの「ゲームを読む力」は、代表でも生きる 【(C)J.LEAGUE】

 国際舞台で積んだ経験やつかんだ自信は、時として若い選手を化けさせる。だから、ここまでのチーム作りにおいて、ベテランよりも若い選手にチャンスを与えてきたことに不満もなければ、疑問もない。久保裕也も、浅野拓磨も、井手口陽介も、ハリルホジッチ監督に抜てきされたからこそ、一人前の代表戦士になった。

 しかし、W杯イヤーに入れば、話は別だ。

 ここからの4カ月で問われるのは「今、何ができるのか」。年齢は関係ない。その点で、国内屈指のプレーメーカーである憲剛に、再びブルーのユニホームを着る資格があることは、16年のJリーグMVP、17年のリーグ制覇という結果が証明している。

 味方だけでなく敵さえも思いのままに動かす、何気ないようでいて計算し尽されたパスは今なお、さえわたっている。「サッカーについて達観してきた」と自身が語るように、試合の趨勢(すうせい)や機微を読む力も年々研ぎ澄まされている。そのフットボールインテリジェンスは、臨機応変な試合運びを掲げながら、一本調子になりがちなハリルジャパンに必要なものだろう。

「ゲームを読む力」は、4年前のザックジャパンで遠藤保仁が担ったような、スーパーサブとしての役割においても生かされるに違いない。それが、川崎の盟友、小林悠とのセットでの投入となれば、インパクトと期待感は絶大だ。

 想像してみてほしい。W杯の初戦、ロシアのサランスクで行われるコロンビア戦。0−0で迎えた後半の途中、ピッチサイドに立つJリーグMVPコンビの姿を――。

 ゲームの流れを一気に引き寄せられること、請け合いだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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