主将で金! 小平が一夜明けて会見 ライバルとの友情と亡き友への思い

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会見で金メダルを取った喜びを語った小平 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 平昌五輪スピードスケート女子500メートルで金メダルを獲得した小平奈緒(相澤病院)が19日、一夜明け会見に臨み、夢を実現させた心境や、銀メダルを獲得したイ・サンファ(韓国)との友情、日本選手団の主将を引き受けた思いなどについて語った。

 小平は18日に36秒94の五輪新記録をマークし、レース後には3連覇を逃したイ・サンファを慰めるなど、注目を集めていた。

「病院の方と一緒に喜びたい」

――メダルを首に掛けて一夜明けた今の気持ちをお聞かせください。

 まだ500メートルのメダル授与式は明日(20日)なので金メダルはないんですけれど、一夜明けてあらためて私が夢に描いていたものを成し遂げることができたと、とてもうれしい気持ちです。

――昨日金メダルを決めた後、ご家族とは何か話しましたか?

 まだ連絡は取っていなくて。昨夜レースが終わってドーピング検査を終えて、宿に帰って来たのが12時を過ぎていました。そこから今朝も結構早い時間だったので、まだ連絡は取れていません。(家族は)良かった時もダメだった時も、成績だけでなく私がやっていることを常に認めてくれていたので、その点に関して本当に感謝したいということを伝えられたらと思います。

――今手元にあるのは(1000メートルで獲得した)銀メダルですが、早く金メダルに触りたいという思いはありますか?

 金メダルをもらうことはとても名誉なことですしうれしいことですけれど、メダルよりも私自身の中では、このメダルを通してどういう人生を生きていくかが大事になってくると思うので、メダルに対してどうという思いはないです。けれど、メダルという形は、周りの皆さんにとって、私が戦ってきた証しでもありますし、皆さんに支えていただいた証しでもあるので、早く見ていただきたいという思いの方が強いです。

――お父様が、「今の彼女の人間形成は周りの皆さんのおかげだ」とおっしゃっていました。お母様も「人とのめぐり合わせはうらやましくなるくらいだ」とおっしゃっていました。ずっとサポートしてくださった相澤病院に対して、また金メダルを見たいと思っている患者さんも多いと思いますが、一言お願いします。

 私は本当に人に恵まれた人生だったなと思います。本当に相澤病院とのめぐり合わせは、必然であり偶然でもあったのかなと思います。本当に苦しい時も、成績よりも私の夢を応援してくれたのが相澤病院だったので、患者さんや職員の方たち、皆さんで一緒に喜びを分かち合えるような機会があればいいなと思っています。

「サンファの気持ちに寄り添っていたいなと」

順位が確定し、ライバルのイ・サンファを慰める小平(右) 【写真は共同】

――イ・サンファ選手との友情が日韓でかなり話題になっているようですが、あらためてイ・サンファ選手への思いを教えてください。

 彼女は私がワールドカップ(W杯)にデビューした時からすごく仲良くしてくれて。年下ですけれど、スケートに対する思いは素晴らしいものを持っていて、私も見習わないといけないなと。すごく彼女から学ばせていただきました。私が本当にダメだった時、クーリングダウンで一人で泣いていた時に、彼女は(その大会で)優勝したと思うんですけれど、私のもとに来てくれて一緒に泣いてくれたので、私もサンファの気持ちに一緒に寄り添っていたいなと昨日は思いましたし、彼女から力をもらって次のステップに進める機会が何度もあったので、そういった恩返しというか、彼女との友情のきずなはけっこう深まってきたのかなと思います。

――泣いたのはいつ頃?

 いつだったかは忘れてしまいましたが、ソチ五輪の前のシーズンかソチのシーズンか、すごく転倒が続いたシーズンがあって。スケートが怖くなってしまったというか、そういう時期があって、そういう時も「こうしたらいいよ」などアドバイスをくれたので、良かったなと思います。

――(今年1月に亡くなった、ソチ五輪日本代表で信州大で同級生の)住吉都選手の悲劇があって、五輪に臨むということになりました。住吉選手のご両親から「精いっぱいここで頑張ってほしい」という言葉を小平選手はお受けになったと聞いています。1000メートルの銀メダル、500メートルの金メダルを獲得されましたが、レース後に住吉選手のことが思い浮かんだり、彼女に対する思いが湧いてきたようなことはありますか?

 そうですね……正直、あの……(涙を浮かべ言葉に詰まる)正直、彼女のことは何度も何度も思い出すことが多くて、やっぱり考えないようにしていても、常に頭に浮かんできていました。それでも、やっぱり主将としてはレースに集中して臨まなければと感じていました。これは言ってもいいか分からないですけれど、住吉の関係者の方に生前、「奈緒が金メダルを取ったら、私が金メダルを取ったのと同じだと思う」と話してくれたというのを五輪前に聞くことができて、すごく救われたような気持ちだったんですけれど……。実際こうして金メダルを取ることができて、本当は本人の目の前で「金メダル取ったよ」と報告したかったんですけれど、それができないのは本当に残念だなと思います。

「結城先生と積み上げたものが一番」

――五輪は選手の物語がもっとも表れる場所だと思います。スケートを通しての他国の選手との友情もありますし、国を代表する誇りもあると思います。それぞれについて、小平選手はどのような思いを持っていますか?

 国に対しての誇りというものについては、日本でスポーツに対して勉強している専門家の方々がたくさんいたり、日本独特の知恵や工夫を通してスポーツを高めようというところに、日本らしさがあるのかなと思っています。それは、それぞれの国にもあると思っていますが、日本人の勤勉さみたいなところには、すごく誇りを持っています。

(他国の選手との友情については)スポーツは言葉のいらないコミュニケーションだと思っています。スポーツは世界の人たちの心を動かすものですし、他国の選手と競い合って、高め合っていく中で、スポーツの究極の姿がたくさんの人の心を動かすと思うので、お互いの国の文化や言葉を知ることで、さらにスポーツの楽しさが増すと言いますか。他の国の選手はこのスポーツに対してどういう思いや文化を持っているのかを知ることは、競技を高める上ですごく必要なのではないかと思っています。

――今回の五輪に対してどんなアプローチがあって金メダル、銀メダルを取れたのか、何が鍵になったのか。一夜明けてご自身が思うことを教えてください。

 やはり大学1年から結城(匡啓)先生と積み上げてきたもの、またチームメートと積み上げてきたものが、やはり一番キーになったかなと思います。

――その積み上げてきたものを具体的に言うと?

 やはり気付きや発見をしっかりとチームメートと共有しながら、お互いのいいところ、悪いところを指摘し合いながら、自分たちの発見を伸ばしてきたというか。そういったところが学び合いや高め合いにつながったのかなと思います。

主将は「覚悟を持って引き受けた」

――主将は金メダルが取れないという嫌なジンクスがあったと思います。どういった思いで主将を引き受けたのか。また、そのジンクスを破った今、主将として他の競技を見る機会や、この後の五輪の過ごし方を教えてください。

 正直、主将の打診を受けた時は、本当に恥ずかしがり屋ですし、人前に出ることは苦手だったので、また主将になると金メダルが取れないと遠くから聞こえていたので、正直あまり受けたくないなという気持ちはありました(苦笑)。でも、結城先生に説得されまして、「今の奈緒にしかできないことだと思う」と言われた時に、主将として私が学べることは何だろうなともう一度考えた時に、選手としてだけではなくて、将来に生きてくるなということを何となく想像できたので、そこは覚悟を持って引き受けました。その後はもう、金メダルを取れないというジンクスはあまり気にせず、気にならないくらい、自分のやるべきことに集中できたと思っています。今、実際に自分自身の競技を終えて、次はチームの応援に回りたいと思っています。まずは今日行われるスピードスケートの男子500メートルをしっかり観戦して応援にいきたいと思います。

――小平選手はずっとノートをつけていらっしゃいますが、今回の1000メートル、500メートルについて、どんなことを書くことになりそうですか? そのノートはいつまで続きそうですか?

 滑りのビデオは振り返りで見てはいたんですけれど、まだ書いていません(笑)。これからゆっくり振り返りたいと思っています。ただ、1500メートルや1000メートルは、すごく学びが多くて。500メートルに向けて修正しなければいけない点は1000メートルのレースからしっかりと得ることができましたし、1500メートルをやったことで1000メートルに何を生かせるか考えることができたので、その辺はしっかりとノートに書いて、次の挑戦につなげていきたいなと思っています。

――「次の挑戦」という言葉がありましたが、この先に見据えていくところ、今考えていることを教えていただけますか?

 やはり500メートルの世界記録を塗り替えたいという思いがあります。シーズン最後に(カナダの)カルガリーで試合が行われるので、その大会に出場して、今シーズンできる限りの挑戦はやってみたいと思っています。

――そういう小平さんなので、やめるということはないと思いますが、4年後を見据えてという意味ではどう考えていますか?

 まだ所属先と話をしていないので何とも言えませんが、私としてはスケートはもう少し滑りたいなと思っています。

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