銀でも渡部暁斗が示した“王者の戦い” 次こそ悲願金へ、雪辱の第2ラウンド
悔しさと満足感と
ノーマルヒルは惜しくも銀メダルに終わった渡部暁斗だったが、それでも“王者の戦い”を示した滑りだった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
14日に行われた平昌五輪のノルディック複合ノーマルヒルで、日本のエース渡部暁斗(北野建設)は2大会連続の銀メダルを獲得。前半のジャンプを3位の好位置で折り返したが、目標としていた金メダルにはあと4秒8届かなかった。
後半クロスカントリーは、ジャンプでトップに立ったフランツ・ヨーゼフ・レアール(オーストリア)から渡部暁を含めた5位のエリック・フレンツェル(ドイツ)までが、36秒の差を縮めて5人の先頭集団となる展開。最初にレアールが脱落し、残り4人が終盤まで競り合いながら、レースが動いたのは最終周。渡部暁とフレンツェルが抜け出すと、スタジアムに戻る直前の上り坂でフレンツェルがもういち段階ギアを上げ、差がついた。
「最後の上り坂の手前までは(金メダルを)取るつもりでいました。でも上りはじめてフレンツェルとの差が開いて、そこでもう終わりだなという感じでしたね」
淡々と敗北を認める渡部暁。もちろんそこには悲願を逃した悔しさもあるのだろうが、表情からは「やり切った」という、ある種の満足感を覚えているようにも感じられた。
「やっぱりビッグタイトルに強いですよね、彼は」
4年前と同じくライバルのフレンツェル(右)に敗れたが、渡部はその強さを称えた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
自身も「1位になってもおかしくないという状態を自分で作りあげた上で五輪に臨むことができるので、1位に収まってもおかしくないと思える。だからこそ金メダルを取ってもおかしくないし、ふさわしい選手だと言えると思う」と自信を持って平昌へ出発していた。
対するフレンツェルはソチ五輪の同種目でも終盤に渡部暁を引き離し、金メダルを獲得。昨シーズンまでW杯総合5連覇中、通算42勝(渡部暁は14勝)の王者だ。渡部暁はこれまでW杯個人で22度、2位に甘んじているのだが、そのうち実に8度はフレンツェルに苦杯を舐めさせられたもの。今季はここまで1勝で総合8位と調子が上がらなかったが、欧州勢らしく五輪にピークを合わせてきた。
今シーズンもっとも注目の集まる一戦で本調子を取り戻した強敵に、渡部暁も「やっぱりビッグタイトルに強いですよね、彼は。その印象は今シーズンでより強くなりました」と苦笑いを浮かべる。