マルチなアタッカーへ変貌した清武弘嗣 日本代表にこの選手を呼べ!<C大阪編>

元川悦子

現状の構想ではトップ下やインサイドハーフか

過去に経験はあるものの、代表ではサイドで使われる可能性は低そうだ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 そうした現状を踏まえると、日本代表でもサイドアタッカーの一員と位置付けることもできそうだ。清武は2016年9月に行われたワールドカップ(W杯)ロシア大会のアジア最終予選初戦・UAE戦でも「4−2−3−1」の左MFで先発しており、指揮官ヴァイッド・ハリルホジッチの中でも構想がないわけではないはずだ。

 ただ、当の本人は「ハリルさんが求めるサイド(の選手)は『ホントのアタッカー』じゃないですか。(原口)元気とか(久保)裕也みたいにガッツリ前へ行くタイプだと思う。僕はそこまで足も速くないし、ボールに触ってゲームを作るのが自分の特徴。そうしないと自分が生きないので、少し違うんじゃないかな」と冷静に分析する。

 確かに、清武が最後に出場した国際Aマッチである17年3月のW杯最終予選タイ戦のあたりから、ハリルホジッチ監督の好むサイドアタッカー像がより鮮明になってきた印象は否めない。右は久保や浅野拓磨、伊東純也、左も原口、乾貴士という推進力とスピードに長けたタイプが重用されているからだ。

 清武は昨年12月のEAFF E−1サッカー選手権で再招集された際の練習ではトップ下やインサイドハーフで使われていて、今のところサイドで使われる可能性は低そうだ。仮に4カ月後のW杯本大会のメンバーに滑り込んだとしても、彼自身はクラブと代表のポジションのギャップに悩むかもしれない。

 ただ、ヘントでトップ下に入っている久保、新天地デュッセルドルフでは右サイドでも起用されている原口らも状況は同じ。代表というのは必ずしも自分の思い描くポジションでプレーできる場所ではない。足掛け7年間、日の丸を背負い続けてきた彼はその厳しさや難しさがよく分かっているに違いない。

W杯ではユーティリティー性を備えた選手が必要

ユーティリティーな選手はW杯で必要となる。1戦1戦を大事に、コンディションを上げてほしい 【写真:アフロスポーツ】

 本職のトップ下やインサイドハーフを巡っても、香川や本田圭佑、森岡亮太、柴崎岳といった欧州組がしのぎを削っており、ポジション争いは熾(し)烈を極める。だが、彼らと比べても、清武の高度な技術や戦術眼や適応力、国際経験値は引けを取らない。むしろC大阪で今、サイドをやっているからこそ、プレーに幅が出てきたのも事実だ。

 前述のように左からシンプルにクロスを入れたり、ゴールに頭から突っ込んでいくような場面はトップ下専門の頃にはほとんど見られなかった。この進化を踏まえると、今の彼は中央でもサイドでも十分に使える戦力と言えるのではないか。実際、W杯のような大会では、ユーティリティー性を備えた選手が必要になる。その強みを本人が自覚し、前面に押し出すこと。それが2度目の世界舞台に立つ重要ポイントになってくる。

 その前にコンスタントにピッチに立ち続けることが第一だ。清武自身も昨年末には、「今年(17年)はけがもあったし、とても苦しい1年だった。18年はけがせず1年間フルに戦って、サッカーを楽しみたい」と切なる思いを打ち明けていた。それを現実にすべく、今年は1月中旬からのタイ、宮崎でのキャンプでフィジカルを徹底的に強化した。2月14日の済州ユナイテッド戦から始まったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)にも出場するなど、ここまでいい調整ができていた。

 ところが、18日の練習中に右足を負傷。全治6週間というショッキングな診断が下っった。これで3月の日本代表欧州遠征への参加は絶望的になったが、メンバー発表の5月までには時間がある。復帰時期を含め、本当の勝負はここからだ。

「4年後はハセ(長谷部誠)さんみたいにキャプテンマークを巻いて、自分がW杯のピッチに立っていることを想像しながら、4年間を過ごしていきたい」

 14年6月、W杯ブラジル大会のコロンビア戦後にこう語ったことを、清武は忘れてはいないはずだ。紆余(うよ)曲折を経て28歳になった今、彼は周りを引っ張れるだけの強靭(きょうじん)な精神力も身につけた。

 だからこそ、何としてもロシアの地を踏んでほしい。そのためにも、ここからの1戦1戦を大事にしてほしい。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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