マルチなアタッカーへ変貌した清武弘嗣 日本代表にこの選手を呼べ!<C大阪編>

元川悦子

ゼロックス杯で新シーズン初ゴールを記録

17年シーズンの2冠王者C大阪からは、マルチアタッカーへ変貌した清武弘嗣を推薦 【(C)J.LEAGUE】

 2017年シーズンのルヴァンカップと天皇杯の2冠王者であるセレッソ大阪にとって、18年シーズン初の公式戦となった10日のゼロックススーパーカップ(以下、ゼロックス杯)川崎フロンターレ戦。C大阪が前半26分に山口蛍の先制弾で1点をリードして迎えた後半3分、ゴール前で鋭い反応を見せたのが新背番号10の清武弘嗣だった。

 GKキム・ジンヒョンのロングフィードを新戦力の韓国人FWヤン・ドンヒョンと杉本健勇の両長身FWが競り、こぼれたボールを清武が頭でプッシュ。マークについていた田坂祐介をかわして一気に抜け出し、GKチョン・ソンリョンの位置を見ながら右足を確実に振り抜いたのだ。

「ボールが来たので、頭でいったら勝ちかなと。あとは冷静に決めるだけでした」と本人もしてやったりの新シーズン初ゴールとなった。セレッソは最終的に3−2で勝利。幸先のいい新シーズンのスタートを切った。

近年、得点に絡む仕事が増加

ゼロックス杯でもゴールを決めるなど、近年の清武は得点に絡む仕事を頻繁に見せる 【写真:築田 純/アフロスポーツ】

「(香川)真司にあって、キヨ(清武)にないもの。それはズバリ、ゴールだ」

 これは、かつてC大阪のエースナンバー8を背負った森島寛晃(現統括部長)が残した言葉だ。だが、近年の清武はそのネガティブなイメージを払拭(ふっしょく)しつつある。

 ドイツ・ハノーファーでエースナンバー10を背負った15−16シーズンは、2度の負傷離脱を強いられながら5得点をマーク。16年夏に移籍したセビージャでも開幕のエスパニョール戦でいきなりゴールを飾った。半年間でチームを去ったものの、出場機会さえ得られていたら、もっと数字を残していただろう。

 1年前に復帰したC大阪でも、度重なるけがに見舞われながら、J1に18試合出場して6ゴールと奮闘。全34試合に出場した柿谷曜一朗と同じ数字を残している。尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督から両サイドやトップ下など多彩な役割を求められる中、得点に絡む仕事を頻繁に見せたのは、前向きに評価していい点だ。

サイドプレーヤーとしての自信を深める

高精度のクロスや豊富な運動量などを持ち、サイドプレーヤーとしての仕事もこなす 【(C)J.LEAGUE】

「今の自分はサイドハーフだし、外で幅を作りながら起点になってやるのはすごく楽しい。これからもっと良くなっていくんじゃないかと思います」と本人もサイドプレーヤーとしての自信を深めつつある。

 ゼロックス杯でも、開始7分に左サイドからお手本のような精度の高いクロスを上げ、山村和也と柿谷の飛び出しを誘った。ああいう質の高いボールを入れられるのも、この選手の大きな強みと言っていい。

「セレッソは細かいパスで最後まで崩していくというチームカラーがあるけれど、今年は単純にクロスを上げてゴールというのもたくさんあると思う。自分は元々クロスが不得意なわけではないので、そういうのも入れていければいい」と清武も前向きに言う。

 サイドに必要な運動量も着実に増えている。17年シーズンのJ1でフル出場した場合は、走行距離が11キロ台後半に達するのが常。12キロを超える試合も少なくなかった。「ボール扱いに長けたチャンスメーカー」から「泥臭く走ってゴールに迫れるアタッカー」へと変貌を遂げつつあることがよく分かる。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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