ダルビッシュ争奪戦はカブス入りで決着 現実になったエプスタイン社長の“確信”

丹羽政善

ワールドシリーズでの乱調が有利に働く?

昨季のワールドシリーズでダルビッシュは2試合連続KO。だが、カブス陣営は「ワールドシリーズの2試合でダルビッシュを判断できないことを知っていた」という 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 ただ、すべてがスムーズというわけではなかったようだ。

 カブスにとって、「オフが始まったときから、(ダルビッシュが)トップターゲットだった」とエプスタイン社長は認めたが、「当初は、決して現実的ではなかった」とも明かしている。

 激しい競争も予想され、マネーゲームになるかもしれない。それは避けたかった。しかし、ワールドシリーズで打たれたことは、ある意味、彼らに有利に働いたのかもしれない。

「あれで、過剰反応するチームがいるかもしれないと思った」とエプスタイン社長。

「でもわれわれは、ワールドシリーズの2試合でダルビッシュを判断できないことを知っていた」

契約の詳細に関しては明かされず

 そして、12月18日に行われた、くだんのミーティング。

 ダルビッシュは、「どの分野においても自分が良くなる、次のステージに行く壁を破るのは挑戦する心があるかどうか。(交渉を)挑戦する場に使ってしまって申し訳ないんですけど(笑)、英語のレベルをちょっと上げたいというので、一回場に入ってみようと思いました」と振り返ったが、むしろ、カブスはそこにダルビッシュの誠意を感じ取った。ダルビッシュが自らの言葉で、コミュニケーションを図ろうとしたのである。

 そのとき、エプスタイン社長は、「一つのことがクリアになった」とある確信を抱く。
 ダルビッシュがカブスに悪い印象を持っていないこと。むしろ、それを望んでいるのではないか、という――。

 一方のダルビッシュも、「最初から最後まで印象に残ることばっかり」と話し、気持ちが傾く。なにより、家族が喜んでくれた。

「奥さん(聖子さん)は最初の方からカブスがかなり好きそうだった。シカゴの街もすごく気に入っていますし、喜んでいます」

カブスでも慣れ親しんだ背番号「11」を着ける。シカゴの地でどんな投球を見せてくれるのか 【写真は共同】

 では、その時点でそこまで互いが好感触をいだきながら、なぜ、ここまで時間がかかったのか。

 この日、その点は明かされず、また、通常ではありえない2年後の契約破棄条項が何を意味するのかも、疑問として残った。

 会見で、そこを問われたダルビッシュは、「契約の細かいことについて話すのは賢明ではない」と言った後で、こう付け足している。

「ここでなぜとか話すと、いろんなことを話さないといけなくなる」

 いろんなこととは何なのか。答えが見えたとき、キャンプ直前の契約の意味も明らかになるのかもしれない。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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