羽生が作る雰囲気、引き込む力に注目 小塚崇彦の選手解説<男子編>

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羽生の技術の高さはもちろん、作り出す雰囲気にも注目だ 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 平昌五輪のフィギュアスケート男子シングルが2月16日、17日に行われる。日本からは羽生結弦(ANA)、宇野昌磨(トヨタ自動車)、田中刑事(倉敷芸術科学大)の3選手が出場。昨年11月に負ったケガの影響が懸念される羽生は、前回のソチ五輪に続く連覇を目指す。また昨季の世界選手権で2位に入った宇野も、金メダルを射程圏内にとらえている。

 一方、海外のライバルも多士済々(たしせいせい)だ。今季全勝のネイサン・チェン(米国)や、1月の欧州選手権で大会6連覇を飾ったハビエル・フェルナンデス(スペイン)らが日本勢の前に立ちはだかる。

小塚さんにフィギュアスケート男子有力選手の特徴を解説してもらった 【写真:坂本清】

 現在の男子フィギュアスケートは空前の“4回転”時代。その流れが最高に高まっている平昌五輪を制するのはどの選手か。バンクーバー五輪で8位入賞した経験を持つ小塚崇彦さんに、有力選手たちの特徴を解説してもらった。

さらに自信つけた宇野、田中は最後のピースがそろった

 まずは日本人選手です。五輪2連覇を狙う羽生選手の最も優れている部分は、ジャンプの流れやスピンの回転の速さといった一つひとつの技術のレベルの高さです。スピンとステップのレベルをしっかりと取り、出来栄え点(GOE)でも加点が狙える。そうした技術を持ち合わせているというのが強みだと思います。それから何といっても雰囲気です。画面を通してだとなかなか分かりづらいと思いますが、周りを引き込む力、現地に行って見ると分かる雰囲気づくりは彼の特徴です。性格的にはもとからすごく攻めるタイプで、いつも上を目指している。スケートだけではなく、何事に対しても向上心を持っています。

宇野は4回転フリップを跳べるようになり、さらに自信をつけた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 全日本選手権を制した宇野選手は、何をやってもそつなく高いレベルでこなします。4回転フリップを身につけ、今度は4回転サルコウも習得した。これで4種類の4回転ジャンプを跳べるようになりました。それ以外にスピンやステップでも高い得点を出してくる選手です。また、試合であまり緊張するタイプではないように思います。他の選手とは戦い方が違う。集中はするのですが、緊張が集中に変わっていくタイプではなく、もともと感覚的に試合への気持ちの持っていき方をきちんとできる選手です。

 以前はトリプルアクセルですごく苦労していましたが、4回転フリップを跳べるようになり、さらに自信をつけた。今ではトリプルアクセルも加点をもらえるようなジャンプが跳べるようになりましたし、もとから持っていた表現力は大人になってからさらに深みを増したと思います。どんどん成長していってほしいし、これからも見ていきたいと思うスケーターです。

田中は気持ちの面が一番変わった選手 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 田中刑事選手は、しっかりとした軸のジャンプや男らしさ、力強さが持ち味です。技術的にはここ何シーズンかそんなに変わっていないと思います。4回転サルコウを跳べるようになり、少しずつ精度が上がってきています。年末の全日本選手権で一番変わったなと思ったのが、気持ちの部分です。それは彼にとっての最後のピースだったと思っています。それがついにそろった。これまで彼は大切な場面でけっこう失敗をしてしまっていました。「彼だったらもっとできるのに」と、個人的にそういう思いがずっとある選手でした。重要な試合に向けて、どう気持ちを合わせていくか。それが先日の全日本選手権で彼なりにうまくできた実感があったように思います。

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