パラアイホ・須藤悟、冷静な心で平昌へ 4度目の大舞台にも「自然体で動く」

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日本のキャプテンとして「Cマーク」を身につけてプレーする須藤 【写真は共同】

 激しいボディコンタクトの応酬から、「氷上の格闘技」と呼ばれるアイスホッケー。パラスポーツにおいても、「パラアイスホッケー」という競技名でパラリンピックに正式採用されている。

 来月の平昌パラには日本も出場予定で、バンクーバーで開催された2010年以来、2大会ぶり5度目の大舞台を踏む。前回出場時は優勝候補の地元・カナダを破り、銀メダルを獲得。平昌で再び快進撃を起こすべく、選手たちの大暴れが期待される。

 スポーツナビでは、陸上・十種競技の元日本王者でタレントの武井壮さんがパラアイスホッケーを体験する、NHKの撮影現場に同行(2月26日放送)。今回は競技の魅力と平昌パラに向けた展望を記したい。

「スレッジ」と「スティック」に特徴

スレッジをはじめ、パラアイスホッケーにはこれだけの道具が必要となる 【スポーツナビ】

 パラアイスホッケーは主に下肢に障がいを持つ人が行う競技。ただ、ルールやリンクの大きさ、防具などは健常者のそれとほとんど変わらない。

 一方で、健常者競技と大きく変わる点が2点ある。1点目は「スレッジ」と呼ばれる専用のそりに乗ること、2点目はスティックの本数・形状が違うことだ。

 スレッジの下部にはスケートの刃が2枚付いており、これでバランスを保ちながら自在に氷上を滑る。ポジションに応じたスレッジが設計され、フォワードとディフェンダーは足を投げ出す形、ゴールキーパーはあぐらをかく形。もともと「アイススレッジホッケー」と呼ばれていたこともあり(昨年7月に「パラアイスホッケー」に呼称変更)、この競技最大の特徴となっている。

 健常者のアイスホッケーは選手1人につきスティックを1本持つが、パラアイスホッケーは両手に1本ずつの計2本持つことになる。スティックには片側に「ピック」という尖った装置があり、その突起を使いながら氷上を漕いで進行。もう片方のブレード部分(曲がっている部分)でパスやシュートなどを放つ。漕ぐ時とパックを打つ時で随時持ち替えないといけないため、スティックを使いこなすことは競技を行う上で重要。勝負を左右する一つのファクターになる。

競技を始めたきっかけは母の“発見”

チーム内でも屈指のスケーティングスキルを誇る須藤 【スポーツナビ】

 日本でパラアイスホッケー選手として活動しているのは50名程度。全国に4つのクラブチーム(北海道、東京、長野、八戸)があるが、ほとんどの選手はフルタイムで働きつつ、深夜や休日などの限られた時間を使って技術の向上に努める。

 そんな環境下で代表チームをけん引するのが、キャプテンの須藤悟(日本パラアイスホッケー協会/北海道ベアーズ)だ。ディフェンスの要として、これまでに3度のパラリンピック出場。先のバンクーバー大会・銀メダルメンバーのひとりでもある。

 須藤がパラアイスホッケーと出会ったのは、およそ20年前。長野五輪・パラリンピックに向けて盛り上がっているころだった。アイスホッケーが盛んな北海道苫小牧市で生まれ育ち、自身も幼いころから親しみルールを把握していたことで、競技にのめり込むまでに時間はかからなかった。

「僕の知識の中では車いすバスケットと車いすマラソンしか、障がい者スポーツを知りませんでした。ですが、身体的なところで断念しないといけなくて。それでも『何かしたい』と思った時に、母親が『これだったらできるんじゃないの?』と新聞記事で見つけてくれたのがスレッジホッケーでした」

 スティックを握って以来、ディフェンスひと筋で過ごしてきた。冷静な口ぶりが印象的な須藤にとって、前を向いて全体を見渡せるポジションは自らの性格にも合っているという。

「相手のエースと呼ばれる選手がパックを運んでゴール前へ持っていく時、それを事前に察知して最初に止めるのがディフェンスの仕事。シュートをさせないことをやらなきゃいけない。かなり重要なポジションですし、それに対して相手をつぶして、危険な芽を摘めるのは面白い。今となってはフォワードもやってみたいですけど、結局『やれ』って言われても後ろに戻ってディフェンスをしているんです。それぐらい染み込んでいますね」

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