女子選手を苦しめた「超硬」のコース 野上大介氏が平昌ハーフパイプを解説
スノーボード女子ハーフパイプ決勝で6位入賞の松本遥奈(左)と8位入賞の冨田せな 【写真は共同】
コースとの相性も問われるハーフパイプ種目。女子の滑りを見て、平昌五輪はどのようなコースなのか、男子はどのように挑むべきなのか。スノーボードジャーナリストで、スノーボード専門誌『BACKSIDE』編集長の野上大介氏に聞いた。
W杯の反省を生かし史上最長のコースに
寒さも選手にとっては敵。マイナス10度だとコースの雪が溶けず、板が滑りづらくなる 【写真は共同】
今日(13日、大会5日目)は、各選手は6回、7回と飛んでいました。選手たちは通常5回のベストルーティーンでランを完成させるべく何年も練習を重ねてきているので、困ったと思います。技を最後に付け足すのか、そもそも構成から入れ替えるのか。つまり技の引き出しを持っている、対応力の高い選手が有利です。
(平昌の寒さに対する懸念は)11日の練習では平野歩夢選手が「寒くて無理っす」と言って、高難度の技を回避していました。1月末に米国で開催されるXゲームズもナイター開催なのでマイナス10度くらいいくのですが、平昌は日中でもそれくらいの日があります。
ここは人工雪でもともと硬い雪質ですが、寒いとさらに硬くなります。スキーやスノーボードは板の小さな溝に溶けた雪(水)が入ることで滑るのですが、寒すぎるとこれが溶けずに板が滑らなくなるんです。選手たちのテンションを考えても、暖かい方がいいのではないでしょうか。
冨田せなの転倒は平昌ならでは
冨田せな(写真)の転倒は、平昌のコースならではの罠にはまった 【写真は共同】
ただ冨田選手に限らず多くの女子選手はどうしても脚力があまりありません。そのため雪面が硬いコースでは壁を上って最後に飛ぶとき、ソール面だけを使う理想型ではなく、エッジを使って飛ぶことが多くなります。そうしないと谷側にずるずる滑り落ちてしまい、上に力がいかなくなるんです。
エッジを効かせるとどうしても減速するので、早く踏み切らざるを得ず、高さも出ません。高さがなければ回転力も足りなくなり、本来はフラットな板の状態で着地したいところを、エッジで耐えながら何とか着地することになります。ただ高さがないのでボトム付近に落ちるしかなく、さらに減速する悪循環に陥ります。
冨田選手が2本目のキャブ720で転倒したのは、着地でエッジに耐えられず弾かれたからです。うまい滑走技術を持っている選手ですし、平昌のコースでなければもしかしたら転んでいなかったかもしれません。
そういう意味では、ここはごまかしが効かないパイプだと言えます。本当にシビアなので、本当にうまい選手でなければうまく滑れないでしょう。まあ硬すぎですね。滑っただけですごいと思いますよ。