U-19W杯で活躍した“シンデレラボーイ” シェーファー・アヴィ幸樹が現状を語る

杉浦大介

ジョージア工科大でプレーするシェーファー・アヴィ幸樹に話を聞いた 【杉浦大介】

“日本バスケットボール界のシンデレラボーイ”が米国の名門カレッジで腕を磨いている。身長203センチのセンター、シェーファー・アヴィ幸樹は弱冠20歳。高校2年生でバスケを始め、短期間で注目の存在となった。インターナショナル・スクール選抜チームの選手として、男子U−16日本代表を相手にプレーしている最中にトーステン・ロイブルヘッドコーチ(HC)からスカウトされたという変わり種だ。

 昨夏、U−19ワールドカップ(W杯)で過去最高位の10位に入った日本代表での活躍で名前を売ると、今年からNCAAディヴィジョン1のジョージア工科大に進学。過去にクリス・ボッシュ、ステファン・マーブリーといったNBAプレーヤーを輩出した名門校ではウォークオン(奨学金なし)という厳しい条件で、ここまで3試合で平均0.7分の出場とまだプレー機会には恵まれていない。それでも多くの先輩プレーヤーたちにもまれ、充実した日々を過ごしているようだ。

 現地時間2月4日、敵地でのボストン・カレッジとの試合後にシェーファーに話を聞いた。笑顔を頻繁に浮かべる爽やかなシンデレラボーイ。その言葉からは、このスポーツを本場でできる喜びと、日本代表への熱い思いが分かりやすい形で伝わってきた。

レベルが高いACCの環境

――NCAAディヴィジョン1で迎えた初めてのシーズンを振り返ってください。

 去年1年は米国(のプレップスクール)でやっていたので、ある程度レベルは分かっていました。カレッジはよりビジネスっぽい感じがします。表現が難しいですが、関わり方の真剣さが違うので、これまで以上に、常にこのチームのことを考えていなければいけません。

 あと、ACC(アトランティック・コースト・カンファレンス)はとにかくレベルが高い。今はまだプレータイムをほとんどもらえていないのですが、これから(信頼を)勝ち得ていくためには、生半可な努力では足りないということをあらためて感じました。

――分かっていたこととはいえ、プレー時間が少ないことへのフラストレーションは?

 今年はセンターにベン・ラマーズがいるので、僕がこのチームでプレーすることはほぼないと思っていました。そういった心算で来たので大丈夫です。ただ、今の僕は「バックアップセンターのバックアップ」といった感じなので、来年必ずプレーできるかと言われたらそうでもない。焦りではないですが、気にするというか、頑張らなければいけないとは思っています。

――ACCにはデューク大、ノース・カロライナ大などが属しており、ディヴィジョン1の中でもレベルの高いカンファレンスとなっています。そのすごさをどういった部分に感じますか?

 ACCのチームと対戦する時、シーズン序盤の対戦相手は常に“アンダードッグ(かませ犬)”という扱いです。逆に言えば、みんな僕たちを倒して上がってやろうという意気込みで向かってくるんです。そして、カンファレンス・ゲームに入ったら、本当にどのチームも強い。他のカンファレンスだったらそれほど強くないチームから勝ち星を稼ぐこともあると思うんですけれど、このカンファレンスではすごく頑張ってやっと良い試合ができる。少しでも緩く入ったらすぐにやられてしまう。そういったところに違いを感じます。

すべてにおいて技術が足りていない

ベン・ラマーズ(44番)の存在もあり、ジョージア工科大ではプレー機会に恵まれていない 【Getty Images】

――個人としては、かつて日本リーグにも所属したアシスタントコーチのエリック・レベノとトレーニングを積んでいるという話を聞いています。自分の中で米国でも通用すると感じている部分と、逆に課題と考えている部分は?

 身体作りはずっとしてきたので、当たり負けはしないと思っています。センターとしてインサイドでプレーする上で、僕は腕が短い。なので、身長差がある相手にはちょっと厳しいですが、当たりでは負けないので、そこは自信を持ってやっています。

 一方、課題として考えているのは「技術」です。僕はバスケットボールを始めたのが遅いというのもあって、まず試合慣れしていません。そしてフックショットなり、普通のジャンプショット、ボールハンドリングなり、すべてにおいて技術が足りていない。今の課題は技術を底上げしていくことです。

――レベノには付きっきりで指導を受けているのでしょうか。 

 毎日練習前か練習後に30分くらい個人トレーニングをしてもらっています。

U−19W杯で得た自信

――日本代表歴も振り返ってください。中学までサッカーをやっていながら、始めたばかりのバスケの練習試合で日本代表監督に見いだされ、U−19W杯で活躍。ここまでは聞いたことのないようなシンデレラストーリーです。

 なかなかないですよね(笑)。

――キャリアが少ない中、U−19W杯で活躍できたことは自信につながっていますか?

 すごく自信になりました。米国、カナダを相手に活躍したわけではなかったとはいえ、ヨーロッパ勢とやったときも当たり負けはしないし、技術的にもそこまで差はないのではないかとあらためて思えました。

――アヴィ選手の名前をみんなが知ったのは、八村塁選手がファウルトラブルに陥った後に10得点、11リバウンドと活躍した予選・第2戦のマリ戦だったと思います。あのゲームでは自分で思った以上の力が出せたのでしょうか?

 塁もいつかはファウルトラブルになるゲームがあると思っていて、その時こそが自分の出番だと考えていました。だから心構えはできていて、それが良かったんだと思います。マリ戦は僕のベストパフォーマンスの1つですが、あれくらいはできるとは思っていました。あとはそれをコンスタントにやっていかなければいけません。僕にはまだムラがあるのは分かっています。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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