高木美帆が挑む「8年前とは違う」五輪 3000mで5位も、前向きな気持ちで
自分のペースで滑ることができず……
高木美帆の最初のレース、女子3000メートルは5位。それでも、自身の出来を前向きにとらえているようだ 【写真:青木紘二/アフロスポーツ】
ゴールした瞬間、高木は両ひざに手を置き、疲れた表情を見せた。女子3000メートルはスピードスケート最初の種目。ここでの結果が、その後の日本チームの趨勢(すうせい)を決めると言っても過言ではなかった。ましてや高木はメダル候補だ。本人が意識していなくても、知らぬうちにプレッシャーはのしかかっていただろう。
日本代表チームのコーチであるヨハン・デビットとは「(400メートルの)ラップタイムで31秒0台をキープできれば、良いところにいける」と話していた。インスタートの高木は、最初の200メートルから600メートルまでで30秒84をマーク。しかし、同走のアントワネット・デヨング(オランダ)は30秒16を刻み、高木の前に出る。
高木はその後も31秒05、31秒19と悪くないペースを保っていたが、デヨングは30秒75、31秒07とそれをさらに上回るタイムで先頭を譲らない。「食らいついていかないと離されていくと思った」という高木は、自分のペースで滑ることができず「クロッシングゾーンで前に出るために、ピッチを上げていたところがある」と、レース後に振り返った。
前半からスピードを上げて追う展開になったこともあり、後半は思うようにタイムが伸びず。デヨングの後塵を拝することになり、この時点でメダルの可能性がついえた。
「単に表彰台に乗る実力がなかった」
デヨングは先頭を譲らず、高木は自分のペースで滑ることができなかった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
レース後、高木は悔しげな表情を見せるでもなく、淡々とそう語った。むしろすがすがしい物言いですらある。そしてこう続けた。
「もし同走の選手(デヨング)が自分より後ろにいれば、展開は変わっていたかもしれません。ただ、いずれにせよ4分を切れる力がまだなかったのかなと思っています」
3000メートルにおける高木の自己ベストは、日本記録の3分57秒09だ。今季のワールドカップ第3戦・カルガリー大会でマークしたタイムだが、これは高地の高速リンクで出したもの。今大会の会場となった江陵オーバルは低地で、そこに限れば自己ベストとなる。つまり高木は自分の実力を発揮した上で敗れたということ。自分の中で折り合いがついていたから、「単に実力がなかっただけ」と納得もしていたのだろう。
今大会における自身最初の種目となった3000メートルでメダルを逃したとはいえ、低地における自己ベストを出したことは、高木にとって決して悪い結果ではない。この後に続く今季全勝の1500メートル、1000メートル、チームパシュートも十分に期待が持てそうだ。「今回3000メートルを滑ってみて、1500メートルでもう少しできることがあるなと感じました。さらに強い気持ちで挑んでいきたいですし、(体に)良い刺激が入ったと思います」と、高木も自身の出来を前向きにとらえているようだった。