「緊張しなかった」宇野昌磨の不動心 圧倒的な演技で日本に勢いをもたらす

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初めての五輪でSP100点超え

宇野昌磨は団体戦・男子SPで周囲がミスを連発する中、動じぬ心の強さを見せつけた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 五輪には魔物が棲(す)むとよく言われる。その実体は己の心に宿る不安や緊張、自信のなさに置き換えられる。しかし、伸び盛りの20歳には全く関係がなかった。

 9日の開会式に先駆けて行われた平昌五輪のフィギュアスケート団体戦、男子ショートプログラム(SP)で宇野昌磨(トヨタ自動車)は103.25点をマークし、首位に立った。

 男子シングルでもメダルを争うと見られるネイサン・チェン(米国)、ミハイル・コリヤダ(個人資格/ロシア)、パトリック・チャン(カナダ)らがミスを連発した中で迎えた最終滑走。宇野は冒頭の4回転フリップでバランスを崩し片手をついてしまうが、ここをこらえたことで「思ったよりも体が動いている」と手応えをつかむ。

 すると演技後半の4回転トウループ+3回転トウループはきれいに着氷。最後のトリプルアクセルもGOE(出来栄え点)で2.29点が付くクリーンなジャンプで観客を沸かせた。最後のポーズをとる場面では「歩幅が大きくなった」と苦笑いを浮かべたものの、2位に15点近い差をつける圧倒的な演技を披露した。

「五輪だからと言って特別な緊張はしなかったです。今日良かったのは、今季のSPでよく失敗していた4回転トウループ+3回転トウループのコンビネーションを成功させられたこと。今日まで練習してきたことが今回のコンディションにつながっているのかなと思います」

 初めての五輪で100点超えのハイスコアを出しながら、宇野はさほど喜びを見せるでもなく、淡々とそう語った。

五輪を特別視しないスタンス

「大事な試合」には違いないものの、宇野は五輪を特別視していない 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 そんな宇野だが、チェンやコリヤダら前の滑走者が次々とミスしていくことに関しては、多少の不安を覚えたという。

「ネイサン選手やコリヤダ選手があれだけ失敗するのは初めて見ました。やはり(五輪の)緊張感は特別なものがあるのかなとか、朝早いからかなとか思ったし、自分も失敗するのかなと思いながら試合に臨みました」

 今季全勝のチェンは冒頭の4回転フリップを入れたコンビネーションこそ何とか着氷したものの、4回転トウループが2回転になり、トリプルアクセルでは転倒するなど、80.61点の4位に終わった。コリヤダも3つのジャンプすべてを失敗し、8位に沈んでいる。

 有力選手にミスが頻発するのは五輪の怖さでもあるが、そうした中でも自分を保っていられる強さが宇野にはある。それは宇野のフィギュアスケートに取り組むスタンスにも関係しているかもしれない。多くの選手は五輪を最大の目標とするが、宇野にとってはあくまで数ある試合の1つ。試合の大きさに優劣をつけることはない。以前、「自分はまだ若いので、今回の五輪だけではなく、もっと先を見据えて挑戦していく必要がある」とも語っていた。もちろん「大事な試合」には違いないものの、特別視していないのも事実だ。

 この日の朝は5時に起床。しかし「そこから何度か寝て6時くらいにちゃんと起きた」と宇野は笑う。公式練習も「眠い中、無理に体を動かそうとはせずに、無理なら無理でアップも眠いならせずという感じでした」とマイペースを貫いたことが好結果につながった。

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