エディーが語るラグビーW杯 「NZに勝てる気配を感じている」

「人気を上げるには、代表チームが勝つしかない」

日本代表前HCで、現在はイングランド代表を率いるエディー・ジョーンズ氏 【ラグビーワールドカップ2019組織委員会】

 いよいよ1年半後に迫るラグビーワールドカップ2019日本大会。1月27日から全世界同時チケット一般抽選販売(セット券)が始まり、本番に向けてボルテージは高まっていく。
 3年前の前回大会で、南アフリカを破るなどチーム史上最多の3勝を挙げた日本代表を率いたのがエディー・ジョーンズ前HC(ヘッドコーチ)だ。15年大会後に就任したイングランド代表ではテストマッチ23試合で22勝、世界ランキングを2位まで上昇させ、日本大会では優勝候補の一角と見られている。
 そんなエディー・ジョーンズ氏に、W杯の魅力や意気込みを聞いた。

――日本で開催されるW杯が来年に迫ってきました。日本で行われる大会に、エディーさんには特別な感情はありますか。

 もちろんです。W杯を日本でやれることをすごくうれしく思っています。「日本はラグビーで、いつか、何かをできるだろう」とずっと言われ続けてきました。ようやく日本でラグビーW杯が開催されることになり、ラグビー界のみならず、国を挙げて、世界に素晴らしいトーナメントをホスト国として見せられる。
 日本ではラグビーはそれほどメジャーなスポーツではないですが、ラグビーがメジャーではない国で初めてW杯が開催されるのは光栄なことだと思います。日本は素晴らしいことを成し遂げると確信しています。

――日本でラグビー人気を高めるために、母国開催で結果を残すのはどれくらい大切だと思いますか。

 ラグビー人気を上げるには、代表チームが勝つしかありません。私は2週間前(17年12月上旬)に福島に行きましたが、ある高校の先生が会いに来て、「東日本大震災の津波の後、うちのラグビー部では部員が5人になってしまいましたが、15年W杯の後、部員が30人にふくれ上がりました」と話してくれました。代表チームが成功を収めることで、それくらい大きな影響を及ぼすことができるわけです。2015年にエキサイトした心にもう1度ラグビーの火をつけるという意味では、日本代表が成功を収めなければいけません。

 W杯が行われるだけでもファンの興味を引くと思いますが、日本がスコットランドに勝てば、日本人全員がその話をするようになります。代表チームが勝つことで、単なる興味から本物の興味に変わるわけです。なぜなら、みんなが自国に誇りを抱くからです。前回、南アフリカに勝った後、テレビ局の人が「(日本代表戦を)約3000万人が視聴した」と言っていました。日本人の4人に1人がラグビーを見たという数です。そのほとんどの人がラグビーについてほぼ知らずに見ていたと思います。W杯は、そうなるチャンスです。

ラグビーはフィジカルでも、戦術でも、メンタルでも勝てる

ラグビーには「いろいろな勝ち方があるので、勝ち方に興味を見出すこともできると思います」と語る 【ラグビーワールドカップ2019組織委員会】

――あらためて、W杯の魅力を教えてください。

 W杯は世界中のベストプレイヤーが集まる大会です。それぞれのチームが独自のスタイルを持っていて、世界のベストの選手たちがそれを体現していく。選手たちみんなが人生1回きりのチャンスとして、自分の国のために最高のことを成し遂げようとする。もしサモアが優勝したら、サモアのすべての人がエキサイトします。日本が勝ったら、すべての日本人が興奮しますよね? つまり、W杯でいい成績やプレーを見せることは、自分の国に対して素晴らしい貢献をしたということになります。そうやって、一人一人がプラスアルファの力を出せるのがW杯です。

 ラグビーの素晴らしいところは、試合にフィジカル面を押し出して勝つこともできるし、戦術で勝つこともでき、メンタル面で勝利することもできる。ラインアウトから勝ちをもぎ取ったり、スクラムに勝機を見出したり、フェーズプレー(連続攻撃)で勝ちにつなげたりする。キックから勝ちをつかみとったり、ディフェンスで勝ちにつなげたりもできる。ラグビーにはいろいろな勝ち方があるので、勝ち方に興味を見出すこともできると思います。

 たとえばサッカーには、勝利するための方法がいくつもあるでしょうか。一人の選手の存在で、試合に勝つこともできます。チームにメッシ(バルセロナ)がいれば、メッシはチームを勝たせることができる。ラグビーでは、そういうことはあり得ません。ラグビーは、いかにチームを作り上げるかの勝負です。

「自分たちは勝てるという可能性を感じていました」

2015年ワールドカップでは優勝候補の南アフリカを破り、世界に衝撃を与えた 【写真:ロイター/アフロ】

――前回大会で日本は「ジャパンウェイ」を突き詰めて、南アフリカに勝ちました。あの勝利は「奇跡」と言われましたが、エディーさんはどう感じましたか。

 奇跡とは思わず、常に自分たちは勝てるという可能性を感じていました。自分たちがやるべきことをやり切れれば、勝てると信じていた。そして、勝ちました。奇跡というのは、よくファンタジーの世界で使われる表現ですよね。

――現実の世界で生きているから、「奇跡」という言葉は使わないわけですね。

 その通りです。
 
――前回大会ではベスト8という目標を掲げていました。日本は素晴らしい結果を残した反面、目標を達成できなかったのは何が足りなかったからですか。

 フィジカル面でスコットランドに及ばなかった。それが現実です。南アフリカに勝った4日後のスコットランド戦で勝つためには、フィジカル的にもっと強くなければいけませんでした。でも誇りに思うのは、選手たちが勇気を持ってベスト8を目指したことです。W杯の後、日本代表は世界ランキング9位になりました。いまでも、それが日本にとって過去最高のランキングです。

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