伊藤有希、今季最高2位は作戦勝ち 「確実に飛型点を」冷静さ光る

スポーツナビ
 札幌大会(13・14日)、蔵王大会(19〜21日)と、2週続けて日本で行われたノルディックスキー・ジャンプ女子のワールドカップ(W杯)。最終戦となった21日は、伊藤有希(土屋ホーム)が2位、高梨沙羅(クラレ)は3位に入り今季初の日本勢ダブル表彰台で幕を閉じた。

今季最高の2位に入った伊藤。蔵王は国際大会初勝利を挙げた場所でもある 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 蔵王大会の会場となったクラレ蔵王シャンツェは、伊藤にとって2011年コンチネンタル杯で国際大会初勝利を挙げた場所。21日は降りしきる雪に風も加わる難しいコンディションで、風待ちのため中断を意味するシグナルレッドが度々灯りながらの試合となったが、伊藤は「練習でもそうなんですけど、条件が荒れている時ってなぜか良いジャンプをできることが多いんです」と振り返った。

 伊藤は1本目で90.5メートルを飛び2位につけると、2本目でもそのリードを何とか保ち3位以下を振り切った。2位は伊藤にとって今季W杯での最高成績。試合後は「(悪天候で打ち切られ)1本だけ飛んで2位になるよりも、2本飛んですごい僅差(3位高梨と0.3点差)のなか2位になれた方が、絶対に充実感はある」と語った。

勝負を分けた飛型点

新雪に覆われたこの日のジャンプ台。雪に足をとられ着地が乱れる選手も出るなか、伊藤はしっかりまとめた 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 2本目に唯一100メートル超のジャンプを飛び圧勝したマーレン・ルンビ(ノルウェー)を除けば、この日の表彰台争いは接戦だった。215.7点で2位に入った伊藤から4位のニカ・クリズナル(スロベニア)までの差は1.1点。距離にすれば55センチだ。

 勝負を分けたのは飛型点だった。分かりやすさから飛距離に注目が集まりがちなジャンプ競技だが、空中姿勢やテレマークの美しさで採点される飛型点もそれと同じくらいのスコアを稼げる。ジャンプ競技は、この2つに加えてスタートゲートの高低で得られるゲートファクター、追い風/向かい風など風の条件で付けられるウインドファクターを加減した合計点で争われる。

「今日は飛距離だけでは全然2位になれていないと思うんです。ウインドファクターやゲートファクターは0.1点の戦い。飛型点は(ジャッジ)1人の印象が上がれば1.5点くらい一気に上がるので、そこは確実に狙っていきたいと思いました」

 これまで、飛型点の差で何度も悔しい思いをしてきたという伊藤。経験を生かした冷静な作戦にクレバーさが垣間見えた。

「今日は新雪で着地しづらいなと思って見ていて、みんな(テレマークを)入れづらいのは一緒だと思うんですけど、逆にそこでアピールすれば点数をもらえるとも思いました」と伊藤。ランディングで足を取られる選手も続出する難コンディションのなかテレマークを入れ、2本合計で得た104点の飛型点は全選手中トップとまさに狙い通りの結果を出してみせた。

五輪を前にアプローチに手応え

 平昌五輪まで残す実戦は27・28日に開催されるスロベニア・リュブノ大会の2戦のみ(2月3・4日に予定されていたオーストリア・ヒンツェンバッハ大会は雪不足のため中止)。現時点での調子は「まだ半分くらいですね」と語る本人が一番の課題に挙げるのは、助走スピードにつながるアプローチ。ただし、前週の札幌では「(ビデオで確認する自分の)見た目と(競技中の)フィーリングが違う」と感覚のズレを話していたが蔵王大会後は「感触とともに数値もついてきてくれている」と、一定の手応えをつかんだようだ。

 7位だったソチ五輪時と異なり、W杯通算5勝を誇る今の伊藤にはメダルを期待する声も多い。試合後に必ず「以前よりは良くなってきている」と語る伊藤がこのまま上り調子で平昌へ入ることができれば、表彰台の可能性もぐっと高まるだろう。

(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)
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