新たな環境で再スタートを切った福島千里「東京五輪が一番達成感を味わえるように」

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1月1日付けでセイコーホールディングスに入社した福島千里 【スポーツナビ】

 最高の状態で2020年東京五輪へ――。

 陸上女子100メートル、200メートルの日本記録保持者・福島千里が1月1日付けでセイコーホールディングスに入社。11日には入社会見が行われ、新シーズンへの意気込みなどを語った。

 福島は昨年1月、今までの所属を離れプロ選手へと転向。シーズン開幕に向け調整を続けていたが、近年悩まされていたふくらはぎのけいれんで、4月の織田記念国際陸上では予選のスタート直後に途中棄権。連覇を続けていた6月の日本選手権では、100メートルで2位、200メートルで5位と優勝を逃し、08年北京五輪から続けていた世界大会への出場権も逃す結果となった。日本選手権のレース直後には「今までで一番苦しいシーズン」と振り返っており、悔しさをにじませる場面もあった。

 この日の会見では、コーチを務める仲田健トレーナーを介して、16年リオデジャネイロ五輪男子400メートルリレー銀メダリストの山縣亮太と一緒に練習する機会があったと話す。その中で、山縣が所属する同社のサポート体制を知ったことが入社のきっかけだった。現在は新シーズンに向けて、山縣らとともに練習を続け、自身が持つ日本記録の更新や世界で戦うためのトレーニングを始めている。

 今回は入社会見後の福島にインタビュー取材を行った。

苦しかった時期が今後の力になる

シーズン序盤からふくらはぎのけいれんに悩まされ、日本選手権では連覇も逃していた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――改めて昨シーズンを振り返って頂きたいのですが、17年は福島選手にとってどんな年でしたか?

 昨シーズンはリオ五輪が終わり、この先20年の東京五輪を目指すに当たって、もう一度新たな目標設定を定めるために環境を変えることを決めました。その中でたくさんのサポートをしてもらい、無事に終えることはできましたが、少し難しいシーズンになってしまいました。うまく走ることができず、悔しいシーズンだったなと感じています。

――シーズン序盤から度々ふくらはぎのけいれんがあり、自分の力を出し切れなかったことも多かったと思います。その苦しい経験を現在はどのように捉えていますか?

 うまく調整できなかったことはもちろん、けいれんが起こった原因もすべて自分の責任。自分自身のコントロールが問題だったと思います。それでも15年頃から「自己ベストが出せるのではないか」という手応えがなくはなかったので、新たな環境で挑戦できることは、すごくうれしいことです。今回、新たな環境で挑戦できることになったのも、昨シーズン悩んでいた時に仲田コーチと出会えたり、山縣さんと一緒に練習できたりと出会いに恵まれました。良いシーズンではなかったのですが、こうしてセイコーに入社させていただけたことも含めて、すごく幸せなことだと思います。

 ただ「良くなかったから、今がある」という意味ではありません。昨シーズンの経験は、もちろんしなくてもいい経験もあったとは思います。ただ今後の競技人生や生活において、苦しかった時期というのは力になりますし、その苦しかった時期にこうしてサポートをもらえたという感謝の気持ちが持てるのも、こういう経験があったからこそだと思います。

「現状を打破したい」という気持ちでハードな練習も乗り越える

世界陸上ロンドン大会の選考が終わった後、山縣(右)らと一緒にトレーニングを行ったことがセイコーHD入社のきっかけとなった 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

――現在新たに取り組んでいることはありますか?

 仲田コーチの練習メニューを世界選手権の選考が終わった後ぐらいから取り組んでいます。今までは割と自分自身で練習メニューを考えることが多かったのですが、今はコーチにメニューを出してもらっています。それは、今までの自分を変えたいですし、越えたいと思っているので、やはり今まで通りじゃだめだと思っていました。ですので、新しいことを始められているのも良かったです。

――新しい練習メニューに取り組み始めた頃はどうでしたか?

 もちろん、仲田コーチからは「疑問に思うことがあったら伝えてほしい」「これでは速くならないと思うなら言ってほしい」と言ってもらえていますが、私自身は信頼してついていこうと決めていました。今の自分を変えたいと思ってお願いしたので、「こんなに走るの?」と思ったことはたくさんありましたが(笑)、走る量を減らして下さいと伝えたことはありません。もちろん、きつくてこなせないことは何度かありましたが、それでも「現状を打破したい」という気持ちが大きかったので。やってみないと良いか悪いかも分からないですし、良いか悪いかを理解するための物差しと言いますか、そういう基準がずれてしまわないように、毎日一生懸命やろうと思ってやっています。

――「自分を変えたい」という気持ちがあるから、今まで以上のトレーニング量でも乗り越えられるのですね。

 ただ、大変な部分だけでなく、山縣さんも一緒にやっていますし、仲田コーチも常に近くで見て下さっているので、一緒に乗り越えていける仲間がいるということも新たに変わった点だと思います。仲間がいるからこそ、練習をこなせているのだと思います。

――入社会見の中ではトレーニングをこなしていることで「体が大きくなった」というお話もされていました。

 昨シーズンは思うようなトレーニングができないこともあって、それと比べるとパワーアップしていると思います。ただもちろん、体を大きくすることを目的としてやっているわけではなく、速く走るためのトレーニングをして、その結果として体が大きくなってきています。現時点の評価では、まだ実際にレースを走ったわけではないので、見た目的に「体が大きくなった」と言うことしかできません。でもそれは速く走るためなんです。

――実際、走りの感覚は変わってきていますか?

 手応えは感じています。ここまでは練習をこなすので精一杯で、タイムや技術面を考える程の余裕はなかったのですが、徐々にそこまで考えたり感じるまでにはなってきています。

――このトレーニングを続けて、シーズンの開幕に合わせるということですね。

 そうですね。8月から冬季練習を始めたのは、陸上競技をやっている中でおそらく初めての経験です。試合がないのに、練習に時間をかけることはなかったので、これで次の試合が来ることは楽しみです。

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