帝京ラグビーが示す“大一番の勝ち方” 伸び伸び育て、細かく分析…9連覇へ
起用し続けた1年生たちが躍動
キックを使ってゲームをコントロールした1年生SOの北村(背番号10) 【斉藤健仁】
ただ、「(このトライで)選手たちの気が引き締まった。ミスから生まれたスイッチオンという感じです。その後、選手たちは練習通りに身体を張りました」と指揮官が称えたように、選手たちはプランを実行し、後半40分にトライを許すまで78分間はノートライに抑えた。
アタックでは「ポッド・システム」でボールを広く動かしつつ、SH小畑健太郎(3年)、SO北村のハーフ団によるキックを使って敵陣で戦う意識が高かった。
またボールをリサイクルする意識とスキルも高く、前半9分には、ボールを継続する中でLO秋山大地(3年)が相手を2人吹き飛ばしてゲインし、フォローしたCTBニコラス・マクカラン(1年)がトライ。37分にもモールを押し込んだ後、SO北村がうまく右の大外を突いて、最後はWTB木村朋也(1年)がトライを挙げて14対7とリードして前半を折り返した。
「(先発した3人の1年生たちは)いい感じでしたね。自分の意思を持ってもらえるよう、伸び伸び育てている証ではないですかね。いいところでいい活躍をしてくれた」と岩出監督は1年生たちの活躍に破顔した。
外国人選手のボールを狙うディフェンス
ボールに絡むディフェンスで相手選手のミスやファンブルを誘った 【斉藤健仁】
この10日間、帝京大はディフェンス面では1人目が下にタックルしたら、2人目がボールにコンテストする、絡むといったことを特に意識して練習に取り組んでおり、個々の判断でノックオンを誘うという細かいスキルの練習までも行っていたという。驚いたことに、外国人選手は片手でボールを持つ場合が多いので、その状況も想定して狙ったというわけだ。
試合の状況を予想して、帝京大は岩出監督以下コーチ陣が細かいスキルを落とし込み、それを選手たちが試合でしっかり実践できるところに骨太の強さを感じた。もちろん、1年間でしっかりと幹となる部分を鍛えているからこそ、なせる業であろう。
帝京大のキャプテンHO堀越康介も「(準備しているときに)常にゲームイメージをしっかり持とうとした。この1週間だけじゃなくてタックル、ブレイクダウン、細かいところまで丁寧に1年間積み上げてきたことの集大成を今日の試合で出せた」と胸を張った。
「東海大さんは成長できるいい相手」
トライを決めたニコラス・マクカラン(左下)を勢い良く祝福する竹山(左上)ら 【斉藤健仁】
パフォーマンスを出した選手たちの力はもちろんのこと、この試合に向けて1年間、しっかりとピークを合わせてきた指揮官のマネジメント力も光った。
「すべてのものがカチッとはまった、チーム一丸の勝利です。東海大さんは本当に(選手たちが)成長できるいい相手でした。指導している者としてはとても充実したゲームでした。ここからもう1歩、どれだけ上げられるか。少し休んでもう一度準備したい」(岩出監督)
心技体とすべての面で一つ階段を上り、大きな自信も得た「紅き王者」は、1月7日の決勝で9連覇をかけて、対抗戦のライバルで21年ぶりの優勝を目指す明治大と対戦する。