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前橋育英の飯島陸が見せた謙虚さと自信
指揮官も嗅覚を賞賛、AT弾で大会5得点

エースFWの飯島陸が決勝ゴール

富山第一戦でも決勝点を挙げ、前橋育英の飯島陸は大会5得点でランキングトップに
富山第一戦でも決勝点を挙げ、前橋育英の飯島陸は大会5得点でランキングトップに【写真は共同】

 1月3日に行われた第96回全国高校サッカー選手権大会の3回戦、等々力陸上競技場では前回大会準優勝の前橋育英(群馬)が富山第一(富山)に1−0で勝利し、ベスト8進出を決めた。試合終了間際に決勝ゴールを決めたのは、エースFWの飯島陸だった。


 前日の2回戦、富山第一は優勝候補の一角だった東福岡(福岡)の攻撃を連動した守備でシャットアウトし、試合終了間際のCKから1−0とし、勝ち上がってきた。一方の前橋育英は、初芝橋本(和歌山)戦で飯島の4得点を含む5−0の大勝で3回戦へ駒を進めていた。


 2回戦の後、前橋育英の山田耕介監督は「明日の試合が優勝するための大一番。今日のことは忘れてしっかりやれ」と声をかけたという。選手たちは大事な一戦へと気持ちを切り替え、「チャンスは絶対に来るから、そこで決め切ること」という指揮官の言葉を心に留めた。


 飯島は、5バックで守る富山第一の打開策をこう考えていた。


「相手は背後が弱いという分析で、そこを狙っていた。なかなか背後を取れなかったけれど、(2トップを組む榎本)樹は流動的に動けるので、ワンツーを使ってコンビネーションで崩したり、自分で仕掛けたり、セットプレーでもチャンスが来ると思っていた。決め切れなくても、最後まで諦めないでやろうと思っていた」

2回戦で4得点の活躍も、いつも通りに試合臨む

 試合は両者譲らずスコアレスで時間が経過するなか、エースに焦りはなかった。


「ハーフタイムで、『0−0でも悪くない。後半は我慢して、しっかり点を取っていこう』という監督の話があった。そこで自分が点を取れたらいいなというか、こういう試合で点を決めるのがエース。最後は俺が決めてやるという気持ちがあった」


 前橋育英は富山第一のロングスローやCK、FKを警戒。高い集中力で隙を作らず、エースのゴールを信じて戦っていた。「相手が5バックで中盤が空いてるので、そこで慌てず、しっかりとつないでいければチャンスがあるとピッチの中で声を掛け合っていた」と飯島は振り返る。


 2回戦で4ゴールの活躍を見せたことで、飯島は注目を集めた。これまで得点王を取ったこともなく、1試合で大量点を挙げたこともあまりなかったが、試合が終わった後、舞い上がることはなかったという。


「得点はみんなのおかげで取れただけ。明日からも貪欲にゴールを目指していかないといけない」と、3回戦へと気持ちを切り替えた。ゴールを祝福する多くのメールも舞い込んだが、「コンディションが一番大事」と、夜はいつも通り10時半には寝て試合に備えた。


 ゴールの場面、「最初は外に開いてパスを受けようと思ったけれど、シオ(塩澤隼人)がシュートすると思ったので、こぼれ球に詰めようと切り替えたら、相手に当たって自分のところにこぼれてきた」。いい位置にいた飯島はこぼれ球にいち早く反応し、ゴールを決めた。

富山第一の想いも携えて

前橋育英のエースは、大会の舞台から姿を消したチームの想いも携えて、頂点を目指す
前橋育英のエースは、大会の舞台から姿を消したチームの想いも携えて、頂点を目指す【写真は共同】

 試合後のインタビューで山田監督は「ああいうところに陸がいることがすごいこと」とエースの嗅覚を賞賛した。ゴール直前にも決定機があったが、シュートは相手選手に当たってコースが変わり、ポストにはじかれた。飯島はそこで立ち止まることなく、すぐに次のチャンスを狙った。


 そこには、日ごろからの指揮官の飯島への信頼があった。


「監督はいくらシュートを外しても怒らない。試合で1点、チームを勝たせるゴールを取ればいいんだと言ってくれている」(飯島)。そしてこの日も、飯島はその期待にしっかりと応え、2試合5得点でランキング首位をキープした。


 ゴールを決めた時間は、PK戦突入かと思われた後半アディショナルタイム3分。「一瞬の得点(富山第一・大塚一朗監督)」で勝敗が決まった。


 敗れた富山第一の選手たちは、人目をはばからず号泣しながらピッチをあとにした。飯島は「球際も強かったし、切り替えも早くていいチームだと最初から思っていたけれど、戦ってみてさらに実感した」と、相手に対するリスペクトも忘れない。


 前橋育英の選手たちは試合終了後の握手の際、富山第一の選手たちから「絶対優勝しろよ!」と声をかけられたという。前橋育英のエースは、大会の舞台から姿を消したチームの想いも携えて、頂点を目指す。

Noriko NAGANO

スポナビDo

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