日本文理の躍進を支える周到な強化 積み上げから生まれた“文理スタイル”
駒沢監督が立ち上げた中学生チーム
亀山(右から2人目)などチームの軸となる人材がエボルブジュニアユースFCの1期生となる。写真は1回戦のもの 【写真は共同】
駒沢監督は振り返る。
「高校サッカーがグーンとビッグになってきたじゃないですか。その頃は、普通の高校の部活動が太刀打ちできる競技じゃないなと思っていました。けれど人工芝のグラウンドができて、そのときは定年まで10年くらい。少しずつ強化して、次の世代に引き継いでいこうというところからでした。県内にちょっと目立つ子がいるとそれを奪い合うというか、そういう環境が嫌でした。だったら同じコンセプトで育てた子たちで勝負しようよというところからのスタートで、その1期生が今の3年です」
転機は中学生年代のチーム、エボルブジュニアユースFCの立ち上げだった。新潟には「長岡ジュニアユースFC」という同年代の強豪クラブチームがあり、帝京長岡のグラウンドで活動している。この系列からは小塚和季(ヴァンフォーレ甲府)のような人材を既に輩出していた。新潟明訓も中学生年代のクラブを持っている。
日本文理は人工芝グラウンドの完成を契機として、駒沢監督が主導し、2012年に系列のクラブチームを立ち上げた。エボルブは高校生が全体練習を終えた後に、水木土日と週4日の活動を行っている。今大会2得点のFW亀山来駆、主将でセンターバックの長谷川龍一らチームの軸となる人材が1期生で、そのまま日本文理の門をたたいた。
戦略を立て、「普通」から飛躍した日本文理
久住はU−12、U−15とアルビレックス新潟でプレーし、U−18は昇格を逃した。「このチームなら全国に行けるんじゃないかと思った」というシンプルな理由で、日本文理を選んだ。彼はエボルブの1期生とも何度か対戦していて、そこに可能性を感じていた。「けっこうアルビが負けたりしていましたし、うまいし強いというのは分かっていた。彼らと一緒にサッカーしたいと思った」と久住は言う。
エボルブは1期生が卒業した後も、16年に夏の全国大会(クラブユース選手権U−15)に初出場。17年夏の同大会はJリーグの育成組織と横一線の戦いで、ベスト16入りとさらに躍進している。つまり、今いるメンバーよりさらに実績を出した世代が、これから入部してくる。
周到な強化が奏功し、日本文理は躍進した。ベテラン監督も「高校サッカーが楽しくない」とまで感じた苦しい日々を乗り越えた。日本サッカーの底辺が整備されたことで、「普通のサッカー部」が全国を狙うことは難しくなったのかもしれない。ただ日本文理は人工芝グラウンドの整備という投資はあったにせよ、発想を変え戦略を立て「普通」から飛躍することに成功した。