国際舞台でも結果を残す期待の世代が集結 2018年春の高校バレー【男子展望】

田中夕子

東亜学園は昨年のリベンジなるか

今大会の注目選手の1人。習志野(千葉)の上條レイモンド(写真は前回大会) 【写真:アフロスポーツ】

 さらなる激戦となりそうなのが左下のブロックです。

 東京予選を制した東亜学園は昨年の準優勝チーム。主力として決勝戦を経験した選手が、今季は3名残っています。あの独特の雰囲気や緊張感を経験しているというのはチームとして大きな強みであるのは間違いない。何より、昨年、最後の最後で敗れた悔しさがあります。今年こそは、という思いはどのチームよりも強いのではないでしょうか。

 また、選抜チームとして出場した国体で長崎代表の主力だった大村工。決勝では東亜学園、駿台学園のメンバーを中心とする東京代表に敗れましたが、基本に忠実な完成度の高いチームです。キャプテンでエースの東海斗選手やミドルブロッカーの川添翔真選手といった攻撃陣を生かすのが、2年生セッターの奥村竜樹選手。昨年からレギュラーとしてコートに立つ、非常に度胸のある選手ですので、どんなトスワークを見せるのか注目です。
 おそらくベスト8を懸けて大村工と対戦が予想されるのが昨年の春高ベスト4の習志野(千葉)。注目は最高到達点345センチと高校生の中では驚異的な高さを誇る、ミドルブロッカーの上條レイモンド選手。Bパスからでもどんどんスパイクを打ってくるので、他チームからすればミドルをマークから外すことができず、ミドルばかりに気を取られるとサイドに決められてしまう。打点の高さだけでなく、コースの打ち分けもできる器用な選手なので、対戦相手からすると非常にディフェンスがしづらい。攻撃力の習志野に対し、大村工のディフェンスがどれだけ粘り、勝機を見いだすか。楽しみな一戦となりそうです。

開智のサウスポーエース岡本のジャンプサーブは必見

インターハイ準優勝の開智、春高でも上位進出を目指す(写真は前回大会) 【坂本清】

 右上ブロックの有力校は開智(和歌山)と創造学園(長野)。開智は左利きのオポジット岡本捷吾選手に注目です。何といっても彼のジャンプサーブが素晴らしい。インターハイでも、岡本選手のサーブで劣勢から何度も試合をひっくり返し、チームを準優勝に導きました。セッターの中野倭選手との完成度が高いコンビプレーは必見です。

 創造学園の中心はセッターの堀夏央哉選手。全日本中学選抜ではキャプテンも務め、リーダーシップに長けています。1、2年生主体のチームなので、堀選手がどれだけチームを引っ張れるかがカギになりそうです。

 そのほか、大会出場チームの中でも屈指の高さを誇るのが東海大札幌(北海道)。まだ粗さはありますが、186センチのエース米村恒輝選手と、同じく186センチの大型セッター納彩社(おさめ・あやと)選手に注目です。さらに昨年ベスト4の高川学園(山口)や、東海大札幌と同様に大型チームの市立尼崎(兵庫)、そしてアジア、世界ユース代表の佐伯聖海選手を擁する東福岡(福岡)。どのチームも独自のカラーや経験もあります。いわばラッキーボーイ的にチームを盛り上げる選手が出てくれば、一気に勝ち進む可能性を秘めたチームがそろっています。

インターハイ優勝の鎮西は鍬田、水町に注目

エース鍬田憲伸を中心に、鎮西(熊本)はインターハイに続く栄冠なるか 【写真は共同】

 そして右下は、インターハイを制した鎮西(熊本)が中心となるでしょう。エースの鍬田憲伸選手は抜群の高さがあり、その高さを生かした打点からボールをしっかりたたく、スパイクテクニックも長けています。

 さらに注目してほしいのが1年生のウイングスパイカー水町泰社選手と、リベロの荒尾怜音選手。特に水町選手は、指導者として40年以上のキャリアを誇る畑野久雄監督が「天才だ」と絶賛する選手であり、ユース候補合宿に参加した同世代の中でもすべてのプレーにおいて頭1つ抜けていました。自分のプレーをするだけでなく、周りをよく見て発言するリーダーシップも備え、勝負強さなども抜群。今大会の主役となり得る選手ではないでしょうか。

 埼玉栄(埼玉)や清風(大阪)、仙台商(宮城)など高い攻撃力を持ったチームが顔をそろえる右下のトーナメント。試合の入り方や、前半の展開次第では、鎮西だけが安泰とは言い難い。ダークホースが出てくる可能性も非常に高いはずです。

プレッシャーの中で花開くヒーローの存在が不可欠

「春高をきっかけに驚くほど成長する選手もいる」と「Team CORE」コーチの長江祥司氏 【スポーツナビ】

 15歳から18歳の高校生年代は短期間で一気に伸びる世代です。大学生やVリーグと比べても、1つの試合や、トーナメントを戦う中で、想像を上回るような成長を見せることもあり、春高はまさにそんなきっかけを与える大会でもあります。

 昨年は駿台学園が3冠を懸け、優勝候補と言われる中で大会を制しましたが、今年は飛び抜けたチームがあるわけではありません。どこが勝ってもおかしくない今大会のポイントは初戦からの勝ち上がり方になるでしょう。あまり苦しむことなくスルスルと勝ち上がったり、逆にフルセット続きで勝ち上がるのは最後の大勝負を考えると望ましいとはいえません。

 5日間で6連戦(シードチームは5戦)の厳しい日程を乗り切るには、プレッシャーの中で花開くヒーローの存在が不可欠です。次世代の主役となるであろう選手がそろう大会で、誰がヒーローになるのか。ぜひ、みなさんの目で見極めてほしいですね。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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